企業の賃金の手当を見直しませんか~働く意欲のある人がその能力を十分に発揮できる社会へ~
社会保険ワンポイントコラム
厚生労働省の「企業の配偶者手当の在り方の検討」※1が注目されています。働く意欲のあるすべての人がその能力を十分に発揮できる社会にするためには、企業の賃金制度や手当の見直しを検討することが必要です。
さて、経営者はどのような従業員に賃金を支払いたいのでしょうか。例えば、「付加価値の高い仕事をしてくれる従業員には、より高い賃金を支払いたい」「能力がある従業員に賃金を支払いたい」「長時間仕事をしてくれる従業員に賃金を支払いたい」「住宅の賃貸(または持家)の従業員に賃金を支払いたい」「扶養家族がいる従業員に賃金を支払いたい」などがありますでしょうか。
例えば、「付加価値の高い仕事をしてくれる従業員」に手当を支給するとしたら、職務手当や特殊勤務手当、「能力がある従業員」であれば職能手当、「住宅の賃貸(または持家)の従業員」であれば住宅手当、「扶養家族がいる従業員」であれば家族手当や配偶者手当など、「長時間仕事をしてくれる従業員」は時間外手当などがあります。
その他にも、従業員の携帯電話を業務で使う場合は携帯電話手当や通信手当、車両を業務で使用する場合は車両手当、自宅を業務で使用する場合は在宅勤務手当やテレワーク手当なども増えてきているようです。
それぞれの企業によって、諸手当や支給要件は様々ですが、役付手当、住宅手当、家族手当等の支給に関する統計結果について、東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」の「賃金制度、賞与・諸手当」の統計資料※2をご紹介させていただきます。
賃金制度、賞与・諸手当
支給あり | 支給なし | 無回答 | |
---|---|---|---|
役付手当 | 72.6 | 26.9 | 0.5 |
住宅手当 | 39.7 | 60.0 | 0.3 |
家族手当 | 49.3 | 50.3 | 0.4 |
ただし、最近の傾向では、住宅手当や家族手当というよりは、働く意欲があり、付加価値の高い仕事をしてくれる従業員に多く支給したいという企業からの相談が増えております。
一方で、手当を新設することは容易ですが、既存の手当を廃止することは不利益変更に該当する可能性もあり、容易ではありません。制度の改定の目的は、人件費の削減ではなく、人件費の適正化です。不利益変更になる場合は経過措置の検討が必要なことから、制度改定前よりも人件費の総額が増えることをご認識ください。
制度の改定するときの主な流れ
Step1 | 現状の賃金制度を見直しましょう |
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Step2 | 従業員へのアンケートやヒアリングを行い、改定案を策定しましょう |
Step3 | 改定案を検討し、決定しましょう ※労使でよく話し合い、賃金の試算等を行い、不利益になる場合は経過措置を検討しましょう。 |
Step4 | 決定後に従業員に新制度を丁寧に説明し、理解してもらいましょう ※改定の影響がある従業員に丁寧な説明を行い、新制度に改定した目的を伝え、従業員の満足度向上につなげましょう |
厚生労働省の「企業の配偶者手当の在り方の検討」をきっかけに、企業の賃金の手当を見直してはいかがでしょうか。
ABOUT執筆者紹介
特定社会保険労務士 出口裕美
2004年に社会保険労務士事務所を開業。出産を機に、育児と仕事の両立のためテレワーク(在宅勤務)を開始。2014年に社会保険労務士法人出口事務所に法人化。2017年にテレワーク(サテライトオフィス勤務)を開始。2020年に新型コロナウイルスの取り組みの様子をメディアにて紹介。
経営者と社員が継続的に安心して働ける環境を構築するため、インターンシップ、ダイバーシティ(雇用の多様化)、テレワーク、業務管理システム等を積極的に導入し、また企業への導入支援コンサルタントとしても活動中。