09 April

2024年4月から変更!労働条件通知書の記載事項の追加対応は済んでいますか?

掲載日:2024年04月09日   
社会保険ワンポイントコラム

2024年4月より労働条件明示事項に関するルールが変わり、「労働条件通知書」への必須記載事項が追加されます。雇用形態や企業規模、業界を問わずすべての事業所で、4月以降に雇用するすべての方が対象となるルール変更です。自社で用意している雛形のアップデートをはじめ、記載内容の検討等の対応が必須ですので、間違いなく対応できるよう変更内容を確認しておきましょう。

改正後の労働条件明示の概要

労働基準法第15条では、労働契約締結および更新時に、使用者が労働者へ労働条件を書面にて明示することを義務付けており、この書面を「労働条件通知書」と呼んでいます。明示する労働条件は労働基準法施行規則にて以下のように定められています。

必ず明示する事項 定めがある場合には明示する事項
①労働契約の期間
②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
③就業の場所及び従事すべき業務
④始業及び就業の時刻、休憩時間、休日等
⑤賃金、昇給
⑥退職
⑦退職手当
⑧臨時に支払われる賃金、賞与及び最低賃金額等
⑨労働者に負担させるべき食費、作業用品その他
⑩安全及び衛生
⑪職業訓練
⑫災害補償及び業務外の傷病扶助
⑬表彰及び制裁
⑭休職

2024年4月からは、上記内容に加え、「就業場所・業務の変更の範囲」「契約更新上限」「無期転換申込機会・無期転換後の労働条件」が必ず明示する事項に追加されます。以降で詳細を解説します。

具体的な変更箇所のポイント

<就業場所・業務の変更の範囲>

従来は、入社直後の就業場所・業務内容を明示すれば良かったのですが、4月からは変更の有無とその範囲が明示事項に追加されます。要は、異動の可能性があるか、ある場合にはその範囲まで、労働条件通知書への記載が必要です。とはいえ、将来のことまで決まっていなかったり、業務を限定しない場合も多いことと思います。その場合でも、「会社の定める場所」「全ての業務へ配置転換あり」等の記載が求められます。逆を言えば、これらの記載がない場合、「業務も就業場所も変わらない労働契約」と捉えられる可能性がありますので、注意しましょう。

<契約更新上限>

有期契約の労働者に対しては、契約更新上限の有無とその上限の明示が追加されます。更新上限とは、通算契約期間または回数の上限を指し、例えば「通算5年まで」「更新は3回まで」のような内容です。また、新規に上限を設ける・従来の上限を短縮する場合には、その理由の説明も必要になります。

<無期転換申込機会・無期転換後の労働条件>

有期契約の労働者に対してもう1つ追加される明示事項が、無期転換ルールに関するものです。無期転換ルールとは、「有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者からの申し込みにより、無期労働契約に転換されるルール」のことです。有期契約労働者が企業に無期転換の申し込みをした場合、企業は断ることはできず、無期労働契約が成立します。
4月からはこの無期転換の申込権が発生する契約更新のタイミングで、「無期転換を申し込むことができる旨」と「無期転換後の労働条件」が明示事項として追加されます。

その他の留意点

今回の変更は2024年4月1日以降に適用されますので、例えば、既に在籍している方に、新しいフォーマットでの労働条件通知書を新たに作成・交付することまでは求められていません。
また、類似の改正が職業安定法にも入っており、2024年4月からは求人を出す際の明示事項も追加されます。求人時に明示すべき労働条件も、労働条件通知書と同じように定められており、今回の改正では「従事すべき業務・就業場所の変更の範囲」「有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間・更新回数上限等)」が明示事項として追加されます。内容としては労働条件通知書の変更とほぼ同様です。労働条件通知書の変更ばかりが大きく取り上げられているように感じますが、2024年4月以降は求人時の記載内容も見直しが必要だということは押さえておきましょう。

ABOUT執筆者紹介

内川真彩美

いろどり社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 / 両立支援コーディネーター

成蹊大学法学部卒業。大学在学中は、外国人やパートタイマーの労働問題を研究し、卒業以降も、誰もが生き生きと働ける仕組みへの関心を持ち続ける。大学卒業後は約8年半、IT企業にてシステムエンジニアとしてシステム開発に従事。その中で、「自分らしく働くこと」について改めて深く考えさせられ、「働き方」のプロである社会保険労務士を目指し、今に至る。前職での経験を活かし、フレックスタイム制やテレワークといった多様な働き方のための制度設計はもちろん、誰もが個性を発揮できるような組織作りにも積極的に取り組んでいる。

 
原稿提供元株式会社ブレインコンサルティングオフィス「かいけつ!人事労務」

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