16 January

経営相談の現場から[シリーズ第19回]実録!“普通の経営者”はどこまでAIを使っている?

掲載日:2026年01月16日   
起業応援・創業ガイド

2025年はAIが急速に浸透した年でした。少し前まで、生成AIを仕事に使うのはエンジニアやコンサルなど一部の情報感度の高い人たちでしたが、この半年ほどで急速に浸透しました。本記事を執筆している2026年1月にはごく普通の中小企業経営者が極めて実務的にAIを使い始めています。2025年10月の調査結果では中小企業の代表取締役の41%、個人事業主の26%が「自分はAIを活用している」と答えています(中小企業の従業員・代表取締役、個人事業主330人を対象とする調査結果、フリーウェイジャパン調べ)。筆者が経営コンサルタントとして日々経営者のお話を伺っている体感に照らしても、そのくらいであると感じます。今、“普通の経営者”たちはどのようなことにAIを使っているのでしょうか。

このシリーズは「経営相談の現場から」というテーマで、筆者が経営コンサルタントとして中小企業経営者や個人事業主の方から実際に伺ったお話を取り上げています。今回は、AIを業務に活用しているという5人の“普通の経営者”たちが、具体的に何に使っているのかをご紹介します。

【実録①】雑貨店経営者(30代女性・創業1年目)

社長の感性でセレクトしたトレンド雑貨を扱う雑貨店です。昨年ECサイトと実店舗を同時オープンして、日々の集客やお店づくり、商品の買い付け、資金調達など、膨大なタスクに追われています。

彼女がChatGPTに任せたのは、商品説明文と毎日のSNS投稿文のベース作り。AIに任せるまでは、日々山積みのタスクに追われ、本来楽しいはずのこれらのことが苦痛な作業になっていました。しかし文章作成の初稿をAIに任せることで簡単にバリエーションに富む文面を作れるようになり、気持ちに余裕が生まれました。さらに Gemini を使って、商品写真の背景補正や簡単なビジュアル調整も行っています。

お店の方向性や品ぞろえの悩みをAIに相談する等の不定期な使い方に留まらず、毎日発生する決まった業務(文章作成の初稿づくり)を担当させている点が、一歩進んだ活用事例と言えます。

【実録②】デイサービス経営者(40代男性・創業10年目)

高齢者デイサービスを6店舗運営する、積極拡大中の会社です。スタッフもどんどん増やして今では80人体制。人材確保には苦労していて、ミャンマーやフィリピンなどの外国人スタッフも多数採用しています。

社長が苦労していたのが「外国人スタッフに日報を書かせること」と「日報内容を把握すること」。日本語の会話はできても、書くことは苦手なスタッフが多いのです。各店舗のスタッフは皆大変な時間をかけて日報づくりをしていました。さらに、管理者と社長はそれら大量の日報を読んで内容を把握する必要がありますが、それも毎日の大変な負担になっていました。

そこで社長は、外国人従業員が音声入力でGoogleドキュメントに日報を記録できるやり方を取り入れました。口頭で報告する感覚です。そうやってできた日報を、管理者がChatGPTに読み込ませて一気に日報の形式に整えるのです。管理者と社長が読むのは、それらの日報をChatGPTがさらに要約したものだけ。

外国人スタッフには「口頭で話すだけで日報ができる」ことが大変好評です。管理者と社長にとっては「日報を全部読まなくてよくなった」ことが大きな負担軽減になりました。

大がかりなシステムをオーダーメイドで開発しなくても、既存のAIサービスを組み合わせてこうした活用ができています。

【実録③】カフェ経営者(50代女性・創業2年目)

センスの良い、季節ごとの手作りケーキが人気の小さなカフェ。インバウンドで賑わう観光地の裏通りにあります。この経営者がChatGPTを使っているのは、少し意外な場面です。

年に4回考案する季節限定ケーキの企画会議につきあってもらうことです。一人で考えていると煮詰まってしまうので、ChatGPTとの会議を開催し、アイデア出しを頼んでいます。自分のアイデアを示して案を広げてもらったり、発想の転換を手伝ってもらったり。自分一人では到底出せない質と量のアイデアが挙がるといいます。

また、新作ケーキの説明文づくりやインバウンドのお客様に向けたメニューの多言語対応もChatGPTにお願いしています。一人で経営しているカフェですが、頼もしいスタッフがいるかのようにAIを活用しています。

【実録④】エステサロン経営者(40代女性・創業3年目)

機械を使わないオールハンドの施術で、高い技術を誇る高級エステサロン。リピーターが多く売上は安定していますが、スタッフ3名の接客品質のばらつきが課題でした。しかし、接客マニュアルや接客指導カリキュラムを作成する余力はありませんでした。

そこで社長が使ったのが ChatGPT 。過去のカルテを読み込ませて、各スタッフの優れた接客対応をピックアップさせ、カウンセリングトークとして定型化させました。さらにそのカウンセリングトークをお客様の状態別に分類・整理させ、接客マニュアルとしてまとめさせたのです。

第1版の接客マニュアルが、たった15分で完成しました。毎月、さらに蓄積されたカルテを読み込ませて、必要に応じてバージョンアップさせ、今では第5版になっているということです。

【実録⑤】韓国食材の輸入卸(50代男性・創業4年目)

輸入卸というとAIと縁遠く感じるかもしれませんが、ここでも活用は進んでいます。韓国食材を扱う輸入卸事業者は競争が激しく、他社との差別化が求められます。社長は韓国食材をただ仕入れて卸すのではなく、日本の食習慣向けアレンジレシピの小さなカードを添える工夫を始めました。

しかしこのレシピをゼロから全て自分たちで作るのは大変です。そこで活躍したのがChatGPTでした。魅力的なレシピ案を、小さなカード紙面に収まる文字数でどんどん挙げてくれるので、社内スタッフは多数の案から良いものを選び、チェックと微修正をするだけで完成です。生成AIがなければ絶対に取り組めなかったことだ、と社長は笑って話します。

生成AIは2026年もさらに浸透していく

今回取り上げた5人の経営者たちはいずれも、ITリテラシーや情報感度が低いわけではないけれど特別高いわけでもない、いわゆる“普通の経営者”たちです。そうした経営者たちが「ちょっと触ってみる」という域を出て、このようにきまった業務でAIを活用するようになり、事業の一端を生成AIにサポートしてもらっているというのは、とても大きな変化です。この動きは、2026年もさらに進展していくことでしょう。

(注)本記事は2025年10月~12月に経営者の方々から伺った内容をもとに執筆したものです。
(注)本記事の内容は実際にあったご相談内容をもとにしていますが、事業者様を特定できないように多少のアレンジを加えております。
ABOUT執筆者紹介

経営コンサルタント 古市今日子

株式会社 理 代表取締役
経済産業大臣登録 中小企業診断士

外資コンサルティングファームなどで16年間経営支援の経験を積み、2016年独立。
事業再生に携わるほか、自治体の経営相談員や創業支援施設の経営指導員などを務める。
中小事業者・起業希望者の経営相談への対応件数は年間約200件

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