05 March

【個人の確定申告】申告期限に遅れると税金が増える?3月15日を厳守すべき申告2つを解説

掲載日:2025年03月05日   
税務ニュース

「確定申告は3月15日まで」は、誰もが知っている期限です。2024年分の所得税・贈与税は、3月15日が土日祝日にあたるため、申告期限は3月17日となっています。「間に合わなくてもちょっとペナルティを払うだけ」と思われがちですが、実は高い税金を払うハメになる制度もあるのです。今回は、何が何でも期限に間に合わせるべき確定申告2つをお伝えします。

期限までに確定申告すべきもの①青色申告の65万円・55万円控除

申告期限までに必ず行うべき確定申告の1つ目は「青色申告の65万円または55万円の控除」です。不動産所得や事業所得で青色申告をしている人は注意した方がいいかもしれません。

青色申告の65万円・55万円控除とは

そもそも、青色申告の65万円控除・55万円控除とはどういうものなのでしょうか。最初に確認しておきましょう。

青色申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間、複式簿記など一定レベル以上の帳簿つけを行い、所得額と税額を自分で正しく計算して申告・納税をする事業者向けの特典制度です。

申請が必要ですが、認められると「赤字になっても翌年以後3年間、繰越控除ができる」「30万円未満の事業用資産の取得額を全額、必要経費にできる」といったメリットを受けられます。このメリットの1つが「青色申告の特別控除」です。

青色申告特別控除には65万円・55万円・10万円の3つがあります。それぞれ次のようになっています。

実際には「不動産所得だと『5棟10室』といった事業規模を満たしていることが65万円・55万円控除に必要」など細かい条件がありますが、おおむね次のように覚えておくといいでしょう。

  • 複式簿記とe-Tax申告:65万円控除
  • 複式簿記と紙申告:55万円控除
  • 現金帳簿やExcelなどの簡易な帳簿:10万円控除(e-Taxか紙かは関係ない)

期限を過ぎると「65万円・55万円控除」が「一律10万円控除」に

ここで注意したいのが期限です。先ほどの表にあるように、65万円控除と55万円控除の要件の1つが「期限内申告」となっています。申告期限を1日でも過ぎてしまうと、控除額は一律10万円になってしまうのです。

なお、このルールは還付になる青色申告でも同じです。還付申告は「翌年1月1日から5年間有効」ではあります。しかし、3月15日(2024年分は2025年3月17日)を過ぎると控除額は一律10万円になってしまうのです。

3月15日に遅れて申告するデメリット

3月15日を過ぎて申告をすると、次のようなデメリットがあります。

  • 所得税・住民税が高くなる
  • 納税だと、無申告加算税と延滞税がかかることがある
  • 配偶者控除やひとり親控除など所得制限のある控除を受けられなくなることがある
  • 所得制限のある贈与税の非課税措置を受けられなくなるおそれがある

期限までに確定申告すべきもの②贈与税(相続時精算課税制度)

申告期限までに必ず行うべき確定申告の2つ目は「相続時精算課税制度の贈与税の確定申告」です。こちらもウッカリしやすいので注意が必要です。

相続時精算課税制度とは

「相続時精算課税制度」という言葉になじみがないかもしれません。現在、贈与税の制度は「暦年課税制度」「相続時精算課税制度」の2本柱となっています。

それぞれの主な特徴は、次の通りです。

暦年課税制度 相続時精算課税制度
  • 届出不要
  • 誰でも使える
  • 年110万円までは贈与税がかからない
  • 基本的に相続税は関係ない(死亡日以前7年間の贈与は相続財産に加算する)
  • 累進課税(税率10~55%)
  • 届出必要(相続時精算課税選択届出書を初回の贈与の翌年2月1日から3月15日までに提出)
  • 贈与者は60歳以上の親か祖父母、受贈者は18歳以上の子か孫でないと使えない
  • 基礎控除(年110万円)以下なら贈与税も相続税もかからない
  • 年110万円を超えても特別控除(累計2500万円まで)の枠内なら贈与税はかからない
  • 基礎控除額を超える部分は相続財産に加算する(相続税の対象になる)
  • 基礎控除も特別控除もないと贈与税を税率20%で納めることになる
  • 年110万円超の贈与を受けたら贈与税の申告が必要

2023年度税制改正で、新たに基礎控除(年110万円までの贈与は贈与税も相続税もかからない)が設けられました。これにより、相続時精算課税選択届出書を提出する人が増えたようです。言い換えると「3月15日という法定申告期限を気にしなければならない人が増えた」と言えます。

期限を過ぎると一律20%で納税に

なぜ相続時精算課税選択届出書を出したら、法定申告期限を気にしないといけないのでしょうか。それは申告期限を過ぎて確定申告をすると、贈与税をかかるからです。

年110万円の財産をもらったら、相続時精算課税の贈与税の申告が必要です。累計2500万円の枠内なら、確かに贈与税は非課税です。

しかしこれは「法定申告期限までに申告書を提出すれば」の話。1日でも期限を過ぎてしまうと、税率20%の贈与税を払わなくてはなりません。

相続時精算課税制度には「基礎控除」「特別控除」の2つがあります。

相続時精算課税制度の控除
種類 内容
基礎控除(年110万円)
  • 年110万円まで財産をもらっても贈与税も相続税もかからない
  • 贈与税の申告は不要
  • 相続税の対象にもならない(相続財産に加算しなくていい)
  • 相続税の申告も不要
特別控除(累計2500万円)
  • 年110万円を超えたときに適用される
  • 累計2500万円まで財産をもらっても贈与税は非課税
  • 贈与税の申告を確定申告期限(通常、翌年3月15日)までに行わないと非課税にならない
  • 相続税の対象になる(贈与時の金額で相続財産に加算しないといけない)

もし年110万円を超える金額の財産をもらっても、累計2500万円の特別控除で贈与税は非課税になります。しかし「法律に定められた確定申告の期限までに申告すれば」の話です。確定申告期限を過ぎて申告をすると、特別控除が使えず「110万円を超えた部分の金額×税率20%」の贈与税を納めることとなります。

3月15日に遅れて申告するデメリット

3月15日に遅れてしまうと、贈与税を納めることになります。それだけでなく、無申告加算税や延滞税など、余計な税金を払わなくてはなりません。

まとめ

2~3月は、新年度の直前ということもあり、何かと忙しくなりがちです。確定申告が後回しになることもあるでしょう。しかし、今回お伝えした2つのケースで確定申告をするのであれば、申告期限を意識するようにしましょう。

ABOUT執筆者紹介

税理士 鈴木まゆ子

税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。

 

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