ChatGPTなどの生成AIは本当に「使えない」のか?適切な活用方法を解説
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近年、ChatGPTのような生成AIが広く普及し、その能力に注目が集まっています。しかし、その一方で「生成AIはまだ使い物にならない」と評価する声も聞かれます。多くの場合、その原因は生成AIの誤った使い方にあります。それは、検索エンジンの代替として利用しようとする活用方法です。
筆者も生成AIについての講演を各地で行っていますが、このような誤用で生成AI活用を避けている方に出会う機会が大変多いように感じています。本記事では、生成AIの誤用について考察し、適切な活用方法を解説することで、生成AIに対する誤解を解消し、その真価をお伝えしたいと思っております。
よくある誤用—検索エンジンの代替としての生成AI
おそらく、多くの方が最初に触れる生成AIはChatGPTでしょう。生成AI初心者の方や、不慣れな方の多くは、バスの発車時刻を確認するためにChatGPTに質問したり、最新の芸能人やスポーツ選手の情報を尋ねたりするケースが見受けられます。従来検索エンジンを使って確認していた内容です。これらの質問をChatGPTに投げた結果、ハルシネーション(生成AIが誤った情報を出力すること)を起こすことがあります。これを根拠に「生成AIはまだまだ使えない」と評価されるケースが大変多く見られるのですが、これは的外れな意見と言えます。
ハルシネーションとは、生成AIが存在しない情報をあたかも事実であるかのように生成してしまう現象です。これは、ChatGPTに代表される学習済みモデルの生成AIが、インターネットからリアルタイムで情報を取得するのではなく、過去に学習したデータに基づいてテキストを生成するという仕組みに起因します。学習データに偏りや古い情報が含まれている場合、ハルシネーションが発生しやすくなります。
なぜこの使い方は間違っているのか
生成AIと検索エンジンは根本的に異なる目的と機能を持っています。検索エンジンはインターネット上のデータベースから最新の情報を検索し、関連するウェブページを提示します。一方、ChatGPTのような生成AIは大量のデータを事前に学習し、そのパターンに基づいて新たな文章を生成するモデルです。
生成AIはリアルタイムのデータ更新を前提としていないため、最新情報の取得や事実確認には適していません。したがって、バスの発車時刻や最新ニュースなどの具体的な情報を得るためにChatGPTなどの生成AIを利用するのは誤りです。この誤用が誤解を生み、「使えない」という評価につながっています。
※なお、PerplexityのようなAI検索エンジンも存在します。こちらはChatGPTのように、対話形式で解答を生成し、情報源となったソースも表示してくれます。
生成AIの適切な活用方法
では、生成AIはどのように活用すべきなのでしょうか。以下に適切な**一部の**利用例を挙げ、それぞれ具体的に解説します。
1. 創造的なアイデア出しやブレインストーミング
生成AIは、多様な視点や新しいアイデアを提供するのに優れています。例えば、新しい商品企画のアイデア出しや、小説のプロット作成、キャッチコピーの考案、ブログ記事の下書き作成など、創造性が求められる場面で、人間の思考を刺激し、新たな発想を生み出す強力なツールとなります。
2. テキストの要約やリライト、文章作成の支援
複雑な文章の要約や、文章のリライトを行うことで、理解しやすいテキストを作成する手助けをしてくれます。例えば、学術論文の要約や、ビジネス文書の簡略化などに活用できます。また、文章を書く際の構成案や表現の提案を得ることも可能です。
3. 言語学習(英会話など)や翻訳
生成AIは、外国語の学習や翻訳にも効果的に活用できます。例えば、英語でメールを書きたい場合、日本語で内容を入力し、英訳を指示すれば、すぐに英文を書き出してくれます。さらに、文法や表現の誤りを指摘してくれたり、より自然な言い回しを提案してくれたりするケースもあります。また、英会話の練習相手としても活用できます。AIと英語で会話することで、スピーキング能力の向上に役立ちます。
他にも、コードの自動生成やバグの修正、アルゴリズムの提案など、プログラミングにおける支援ツールとして活用したり、詩や物語、キャッチコピーなど、創造的な文章の生成にも利用できます。さらに、データから洞察を得て、それをわかりやすいレポートやサマリーにまとめる、グラフや図解を作成するなどの作業にも役立ちます。ユーザーの工夫次第で、生成AIは多種多様な用途に応用でき、その可能性は無限大に広がるでしょう。
効果的に生成AIを活用するポイント
生成AIを効果的に活用するためには、以下のポイントに注意が必要です。
1. 質の高い入力(プロンプト)の重要性
生成AIは、入力された指示(プロンプト)に基づいて回答を生成します。具体的で明確な指示を与えることで、より的確な回答を得ることができます。例えば、「新商品のアイデアをください。」という曖昧な質問よりも、「環境に優しい素材を使った、10代向けのファッションアイテムの新商品アイデアを3つ提案してください。」のように詳細な情報を含めたプロンプトの方が、より質の高い回答を得られる可能性が高まります。
2. 生成AIから得た情報の検証
生成AIが提供する情報は、常に正確とは限りません。特に重要な情報や事実確認が必要な場合は、信頼できる情報源で裏付けを取ることが重要です。例えば、生成AIから得た歴史的事実をそのまま論文に記載するのではなく、歴史書や学術論文などを参照して、情報の正確性を確認する必要があります。
3. 目的に応じたツールの選択
リアルタイムの情報や最新ニュースを得る場合は、検索エンジンを利用するべきです。生成AIはあくまで文章生成やアイデア出しなどに適しています。それぞれのツールの特性を理解し、目的に応じて適切なツールを使い分けることが重要です。
最低限、以上のポイントは意識しておきたいところです。生成AIで満足のいく結果が得られない主な理由は、質の低いプロンプトとツールの誤った使い方にあります。正しい使い方を身につけて、生成AIを効果的に活用していきましょう。
まとめ
生成AIは、その特性を正しく理解することで、非常に有用なツールとなります。「使えない」と決めつける前に、その適切な活用方法を学び、目的に応じて使い分けることが大切です。
生成AIを上手に活用すると、ビジネスシーンを含めた身の回りのあらゆる作業を効率化し、私たちの発想力を高め、新たなアイデアや解決策を生み出す助けとなります。例えば、企画書の作成やマーケティング戦略のアイデア出しに生成AIを活用することで、作業効率が飛躍的に向上します。日常生活においても、メールの返信文作成や、料理のアイデア、学習のサポートなど、さまざまな場面で私たちの活動を支援してくれます。
重要なのは、生成AIを万能な解決策として捉えるのではなく、その特性や限界を理解し、適切な場面で適切に利用することです。検索エンジンと生成AIはそれぞれ得意とする領域が異なります。情報収集や事実確認には検索エンジンを、創造的な文章生成やアイデア出しには生成AIを使い分けることで、目的に合った最適な結果を得ることができます。
ABOUT執筆者紹介
Webメディア評論家 落合正和
Webメディア評論家/Webマーケティングコンサルタント
株式会社office ZERO-STYLE 代表取締役
一般財団法人 モバイルスマートタウン推進財団 副理事長兼専務理事
SNSを中心としたWebメディアを専門とし、インターネットトラブルやサイバーセキュリティ、IT業界情勢などの解説でメディア出演多数。ブログやSNSの活用法や集客術、Webマーケティング、リスク管理等の講演のほか、民間シンクタンク(日本観光推進総合研究所 所長)にて調査・研究なども行う。
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