26 September

ふるさと納税を活用してNPO法人が収入を多角化する方法

掲載日:2024年09月26日   
税務ニュース

近年、ふるさと納税に対する関心が高まっており、年々寄付額が増加しています。2015年度では受入件数が726万件で受入額が1652億円だったものが、2023年度には受入件数が5894万件で受入額が1兆1175億円となり初めて1兆円を突破しました。(図表1)

図表1:ふるさと納税の受入額及び受入件数
(出展:総務省自治税務局市町村税課「ふるさと納税に関する現況調査結果」より筆者作成)

ふるさと納税の拡大により、ふるさと納税が重要な財源の一つになっている自治体もあります。また、ふるさと納税の返礼品に採用されることで、大きく売り上げを伸ばす事業者も存在します。NPO法人が取り扱う商品やサービスでもふるさと納税の返礼品に採用されている例もあり、収入増加の一つの選択肢として検討する価値があるでしょう。

ふるさと納税の新たな動きと具体例

最近のふるさと納税の動向として、無形の返礼品の増加が挙げられます。例えば、新潟県湯沢町はフジロックフェスティバルの入場券を返礼品の一つにしています。このようにイベント等の入場券を返礼品にすることで、地域に人を呼び込み、食事や宿泊などへの波及効果などが期待されています。ふるさと納税の返礼品として認められるには地場産品であることが必要ですが、「当該地方団体の区域内において提供される役務その他これに準ずるものであって、当該役務の主要な部分が当該地方団体に相当程度関連性のあるものであること」という要件もあります。そのため、地域で実施されるイベント等であれば無形のサービスでも返礼品として採用される可能性はあり、NPO法人も自治体と手を組むことで収益増加につなげられる可能性があります。

もちろん、無形のサービス以外でもNPO法人が生産する商品などが返礼品に取り上げられる例もあります。具体的には、障がい者施設を運営するNPO法人が施設で制作した衣類や小物や、地域振興を行うNPO法人が生産する地域の農産物を使用したお菓子などが返礼品として取り上げられた例があります。小さな規模の自治体ではふるさと納税の返礼品を探しているケースも多く、相談するとスムーズに話が進むこともあります。特に地域に密着して活動しているNPO法人にとっては、ふるさと納税の返礼品は相性が良いことも多いです。

また、近年ではガバメントクラウドファンディング(自治体が実施するクラウドファンディング)の増加も新しいトレンドです。株式会社ふるさと納税総合研究所のレポートによると令和4年度では338自治体が実施し、183億円の寄付を集めています。ガバメントクラウドファンディングでは、各自治体が地域のニーズに合わせたプロジェクトでクラウドファンディングを実施し、集まった寄付金は自治体を通してそのプロジェクトの実施団体に寄付されます。例えば、広島県神石高原町では殺処分対策として野犬の保護や譲渡を推進するプロジェクトを実施しています。このプロジェクトの実施団体は認定NPO法人ピースウィンズジャパンであり、ガバメントクラウドファンディングを活用してNPO法人が資金調達をする例もあります。

返礼品やガバメントクラウドファンディングに取り上げられる方法

知名度のある商品やサービスを取り扱っている場合には、自治体から声がかかる場合もあります。しかし、多くの場合は、自治体に企画として提案し、採用されるケースが多いでしょう。

多くの自治体にはふるさと納税を管轄する部署があり、新たな返礼品を探しています。まず、団体の所在地である自治体に問い合わせをするのが良いでしょう。その上で自治体へ申請書を提出し、審査を受けるという流れになります。

また、ガバメントクラウドファンディングのプロジェクトに選定されるには様々なルートがありますが、自治体によってはNPO法人などを対象に公募されているケースがあります。要件なども自治体により変わりますが、その自治体に所在するNPO法人であり、自治体からの補助金や委託事業を受けていない団体が対象となるケースが多いようです。

まとめ

NPO法人は地域に密着した活動を行っている例も多く、このような団体はふるさと納税の返礼品やガバメントクラウドファンディングなどで新たな収入の多角化に繋げられる可能性があります。自治体によって対応は異なりますが、これらの制度を活用していなかった団体は団体が所在する自治体の情報収集をしてみることで新たな可能性が生まれるかもしれません。

ABOUT執筆者紹介

税理士
1級ファイナンシャルプランニング技能士
金子尚弘

会計事務所プロースト

名古屋市内の会計事務所勤務を経て2018年に独立開業。NPOなどの非営利組織やソーシャルビジネスを行う事業者へも積極的に関与している。また、クラウドツールを活用した業務効率化のコンサルティングも行っている。節税よりもキャッシュの安定化を重視し、過度な節税提案ではなく、資金繰りを安定させる目線でのアドバイスに力を入れている。ブログやSNSでの情報発信のほか、中日新聞、日経WOMAN、テレビ朝日(AbemaPrime)などで取材、コメント提供の実績がある。

お客様満足度No.1・法令改正に対応した財務会計ソフト「会計王」はこちら

  • おんすけ紹介ページ

Tag

最新の記事

2025年06月11日経営相談の現場から[シリーズ第12回]経営者保証なしで借りられる金融機関はどこですか
2025年06月10日確定申告しないとどうなる?ペナルティやデメリット、遅れそうな時の対処法をわかりやすく解説
2025年06月09日交際費になるもの・ならないものの違いは?私費を交際費にしたときのリスクも解説
2025年06月06日「食料品の消費税ゼロ」とは?非課税・免税の違いと実施された場合の影響を解説
2025年06月04日【文具ライターおすすめ】自分らしいノートが作れる!最新のカスタマイズノート
人気記事ランキング
2025年04月23日 特定親族特別控除とは?大学生が150万円まで稼いでも63万円控除できるの?扶養控除との違いや課税リスクも解説
2025年05月09日 【2025年度税制改正】「年103万円の壁→年160万円の壁」ってどういうこと?バイト・パート年収3つの変更点と2つの注意点を解説
2024年03月20日 「4・5・6月の残業を減らすと社会保険料が少なくなる」は本当か
2025年06月06日 「食料品の消費税ゼロ」とは?非課税・免税の違いと実施された場合の影響を解説
2025年06月02日 【令和7年度税制改正決定版】所得税関係の改正まとめ!年収の壁は最終的にどうなった&住民税や社会保険は?基礎控除額・給与所得控除額が増える人は?
2024年03月01日 結局、一番得する社長の役員報酬額はいくらなのか!?
2022年08月24日 【インボイス制度】登録されているか確認する方法&公表サイトではどんな情報が公開される?
2025年05月21日 令和の米騒動と家事消費の税務処理
2024年10月30日 なんでうまく充電できない?USBケーブルと充電器のトラブル
2022年06月30日 ふるさと納税の控除は正しい?住民税決定通知書での確認方法を解説

カテゴリ

お問い合わせ

お問い合わせ

当サイトへのお問い合わせはこちらよりお願いします。