イベントは楽しませるだけじゃない!農家が収益を出す仕組み
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イベント開催の目的
農家の中には、すでに様々なイベントを開催している方も多いと思います。田植えから稲刈りまで1度ではなく数カ月かけての体験や、ジャガイモやダイコンなどの1日又は半日で終了する収穫体験などがあります。目的も農家によっても様々で、農園の宣伝や新規の取引先の開拓、野菜セットの購入者を招待して、感謝祭を開いている方もいるでしょう。そんなイベントですが、利益は出ていますか?今回は、タケイファームで実際に行っているイベントを例に、収益をあげるための具体的な工夫をご紹介します。
昔から変わらない収穫体験の参加費
子供の頃、ジャガイモやサツマイモの収穫体験をしたことがある人は多いと思います。そして、農家となり、今度は主催する側となったわけですが、ふと頭をよぎった疑問は「就農当初から、参加費がずっと数千円のままなのはなぜだろう?」。仮に参加費が1000円としたら30人集めても売り上げは30000円です。この30000円をどう考えるかですが、イベントは予想以上に労力を使います。「集客する労力」、「準備するに要する労力」、場合によっては「スタッフ要員を確保」しなくてはならないかもしれません。そして、イベントにかかる時間や野菜代など、見落としがちな経費も計算に入れる必要があります。先ほど書いた感謝祭のようなイベントは、顧客に喜んでもらい、リピートにつなげる目的もあり、すぐには得ることのない将来的な利益もあります。しかし、金銭的な利益があがるイベントを開催するという意識を持つということはとても大切です。
タケイファームの他にはない収穫体験
タケイファームでは「アーティチョークの収穫体験」を開催しています。現在では日本最大級のアーティチョーク畑となっていますので、日本最大級の規模を活かした、他には真似できないイベントが可能です。普段目にすることができないアーティチョークの畑、そしてフレッシュなアーティチョークにふれあう事のできる貴重な体験を楽しむことができます。

日本最大級のアーティチョーク畑
イベントの内容は、
- アーティチョークのお話
- 各自4本のアーティチョークを自分で収穫
- 畑近くにある公民館の調理室でアーティチョークの下処理講座
(収穫した4本のうち1本を使い、自らがアーティチョークを下処理) - アーティチョークの料理を2皿調理
- 畑近くにある有名パン屋さんのランチボックスでお昼

アーティチョークの下処理講座

アーティチョークローマ風の調理
参加費は9500円。土日の2日間開催し、50名が参加。売上は475,000円。パン屋さんへの支払い、調理室の使用料、料理に使用する調味料などを差し引いた純利益は345,000円です。
経費の削減は徹底する
利益をあげるために、できる限り経費をかけないようにしましょう。手袋や収穫した野菜を持ち帰る袋、収穫するためのハサミなどは参加者に持参してもらうようにしましょう。案内することでほとんどの参加者が対応してくれますが、念のため、忘れた人のために最低限の予備は用意しておくと安心です。人件費は経費の中でも大きなウエイトとなるので、スタッフはできる限り少なくすることも忘れてはなりません。タケイファームのイベントでは、飲み物も各自持参としており、その分コストを抑えています。
一番難しいのは集客
イベントの大変なところは集客です。このテクニックを一つご紹介します。
今はSNSの時代。当然のごとく、イベントが終了すると参加者の皆さんはFacebookやInstagramなどでその模様をアップします。その記事に対して「来年は是非参加したい」などのコメントが入ったりしていてしばらく盛り上がっています。この盛り上がりのタイミングを逃さず、すぐに次回予告の記事を投稿します。
内容は、
「2026年、アーティチョークの収穫体験、日程が決まりました。
詳細は未定ですが、取り急ぎ日程のみお知らせさせて頂きます。
参加希望の方は、メッセージください。先行予約を受け付けさせて頂きます。」
時間、参加費、内容は未定で、日程のみのお知らせですが、この記事によって30人ほどの予約が入ります。この記事は今回の参加者に向けて発信するものなので、詳細は未定であってもある程度の内容は予想ができます。特にリピーターは、翌年に友人を誘って参加してくれることが多く、より満足してもらうために料理内容やランチボックスも毎年ブラッシュアップしています。

別の料理でブラッシュアップ「アーティチョークユダヤ風」
アーティチョーク畑には、同じ時期にイタリアのナスやポロネギ、フランスの品種のジャガイモなども植えてあります。アーティチョークを説明する際に、軽く触れておくことでナスやポロネギなどのイベントを開催するときに集客につながる可能性が増えます。

イタリアのナス「フィレンツェ」
今回のイベントでは土日の2日間を設定しました。これは、参加者に選択肢を与えるためです。1日だけですと、予定が重なりそうな場合、参加する意思がなくなってしまいますが、2日間の設定であれば調整できる確率があがります。ナスの収穫体験などは、連続しての2日間ですと、収穫できる量が減るリスクもありますが、2週にまたいで開催すればその問題も回避できます。
高単価な参加費の設定金額はプレミア感
先ほども書きましたが、昔から変わらない参加費。この価格を高単価に設定するには、他にはない魅力のあるイベントにすることが重要です。スーパーで簡単に手に入る野菜ではなく、ややマイナーだけど熱烈なファンがいるような作物を選んだり、ジャガイモやサツマイモであれば、数種類の品種が収穫できて、その違いによる調理法のレクチャーを付けるなど、参加者が価格以上の楽しみ感じてもらえるようなプレミア感がある企画をしましょう。
週間天気予報のタイミングでキャンセル防止
畑でのイベントで気がかりなのは天気です。タケイファームの場合、雨天決行、荒天中止としています。多少の雨であれば、参加者はレインコートなどの雨具も用意してきます。そして、キャンセル防止を兼ねて、週間天気予報で当日の天気がわかった時点で参加者に連絡をします。ほとんどの参加者が「当日を楽しみにしています」と返信がきますので、これによってキャンセル防止につながります。
イベントで利益をあげるための3つのポイント
最後に利益をあげるためのポイントをまとめておきます。
- イベントに必要なものは参加者に持参してもらい経費を抑える
- 開催日を複数設定し参加者に選択肢を与える
- 他では真似できない内容を考える
イベントを開催することで、新規取引先の開拓につながり、農園の宣伝にもなります。工夫次第で、イベントはしっかりと利益を生み出すことができますので、今一度、内容と参加費を考えて開催してみてください。
ABOUT執筆者紹介
武井敏信
タケイファーム代表。「営業はしない」がポリシー。今まで350種類を超える野菜を栽培し、年間栽培する野菜は約140品種。独自の販売方法を生み出し、栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売している。趣味は食べ歩き。一般社団法人Green Collar Academy理事。青山学院大学ABS農業マーケティングゲスト講師。京都和束町PR大使。