住所がたったの7桁に? 日本郵便の新サービス「デジタルアドレス」とは?
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日本郵便は住所入力を簡易化するサービス「デジタルアドレス」をスタートさせました。このサービスを使えば、これまで多くの人が煩わしさを感じてきた住所入力の手間を一気に省略できます。
デジタルアドレスとはどのようなサービスで、どのような場面で使えるのか。また、この新しいサービスは、今後どのように社会で利用されていく可能性があるのかを解説していきます。
デジタルアドレスで住所入力の手間を大幅削減
2025年5月、日本郵便は住所の記入における革新的なサービス「デジタルアドレス」の提供を開始しました。このサービスは、従来の住所を7桁の英数字に置き換えて表現するものです。
通常の郵便では、郵便番号と都道府県、市区町村、町名、番地、建物名、部屋番号をすべて記入する必要があるため、パソコンやスマホで住所の記入を求められる度に入力の手間がかかります。
しかし、デジタルアドレスを利用すれば「ABC-1234」といった形で、自分に付与された7桁のコードを入力するだけで住所入力を完了させられます。部屋番号も含めたすべての住所が識別されるため、マンションなどの集合住宅にお住まいの人でも7桁の英数字以外の入力は不要です。
1度発行されたデジタルアドレスは、引っ越しても同じコードを継続して使用できます。必要な手続きは、日本郵便のアプリやサイトで登録中の住所を変更するだけです。転居の多い人やシェアハウスなどの現代的なスタイルで暮らす人は、とくに便利に使えるでしょう。家族と一緒に住んでいるなど、同じ住所に複数人で同居している場合でも、各人が個別にアドレスを取得できます。
利用するためには、日本郵便のサービスを共通で使えるユーザーID「ゆうID」の登録が必要です。登録は無料でできます。日本郵便のサービスでは、送り状の作成時にデジタルアドレスを入力後、「住所に変換する」ボタンをタップすることで、郵便番号や住所が自動で入力されます。
サービスの利用拡大に期待が高まる
スタートしてまだ間もないこのサービス。現段階でデジタルアドレスを利用できるのは、郵便局アプリで「ゆうパック」と「ゆうパケット」を利用する際の送り状の入力に限定されています。そのため「デジタルアドレスを手書きしたはがきや封筒を郵便ポストに投函する」といった利用方法はできません。
ただし、日本郵便はデジタルアドレスのサービスを「順次拡大中」としており、今後利用の幅が広がっていく可能性は大いにあります。通常の郵便にも対応して、はがきや封筒を送るときの住所の記入がデジタルアドレスだけで完結するようになれば、文字を書く手間が一気に楽になるでしょう。
将来は日本郵便のパートナー企業をはじめ、他社への導入を進めていく構想もあるといいます。サービスが世間に浸透し、日本郵便以外の企業での利用が実現した場合、例えばECサイトなどで住所入力にデジタルアドレスを使えるようになるかもしれません。
現在は引っ越しをすると、利用しているサービスの住所変更をサービスごとにしなければなりませんが、デジタルアドレスの導入が進めば、ゆうIDの登録住所を変更するだけですべてのサービスの住所変更が完了するようになり、大幅に手間を減らせることも考えられます。
さらに、タクシーでの利用にも期待されています。将来はタクシー乗車時にコードを提示するだけで、行き先を伝えられるようになる可能性もあるでしょう。
テクノロジーが発展してドローンに郵便物の配達を任せるようになった未来では、利用者がドローンにデジタルアドレスを伝達して、配達先をインプットしているかもしれません。
このように様々な活用方法が考えられるので、今後どのように発展していくのか非常に楽しみなサービスです。
コードが漏洩しても住所以外の個人情報は守られる
生活を便利にしてくれる可能性を秘めたデジタルアドレスですが、個人情報の漏洩などに不安を感じる人もいるでしょう。
デジタルアドレスは、いわば住所を短縮するだけのサービスです。デジタルアドレスから個人を特定することも、住所や名前から個人のデジタルアドレスを調べることもできない仕組みとなっています。仮にコードを知られても、住所以外の情報を知られることはないので、そこまで不安に思う必要はないのかもしれません。
また、コードが漏洩した場合はデジタルアドレスを即時削除し、住所との連携を無効化することが可能です。アドレスを削除しても、利用者は新しいアドレスを再発行できます。
コードをランダムに入力することで、デジタルアドレスと紐付いた住所が表示されてしまう可能性はあります。しかし、短時間における大量の検索を検知する仕組みがあるため、不正利用は容易ではありません。ただし、偶然初めの数回でコードを当てられてしまうと、不正として検知されないまま住所を知られてしまうので、今後対策を強化してほしいポイントです。
暮らしを支えるサービスが多様化している現代では、サービスの弱点をついた新しい不正行為も次々と生まれています。新しいサービスを利用する際は、どのようなリスクがあるのかも考慮して、慎重に利用を検討することが大切です。
ABOUT執筆者紹介
内田陽
金融系の制作業務を得意とする編プロ、ペロンパワークス・プロダクション所属のライター兼編集者。雑誌や書籍、Webメディアにて、コンテンツの企画から執筆までの業務に携わる。金融関連以外にも、不動産や人事労務など幅広いジャンルの制作を担当しており、取材記事の実績も多数。