中小企業でも副業・兼業は活用できる!大切なポイントを押さえておきましょう。
社会保険ワンポイントコラム
Contents
政府が推進する働き方改革を受け、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を2020年9月に改定しました。象徴的なのが、それまでは「許可制」としていたものを「届出制」とする、複雑となる労働時間の管理を「管理モデル」という手法で簡素化する、などでしょうか。先進的な大手企業では、このような環境変化に伴い自社の戦略的な人材開発として「副業・兼業」を積極的に活用し始めています。いわば、禁断の果実だったものを成長の果実へと発想の転換をしているわけです。
ただ、緩和されたとはいえ、多くの企業では「副業・兼業」の制度化に二の足を踏んでいるのが実情です。それは、経営者から見れば人材の流出や長時間労働を助長するのではないか、働く人の視点では賃金カットやリストラにつなげるステップとなるのではないか、といった予断があるからでしょう。
「副業・兼業」の2つの方法
ここで、「副業・兼業」制度を感覚的に一括りで捉えるのではなく、二つに分解してみると分かりやすくなります。一つは、「副業・兼業」元として、自社の社員を「副業・兼業」先へ送り出す方法です。二つ目は、逆に「副業・兼業」先として、外部の「副業・兼業」元から副業・兼業者を受け入れる方法です。このように、「副業・兼業」といっても二つの区別があることを理解してください。視点を変えれば、前者は自社の社員の「人材育成」、後者は自社の必要とする「人材確保」につながるということを意味します。
DXの活用
近年、いずこの企業でもDX(デジタルトランスフォーメーション)に盛んに取り組まれていますが、誤解してはいけません。DXは「企業文化の変革」であり、デジタル化で終わるものではありません。下図は、弊社のコンサルティングで使用するDXの概念図ですが、目指しているのは「既存の分野」の生産性向上と「新しい分野」の創業です。これからの時代を見据えれば、企業規模にかかわらず、このような経営戦略が必須なのです。そのためには、多様な人材の確保が欠かせません。そのツールとして「副業・兼業」を活用することができます。
中小企業において、「副業・兼業」を「元」「先」として直ちに全面的に取り組むのは難しいかもわかりません。しかし、人材確保の手段として、新しく社員として採用するのではなく、「副業・兼業」先として有為な人材を一定期間確保し、自社の経営課題を社員と一緒になって解決していく方法は十分に採れるはずです。前述のとおり、大手企業では社員の人材開発手法として「副業・兼業」の推進を制度化しつつあります。これは、中小企業からすれば、大きなチャンスです。社員を固定的に抱えてしまえば、それが重荷になることもありますが、「副業・兼業」先として、喫緊の課題の解決に向けた一定期間のプロジェクトへの外部人材の確保であれば十分に可能です。特に、地域の中小企業がプロジェクトの旗を立てれば、そのフィールドを経験したい人材の確保は意外と容易です。
和菓子屋さんの事例
事例を簡単に紹介します。石川県輪島市の老舗の和菓子屋さんでは、業種の斜陽化やコロナ禍による売上減少への対応策として、外部から兼業・副業人材を5名確保し、オンラインを基本に事業プロジェクトが進められています。東京や大阪の一流企業の人材との協業が成り立っているのです。もちろん、中小企業1社だけでの取り組みには限界があるでしょう。行政や商工団体などがマッチングなどのプラットフォーム整備をサポートしてくれたら百人力です。地域によっては、すでにそのような環境があるかもわかりません。
いかなる企業も、既存事業だけに注力していてはゴーイング・コンサーンが難しい時代です。そして、コロナ禍の悪影響も計り知れない状況にあります。内外の人的リソースを有効に活用しながら、この難局を乗り越えていきましょう。
ABOUT執筆者紹介
大曲義典
株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ 代表取締役
大曲義典 社会保険労務士事務所 所長
関西学院大学卒業後に長崎県庁入庁。文化振興室長を最後に49歳で退職し、起業。人事労務コンサルタントとして、経営のわかる社労士・FPとして活動。ヒトとソシキの資産化、財務の健全化を志向する登録商標「健康デザイン経営®」をコンサル指針とし、「従業員幸福度の向上=従業員ファースト」による企業経営の定着を目指している。最近では、経営学・心理学を駆使し、経営者・従業員に寄り添ったコンサルを心掛けている。得意分野は、経営戦略の立案、人材育成と組織開発、斬新な規程類の運用整備、メンヘル対策の運用、各種研修など。
[democracy id=”130″]