03 December

【年末調整】2025年は「控除もれ」多発!注意すべきはこんな人

掲載日:2025年12月03日   
税務ニュース

2025年度(令和7年度)税制改正では所得控除の要件も激変しました。これにより、控除もれが多発するおそれがあります。今回の年末調整に備え、新たな所得控除の要件を確認し、どのようなケースで注意すべきかをお伝えします。

2025年分の年末調整・確定申告で注意すべき所得控除とは

2025年分の年末調整と確定申告では、所得控除の所得要件が変わりました。次の通りです。いずれも、2025年12月1日以降から適用されます。

配偶者控除

配偶者控除とは、配偶者がいる場合に所得額から一定金額を差し引かれる制度を言います。控除額は本人の所得額と配偶者の年齢によって次のように決まります。

配偶者控除の要件の一つは「所得者と生活を共にしている配偶者の所得が48万円以下」です。これが2025年分から「58万円以下」となります。

配偶者特別控除

配偶者特別控除も、配偶者を扶養している所得者の所得額から一定額が差し引かれる制度です。控除額は次のようになっています。

これまで配偶者特別控除の要件の一つは「所得者と生活を共にしている配偶者の所得(合計所得金額)が48万円超」でした。これが上記のように2025年分から「58万円超」となります。なお、上限金額は変わりません。

扶養控除

扶養控除とは、所得者に16歳以上の扶養親族がいると、一定額が所得額から差し引かれる制度です。控除額は次の通りです。

これまで扶養親族の所得要件は「48万円以下」でした。これが2025年分から「58万円以下」となります。

特定親族特別控除

2025年度(令和7年度)税制改正で新設された制度です。大学生相当の年齢の親族等を扶養している場合、所得者は最大63万円の控除を受けられます。この制度では、親族等の所得額が58万円超123万円以下であることが条件の一つとなっています。特定親族の所得額と控除額の関係は次の通りです。

ひとり親控除

ひとり親控除は、所得者がシングルペアレントである場合に35万円が所得額から差し引かれる制度です。こちらは扶養している子の所得額がこれまで「48万円以下」でした。2025年分から「58万円以下」となります。

寡婦控除

寡婦控除は、離婚や死別で単身となった女性向けの控除制度です。27万円が所得額から差し引かれます。離婚の場合、子以外の扶養親族がいれば対象となります。これまで扶養親族の所得要件は「48万円以下」でしたが、2025年分から「58万円以下」となりました。

勤労学生控除

勤労学生控除は、働きながら通学している人向けの控除制度です。稼いでいる本人が要件に当てはまれば、27万円が所得額から差し引かれます。これまで本人の所得要件は「75万円以下」でした。2025年分から「85万円以下」となりました。

障害者控除

所得者本人あるいは配偶者控除の対象となる配偶者(同一生計配偶者)や扶養控除やひとり親控除、寡婦控除の対象となるような扶養親族が障害者である場合に、一定額が所得者本人の所得額から差し引かれる制度です。なお、この場合の扶養親族には、扶養控除のような年齢制限はありません。
控除額は次のようになっています。

同一生計配偶者と扶養親族の所得要件はこれまで「48万円以下」でした。2025年分からは「58万円以下」になります。

「所得58万円以下」は「バイト・パートの年収123万円以下」

年末調整で扱う所得控除の所得要件の変更の多くは「合計所得金額(総所得金額等)48万円以下→58万円以下」です。これをバイト・パートなどが受け取る給与年収にすると、新しい基準は「給与年収123万円以下」となります。所得控除の年収の壁は「123万円」と考えるとよさそうです。

要注意!控除もれが発生しやすいパターン

今回の年末調整では、控除もれが発生すると思われます。筆者が気になるのは主に次のようなパターンです。

妻がかつて配偶者特別控除を受けていた

配偶者である妻が例年、パートをがんばっているケースです。昨年までなら配偶者特別控除の対象でしたが、今年から配偶者控除の対象となることがあります。

例)妻がパートで120万円稼いでいる 2024年分まで 2025年分から
本人の所得控除 配偶者特別控除 配偶者控除、他

注意したいのは、2025年分における配偶者控除以外の所得控除の適用もれです。妻のパート年収が123万円以下ということは、障害者控除なども受けられる可能性があるのです。これまでの基準で考えると見落とすおそれがあります。

シングル家庭で大学生が稼ぎすぎている

シングルペアレントの家庭だと、大学生がバイトしすぎて親が損する可能性がありました。大学生のバイト年収が103万円の壁を超えると、所得控除がもろもろ受けられなくなるからです。しかし、2025年分以降は判断が難しくなります。

大学生のバイト年収 63万円控除はあるか ひとり親控除はあるか
120万円 ある(扶養控除) ある(123万円以下)
130万円 ある(特定親族特別控除) ない(123万円超)

これまでよりもちょっと稼ぎすぎても63万円控除は受けられます。しかし、稼いだ額によってはひとり親控除が消えるのです。

控除もれを防ぐには

控除もれを防ぐには、以下の対策が必要かと思います。

  • 所得控除の所得要件の変更を自ら知り、スタッフにも伝える
  • 心配であれば、家族の年収をすべて教えてもらう

ただ、中には「勤務先にはシングルであることを知られたくない」といった事情のある方もいるかと思います。そのようなケースは確定申告を促すとよいかもしれません。

ABOUT執筆者紹介

税理士 鈴木まゆ子

税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。

 

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