15 January

円安・物価高で苦しい…中小事業主が知っておきたい税務対策

掲載日:2023年01月15日   
税務ニュース

2022年は円安と物価高に苦しめられた1年でした。2023年1月現在、円安は落ち着いてきたものの原油などの価格は高く、物価高は収束しそうにありません。こんなときは税務でも対策を講じておきたいものです。今回、中小事業主の資金繰りが少しでも軽くなる方法をいくつかピックアップしてご紹介します。

青色欠損金の繰戻し還付(法人・個人)

青色申告をしている事業主なら、青色申告の欠損金による繰戻還付を検討してみるといいでしょう。青色欠損金は、生じた赤字を繰り越して翌事業年度以降に生じた黒字と相殺する「青色欠損金の繰越控除」で知られています。しかし青色欠損金は未来の黒字だけでなく、過去の黒字とも相殺できます。

繰戻還付とは何か

繰戻還付とは、今期生じた赤字を前期に繰り戻し、前期分の黒字と相殺することを言います。相殺すれば前期分の黒字つまり利益が縮小します。そのため、前期分の法人税や地方法人税も減るのです。

この結果「すでに納めた税額が本来納めるべき税額よりも多くなる」という現象が生じます。還付請求を行えば、多く納め過ぎた分が戻ります。これが繰戻還付です。

この繰戻還付ができるのは、青色申告をしている個人と法人です。効果は同じですが、細かい内容が異なります。

法人の繰戻還付と手続き

法人は、欠損金が生じた事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度のいずれかにつき、還付を受けられます。たいていの法人は事業年度が1年間です。その場合、「欠損金が生じた事業年度の前事業年度」と考えて構いません。

しかし、「半年ごと」「3カ月ごと」と事業年度を1年未満にしているのなら、1年以内に開始したいずれかの事業年度の黒字と相殺することになります。

繰戻還付は申請が必要です。「欠損金の繰り戻しによる還付請求書」を使って請求します。

 

この用紙を、赤字が生じた事業年度の確定申告期限までに提出しなくてはなりません。

なお、実際の手続きにあたっては、どんな事由で繰戻還付をするのか、手続の主体は単体法人か連結法人かで書類が変わります。

個人の繰戻還付と手続き

個人事業主は、毎年1月1日から12月31日までが一事業年度です。そのため、今年分の赤字の繰り戻しの対象は前年分の黒字となります。例えば、2022年に事業所得で損失が生じたのなら、2021年分の利益と相殺することになります。

個人の繰戻し還付も、申請が必要です。次の用紙で請求します。

 

通常の確定申告の期限までに提出しなくてはなりません。たとえば、2022年分で赤字が生じて2021年分の繰戻還付請求をするのなら、2023年3月15日までにこの用紙の提出が必要となります。

 

予定納税の減額申請(個人)

個人事業主の中には、所得税の予定納税をしている人もいます。予定納税をしているなら、減額申請で金銭的な負担を減らすことを考えてみてもいいでしょう。

予定納税とは

予定納税は、その年の所得税と復興特別所得税の一部をあらかじめ納める制度のことです。基本的に、その年の5月15日時点で前年分の申告納税額が15万円を超えると、6月15日までに予定納税額の通知が届きます。

予定納税の通知が届いたら、第1期(7月1日から31日まで)と第2期(11月1日から30日)に、前年分の納税額の1/3ずつを納めなくてはなりません。

予定納税の減額申請の期間

廃業や休業、業績不振などで本年分の納税額が前年よりも明らかに下がるなら、予定納税額を減らすことができます。

ただし、減額申請を期間内に行わなくてはなりません。「納税額が減るかどうか」の判定もタイミングがあります。この申請期間と判定の時点は次のようになっています。

減額したい予定納税 申請期間 判定の時点
第1期分と第2期分 予定納税の年の7月1日~15日 予定納税の年の6月30日
第2期分 予定納税の年の11月1日~15日 予定納税の年の10月31日

減額申請の書類と記入事項

減額申請には、本年分の「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請書」を使います。この書面の中で「本年分の売上と必要経費はどれくらいになりそうか」を具体的な数字で書かなくてはなりません。

 

法人税の仮決算による中間申告(法人)

法人なら、仮決算で中間申告での納税額を抑える方法もあります。

中間申告とは

法人税にも予定納税と似た「中間申告」という制度があります。1事業年度が6カ月を超える普通法人の予定納税額が10万円を超えると、中間申告と納税の義務が生じます。

基本的には、税務署が通知してきた中間納付額を納めればおしまいです(予定納税)。ここで納める税額は前事業年度の税額の半分ですが、事業悪化で納税できないこともあります。

業績悪化なら仮決算で中間納付額を抑えられる

そこで検討したいのが「仮決算での中間申告」です。当事業年度の前半6カ月間を一事業年度とみなして納税額を計算することができます。もし最初の6か月間ですでに赤字なら、中間申告での納税は0円で済むのです。

仮決算は条件つき

ただし、仮決算をするなら、中間申告書の提出が必要です。やや手間がかかります。「赤字だから放置しておけばいい」と何もしないでいると、税務署から通知された中間納付額だけでなく、延滞税などのペナルティもかかることになります。

また仮決算での中間申告ができるのは、前事業年度の課税額の半分以下のときだけです。前事業年度よりも業績がよいときは使えません。

消費税にも仮決算があるけれど

仮決算による中間申告は法人税だけでなく消費税にもあります。こちらは、法人だけでなく個人も使えます。ただし、消費税の仮決算で税額が赤字となっても還付を受けることはできない点にご注意ください。

ABOUT執筆者紹介

税理士 鈴木まゆ子

税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。

 

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