20 November

【年末調整】定額減税で変わる源泉徴収票&控除済み及び控除されていない定額減税額の確認方法

掲載日:2024年11月20日   
税務ニュース

さて、今年も年末調整の時期がやってまいりました。
令和6年の年末調整は、定額減税により年末調整のしかたが例年とは大きく変わります。

年末調整時に行う定額減税を年調減税と言い、令和6年分の年末調整の際は、年末調整時点の定額減税額を計算し精算を行う必要があります。

また、定額減税の実施により「給与所得の源泉徴収票」(源泉徴収票)の記載について、例年とは異なる点があります。本記事では、「令和6年分給与所得の源泉徴収票」の書き方&見方について「定額減税」に関する部分をわかりやすく解説します。

1. 定額減税と源泉徴収票の記載

(1)源泉徴収票へ定額減税に関する事項の記載が必要な人は?

年末調整対象者の「給与所得の源泉徴収票」には、定額減税に関する記載が必要です。

年末調整の対象者     → 源泉徴収票に定額減税に関する記載が必要
年末調整の対象ではない方 → 源泉徴収票に定額減税に関する記載は不要

(2)源泉徴収票には定額減税に関するどのような記載が必要?

年末調整対象者の源泉徴収票の「(摘要)」欄に一定の定額減税に関する事項を記載します。
(摘要)欄は、源泉徴収票の真ん中より少し上くらいにあります。(赤丸部分)

具体的に、源泉徴収票の「(摘要)」欄に記載が必要な項目は、次の通りです。

全員 →①実際に定額減税前の年調所得税から控除した年調減税額
→②年調減税額のうち年調所得税額から控除しきれなかった金額
該当者のみ さらに、次に該当する場合は所定の記載が必要です。
→③-1 合計所得金額が1,000万円超である居住者の同一生計配偶者(「非控除対象配偶者」)を年調減税額に含めた場合
→③-2 合計所得金額が1,000万円超である居住者の同一配偶生計者が障害者に該当し、その方を年調減税額に含めた場合

①~③-2の具体的な「(摘要)」欄の記載内容は、以下の通りです。

①実際に所得税から控除した年調減税額
②年調減税額のうち年調所得税額から控除しきれなかった金額

対象者:年末調整の対象者全員
記 載:
①実際に年調所得税額から控除した年調減税額を「源泉徴収時所得税減税控除済額×××円」と記載します。
②年調減税額のうち年調所得税額から控除しきれなかった金額を「控除外額×××円」と記載します。控除しきれない金額がないときは、「控除外額0円」と記載します。

例1:全額控除できる場合

例えば、年末調整時に計算した定額減税額が120,000円、定額減税前の年調所得税額(※)が164,500円の場合、年調所得税額から120,000円の定額減税額を控除するため、「源泉徴収時所得税減税控除済額120,000円」と(摘要)欄に記載します。
※給与所得に対して計算した年間の所得税額から住宅借入金等特別控除額を控除した後の金額。以下同じ。

また、年調所得税額から控除しきれなかった金額はこの例の場合は「0(ゼロ)」のため、「控除外額0円」と記載します。

<源泉徴収票の記載例>

(国税庁ウェブサイトより)

例2:控除しきれない金額がある場合

例えば、年末調整時に計算した定額減税額が120,000円、定額減税前の年調所得税額が100,000円の場合は、源泉徴収票の(摘要)欄に次の通り記載します。

<源泉徴収票の記載例>

(摘要)
源泉徴収時所得税減税控除済額100,000円、控除外額20,000円

例3:合計所得金額が1,000万円超である居住者の同一生計配偶者を年調減税額に含めた場合

対象者:該当者のみ
合計所得金額が1,000万円超である居住者の同一生計配偶者(「非控除対象配偶者」)を年調減税額の計算に含めた場合、上記①②に加えて「非控除対象配偶者減税有」と記載します。
※その非控除対象配偶者が障害者である場合、下記ケース③-2の記載をします。

<源泉徴収票の記載例③-1>

<源泉徴収票の記載例③-2>

POINT!「(摘要)」欄は記載できる文字数に限りがあるため、「(摘要)」欄を記載する際は、定額減税に関する事項を最初に記載するなどして、定額減税に関する事項をすべて記載できるようにします。

≪Q&A≫

Q:源泉徴収票の「控除外額」に記載された金額が給付金として給付される?

A:源泉徴収票の「控除外額」は定額減税と併せて実施される「調整給付」(所得税額から定額減税で引ききれないと見込まれる人への給付)のうち、令和7年に実施する不足額給付の額を算出する際に使用されることとされています。
ただし、「控除外額」に記載された金額と調整給付の額が一致しないケースもあります。

Q:年末調整を行っていない源泉徴収票の記載はどうなる?

A:令和6年分の給与収入金額が2,000万円を超えるなどにより年末調整の対象とならなかった給与所得者の源泉徴収票の「(摘要)」欄には、定額減税に関する事項を記載する必要はありません。
注:令和6年分の給与収入金額が2,000万円以下で、給与以外の収入があり令和6年分の合計所得金額が1,805万円を超える給与所得者の源泉徴収票の摘要欄は、「源泉徴収時所得税減税控除済額0円、控除外額0円」と記載します。

定額減税実施に伴う令和6年分の年末調整の変更点の全体像については、下記の記事をご覧ください。

2. 定額減税額を源泉徴収票から確認する方法

では、「給与の所得税から定額減税額がいくら控除されたか」、また「定額減税額を控除しきれなかった金額の有無やいくら控除しきれなかったか」を確認する方法についてです。

年末調整を実施した方の一般的な源泉徴収票の記載は、次の通りです。

(国税庁ウェブサイトより)

給与を受け取る方が、定額減税を受けた金額や給与所得から引ききれなかった定額減税額を確認する場合は、源泉徴収票のどこをみれば分かるでしょうか。

給与の所得税から控除された定額減税の金額を確認したい場合

令和6年分給与所得の源泉徴収票の(摘要)欄の「源泉徴収時所得税減税控除済額」を確認しましょう。
上記の例の場合、120,000円です。この金額が、所得税額から控除された定額減税額になります。

給与の所得税額から控除しきれなかった定額減税の金額を確認したい場合

給与の所得税額から控除しきれなかった定額減税の金額を確認したい場合は、源泉徴収票の(摘要)欄の「控除外額」を確認しましょう。

上記の例の場合は、定額減税額の全額を控除できたため、「控除外額0円」となっていますが、給与の所得税額から控除しきれない定額減税額がある場合は、その金額が「控除外額XXX円」として記載されています。

以上、定額減税に伴う令和6年分の源泉徴収票の記載のしかた&源泉徴収票から控除された定額減税額と控除しきれなかった定額減税額を確認する方法についてでした。

ABOUT執筆者紹介

税理士 油谷景子

油谷景子税理士事務所 代表

『よりよく』をモットーに法人や事業者の税務及び会計を支援する愛知県名古屋市の開業税理士。相続税や不動産譲渡などの資産税にも対応。

四大税理士法人等(東京・名古屋)で上場企業等向け税務申告、連結納税や国際税務、コンサルティング業務に従事。また、個人税理士事務所で中堅中小企業向け税務会計サービス、相続税等の申告・相談など様々な実務経験を積んだ後、名古屋市で独立開業。ITや新しい技術を積極的に活用。自計化支援にも取り組んでいる。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)


著書『スタートアップ企業の税金To Doリスト』(2024年 中央経済社)

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