「国民年金の控除証明書が届いていたんですけど、どうしたらいいですか?」と問われたら、何と答えればよい
社会保険ワンポイントコラム
例年11月に入ると、日本年金機構から『社会保険料(国民年金保険料)控除証明書』が発行される。この証明書は国民年金の書類だが、厚生年金に加入中でも届くことがある。そのため、従業員が社会保険事務担当者に「国民年金の控除証明書が届いていたが、どうしたらいいか」などと問い合わせることもあるようだ。そこで今回は、企業に勤務中でも国民年金の控除証明書が届くケース、年末調整終了後の証明書の利用方法などを整理してみよう。
国民年金の控除証明書は会社員にも届くことがある
国民年金保険料の控除証明書は、1年間に納めた国民年金の保険料額を公的に証明する書類である。令和5年度の場合は、令和5年1月1日から同年10月2日までの間に国民年金保険料を1カ月でも納付した実績がある人に対し、11月初旬に日本年金機構から送付されている。
そのため、現在は会社員であり厚生年金に加入中であっても、令和5年1月1日から同年10月2日までの間に以下に該当するケースなどでは、国民年金保険料の控除証明書が届くことになる。
令和5年1月1日から同年10月2日までの間に…
- 会社勤めをしていなかった期間がある。
- 過去に納め忘れていた国民年金保険料を納めた。
- 過去に免除・猶予された国民年金保険料を納めた。
- 家族の国民年金保険料を代わりに納めた。
控除証明書にはハガキタイプとA4タイプの2種類があり、通常はハガキタイプが発行される。ただし、保険料を13カ月以上前納(前払い)していると、A4タイプの控除証明書が発行される仕組みになっている。
通常は「納付済額」または「合計額」を年末調整の用紙に記載
届いた控除証明書を見ると、ハガキタイプとA4タイプのいずれであっても「納付済額」「見込額」「合計額」という3つの金額欄がある。
「納付済額」欄には、令和5年1月1日から同年10月2日までの約9カ月間に納めた国民年金保険料の合計額が記載される。
また、令和5年10月3日から同年12月31日までの約3カ月間に納付される可能性がある国民年金保険料がある場合には、その額が「見込額」欄に記載される。さらに、「見込額」欄に金額記載がある場合に限り、「納付済額」と「見込額」を合算した額が「合計額」欄に記載されるルールになっている。
国民年金保険料は社会保険料控除の対象であり、会社員の社会保険料控除は年末調整で適用が認められる。そのため、通常は年末調整の用紙に「納付済額」または「合計額」のいずれかを記載し、届いた控除証明書を添付して社会保険事務担当者に提出されることになる。
年末調整で申請していない場合には翌年の確定申告で手続きを
ただし、会社勤めをしている人が年末調整で国民年金保険料に関する手続きを行わなかった場合に、控除が全く受けられなくなるわけではない。
そのような場合には令和6年に入ってから、確定申告で国民年金保険料の社会保険料控除に関する手続きを行うとよい。その結果、保険料の納付額に応じ、給与から源泉徴収された所得税の一部の還付を受けられるのが通常である。
従って、仮に従業員から年末調整事務の終了後に「国民年金の控除証明書が届いていたが、どうしたらいいか」などの相談を受けた場合には、確定申告で社会保険料控除の申請ができ、給与から天引きされた所得税が戻ってくる可能性があることを伝えるとよいだろう。
国民年金保険料は納付額の全額が控除対象のため、所得税の負担軽減効果が高い。年末調整で未申請の従業員には、ぜひ確定申告での手続きを促したいものである。
ABOUT執筆者紹介
大須賀信敬
コンサルティングハウス プライオ 代表
(組織人事コンサルタント/中小企業診断士・特定社会保険労務士)
中小企業の経営支援団体にて各種マネジメント業務に従事した後、組織運営及び人的資源管理のコンサルティングを行う中小企業診断士・社会保険労務士事務所「コンサルティングハウス プライオ」を設立。『気持ちよく働ける活性化された組織づくり』(Create the Activated Organization)に貢献することを事業理念とし、組織人事コンサルタントとして大手企業から小規模企業までさまざまな企業・組織の「ヒトにかかわる経営課題解決」に取り組んでいる。一般社団法人東京都中小企業診断士協会及び千葉県社会保険労務士会会員。
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