レストランに野菜を卸したい農家必見!売り上げを安定させる3つのポイント!
農家おすすめ情報
野菜リストは儲からない
今では、栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売しているタケイファームですが、初めてのレストランへ野菜を卸したのは知り合いの紹介でした。取引の方法などは全く知識がありませんでしたので、毎週月曜日に現在収穫できる野菜のリストを送り、その中から必要な野菜の注文をもらうことにしました。最初は何の違和感もありませんでしたが、このやり方には大きなデメリットがあることに気づきました。
例えば、「ジャガイモ」「タマネギ」「ニンジン」と記載してリストを送ったとします。レストランは、「ジャガイモ」「タマネギ」の在庫はあるが、「ニンジン」はないので必要とするのですが、わざわざ「ニンジン」だけ送料をかけてまで注文しません。レストランは、タケイファーム以外にも野菜の入手先を確保していますので、「今週は休みでお願いします」と返事がきます。また、リストに書かれた野菜をレストランが必要としなければその日の出荷は無くなり、それが取引先全てに起きた場合、売り上げは0円となります。
さらに、リストに「ブロッコリー」と記載したとして、収穫当日、気温が低く凍っていたら収穫ができないために、欠品という連絡をしなければならないなど余計な時間も取られます。先方に左右される売り上げ、時間のロス、そしてリストの野菜が収穫できるかどうかの毎日抱えるプレッシャー、私は野菜リストを止めました。
売り上げを安定させる出荷発送の4つの基本ルール
野菜リストを止め、売り上げの安定を確保するために考えたのは、出荷発送の4つの基本ルールです。
- 週に1回以上、曜日を決めて発送
- 出荷1回あたりの最低金額を決める
- お届けする野菜はお任せ
- 悪天候の日は発送しない
これによってどのような結果になるか簡単に説明します。
最低金額を5000円に設定したとします。月曜日に10軒のレストランに発送すると売り上げは50000円です。火曜日に10軒あれば50000円。こうして、1日の売り上げ1週間の売り上げ、1か月の売り上げが確定し、安定した売り上げの確保が見込めます。また、お届けする野菜の種類や量をおまかせにし、悪天候の日は発送をしないことによって、無駄な作業や収穫ロスを無くすだけでなく、出荷する野菜のクオリティを保つことにもつながります。
タケイファームにはハウスがなく露地で栽培していますので、雨の日などは予備として多めに収穫する必要性があり、ここでも野菜のロスにつながり、ぬかるんだ畑に入ることで圃場も荒れてしまいます。当然ながら自信を持ったクオリティの野菜の出荷が難しくなります。農家から直送を希望しているレストランは、クオリティの高い野菜を求めていることは忘れてはなりません。
簡単に売れるものは作らない
どんな野菜を作ればレストランへ売れるか。まずは売れそうなものを作ろうと考える農家が多いのではないでしょうか。100人中、99人のシェフが使う野菜があったとします。確かにニーズはありますが、そこにはライバルがたくさんいます。その中で勝ち抜くには、「ずば抜けた品質の野菜」、「どこよりも安い価格設定」などが必要になってきます。「ずば抜けた品質の野菜」を作るには、ある程度の経験値やブランド力が必要となってきますので、どうしても「価格設定」に目を向けてしまいがちです。「農業はやり方次第で儲かる」という声をよく聞きますが、実はそれほど簡単ではありません。なぜならば、レッド・オーシャンを舞台に勝負している農家がほとんどだからです。「レッド・オーシャン」とは赤い海、競合がひしめき合う激しい競争状態にある市場です。対して、競争相手のいない未開拓市場が「ブルー・オーシャン」です。
タケイファームが勝負している舞台は「ブルー・オーシャン」です。100人中99人のシェフは必要としないが、1人のシェフが確実に欲しがる野菜を季節ごとに作っています。その中の1つが「アーティチョーク」という西洋野菜で、スーパーなどではほぼ需要はありませんが、欲しい人が必ずいる野菜です。市場に流通していない野菜ということは、競合相手がおらず、低価格でしのぎを削るような必要もありません。そのため、収穫時期が近づくとアーティチョークを探しているシェフから問い合わせが入ります。その時に必ず聞かれるのが「他にどんな野菜を作っていますか?」という質問です。アーティチョークがきっかけとなり、他の野菜にも興味を持ってくれ、新たな取引が始まるのです。
レストランとの取引は難しいことではない
初めてレストランと取引がスタートした時は、とても嬉しかったのを今でも覚えています。知人の紹介でしたが、野菜の作り方を習ったことのない素人の僕が作った野菜をプロが調理してくれお客さんが食べてくれたのです。レストランへ卸すということは、とてもハードルが高く感じるかもしれませんが、今思うと決してそのようなことはなく新規就農者でも可能です。新規就農者だろうが、ベテラン農家であろうが、大切なことは「レストランを見据えた農業」を考えることです。プロと勝負するのは本当におもしろいです。もちろん、レストランとの取引が全てではありません。前にも書きましたが、農家の数だけ農業のやり方があり、それぞれにさまざまな可能性が秘められています。少しでも「レストランとの取引」に興味をもったら、これからの農業のビジョンに加えてみるのはいかがでしょうか。
ABOUT執筆者紹介
武井敏信
タケイファーム代表。「営業はしない」がポリシー。今まで350種類を超える野菜を栽培し、年間栽培する野菜は約140品種。独自の販売方法を生み出し、栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売している。趣味は食べ歩き。一般社団法人Green Collar Academy理事。青山学院大学ABS農業マーケティングゲスト講師。京都和束町PR大使。