27 November

NPO法人が賞与を支給する際の注意点

掲載日:2024年11月27日   
税務ニュース

NPO法人は営利を目的とせず、社会的な課題の解決や公益の増進を目指して活動する組織です。この非営利という言葉から、NPO法人は利益を出してはいけないと誤解されることもありますが、収益を上げることは問題ありません。NPO法における非営利とは、収益を私的に分配せず、組織の目的達成のために再投資するという意味です。

この収益の分配について、理事や職員に賞与を支給することが利益の分配に当たるのではないかという質問を受けることがあります。そこで、今回はNPO法人が賞与を支給する際の注意点について解説します。

NPO法人が支払う賞与とは

NPO法人が賞与を支給すること自体は法律上問題ありませんが、内部規程の整備や金額の妥当性などに注意する必要があります。具体的には、内部規程に賞与に関する事項を盛り込んだ上で規程に従って支給することや、支給金額に合理性があるかという点に気を付けて下さい。

一般的に、賞与には定期賞与と決算賞与の二種類があります。定期賞与は、定期的に支給される賞与であり、一般的には年に1回または2回、一定の時期に支給されます。定期賞与は基本給をベースに支給額を決定することが多く、予算化しやすいという特徴があります。

一方、決算賞与は年度の業績に応じて支給される賞与であり、決算前に支給されることが多いです。決算賞与は業績連動型であり、年度末の財務状況に応じて支給額が決定されます。
なお、定期賞与と決算賞与のいずれについても、給与規程に盛り込んでおくことが望ましいです。具体的には、支給の基準や金額の算定方法などを定めておくべきでしょう。

賞与を支給する際の注意点

NPO法人が賞与を支給する際の注意点ですが、NPO法の観点からは収益の分配とみなされないことが重要です。そのためには、給与規程に基づき支給することが必要であり、予算書にも賞与の記載があることが望ましいでしょう。

給与規程に賞与について定めが無ければ支給できない訳ではありませんが、認定NPOの調査などで給与規程に賞与の定めがない場合、その賞与が収益の分配と指摘されるリスクもあります。特に決算賞与は業績に応じて支給されることが多いため、このような指摘を受ける可能性が高くなります。所轄庁などのとのトラブルを避けるためにも給与規程に賞与に関する事項を定めておくべきでしょう。

また、予算書を作成する場合、賞与を予算に組み込んでおくことが望ましいでしょう。事前に作成した予算に基づき支出しているため、収益の分配とみなされることを避けることができます。

次に、理事に対する賞与支給には税務的な注意点も存在します。NPO法人においては理事兼職員という立場も珍しくありませんが、代表者や副代表などの職制上の地位を有する者は法人税法における使用人兼務役員になることができません。そのため、代表者や副代表などは従業員としての立場で賞与を支給したとしても法人税法上は役員報酬として取り扱われることとなります。

そのため、理事としての職務に対する賞与支給を行う場合はもちろん、従業員としての職務に対する賞与支給であっても代表や副代表に対する賞与であれば事前確定届出給与の提出が必要となります。届出を失念すると損金として認められないため十分注意が必要です。事前確定届出給与について整理すると次の表のようになります。

(表1)事前確定届出給与の届出の要否

  理事としての賞与 従業員としての賞与
代表や副代表など職制上の地位を有する者 必要 必要
上記以外の理事 必要 不要

まとめ

NPO法人が賞与を支給する際には、給与規程との整合性、予算書への計上、税務上の取り扱いなどに注意する必要があります。

特に認定NPO法人においては所轄庁における実態調査が行われるため、賞与について収益の分配であるとの指摘を受けるリスクがあります。そのような指摘を避けるためにも、給与規程に賞与の支給基準などを定めておくことが重要です。また、予算書へ計上することで予算に基づき支出していることを明確化することができ、収益の分配であるとの指摘を防ぐことができるでしょう。そして、NPO法人では理事と従業員と兼務することが珍しくないため、税務上の取り扱いを理解した上で、対象者に対する賞与は事前確定届出給与の届出を提出することが必要となります。

ABOUT執筆者紹介

税理士
1級ファイナンシャルプランニング技能士
金子尚弘

会計事務所プロースト

名古屋市内の会計事務所勤務を経て2018年に独立開業。NPOなどの非営利組織やソーシャルビジネスを行う事業者へも積極的に関与している。また、クラウドツールを活用した業務効率化のコンサルティングも行っている。節税よりもキャッシュの安定化を重視し、過度な節税提案ではなく、資金繰りを安定させる目線でのアドバイスに力を入れている。ブログやSNSでの情報発信のほか、中日新聞、日経WOMAN、テレビ朝日(AbemaPrime)などで取材、コメント提供の実績がある。

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