28 December

中小企業のAI活用事例3選|課題・導入しやすいAIツールも紹介

掲載日:2024年12月28日   
IT・ガジェット情報

中小企業におけるAI活用は、業務効率化や生産性向上、経営改善に大きな可能性を秘めています。しかし、「AI導入はコストがかかる」「専門知識が必要」などのハードルを感じる企業も多いのが現実です。

本記事では、実際にAIを導入し成果を挙げている中小企業の事例や、比較的始めやすいAI活用方法を紹介します。AIの活用がもたらす効果や導入ポイントを理解し、自社に適した形でAIを取り入れるヒントを見つけてください。

中小企業のAI活用事例3選

中小企業のAI活用事例を3つ紹介します。

図面をもとにAIが自動で見積りを作成

プラスチック・樹脂加工を手掛ける「プラポート」では、図面をもとに見積りを作成する業務が担当営業に依存し、属人化が課題となっていました。この状況を打開するため、図面から加工難易度を判断し、自動で見積り金額を算出するAIシステムを導入しました。

AIシステムの導入により、見積り業務は担当営業に限らず他の従業員でも対応可能となり、業務の属人化が解消されました。さらに、図面を受け取ってから見積り金額を回答するまでの時間が従来の約1/3に短縮され、わずか5分程度で見積りを作成できるようになったことで、業務のスピードと効率が劇的に向上しました。

AIで受注数量予測して余剰在庫や欠品リスクを低減

自動車用照明機器や樹脂成形の製造・販売を行う「城南電機工業」は、顧客から提供される発注内示数と実際の納入数に大きなズレが生じ、余剰在庫や欠品のリスクが常に課題となっていました。

この課題を解消するため、同社はAIを導入し、製品ごとの発注予告数と実際の受注情報を学習させることで受注数量の予測精度を向上させる取り組みを開始しました。その結果、AIの活用により受注数量の予測誤差率は、最大52%から24%へと大幅に改善。製品ごとに改善幅は異なるものの、全体的に予測精度が短期間で劇的に向上したことで、余剰在庫の削減や欠品リスクの低減が可能となりました。

AIの来客数予測で売上5倍に増加

伊勢神宮のおはらい町通りに店舗を構える大衆食堂「ゑびや」は、経営判断の多くが長年「経験と勘」に依存していました。団体客の来店予測が困難なため、売り切れによる機会損失や廃棄ロスが発生し、来客数が把握できないことから適切な人員配置もできず、従業員は休暇が取得しづらい状況に陥っていました。

この課題を解決するため、「ゑびや」ではAIを活用した需要予測システムを導入しました。AIは天候データや近隣ホテルの宿泊人数、過去の売上データなどを組み合わせて分析し、「時間帯別の来客数」や「注文されるメニュー」を95%超の精度で事前予測できるようになりました。これにより、適切な食材の仕入れや在庫管理が可能となり、売り切れや廃棄ロスが大幅に削減されました。

AI導入から5年後には店舗の売上高が5倍に増加し、利益率は10倍という大幅な成長を遂げています。また、需要予測をもとに最適な人員配置が実現し、従業員の有給取得率は80%以上に向上。労働環境が劇的に改善され、働きやすい職場づくりにも成功しました。

中小企業がAIを活用するのはハードルが高い

中小企業がAIを活用するのはハードルが高く、導入を諦めている方もいます。課題について改めて見ていきましょう。

初期費用や運用コストの負担が大きい

AI導入にはシステム開発費やソフトウェア導入費がかかることが多く、中小企業にとっては大きな負担となります。さらに、運用を継続するためには追加コストやメンテナンス費用も必要であり、費用対効果の見極めが難しい場合があります。

ただし、これはオリジナルのシステムを利用した場合です。既存のAIサービスを利用する場合、それほどコストは高くありません。

専門知識や人材の不足

AIの導入や運用には、データサイエンティストやAIエンジニアなど専門知識を持つ人材が必要です。しかし、多くの中小企業ではそういった人材の確保が難しく、既存の従業員に負担がかかることが懸念されています。

すでに多く登場しているAIサービスは、どれも手軽に使えるため、専門人材が社内に不在でも導入できる可能性があります。

データの収集・管理に時間と手間がかかる

AIを活用するためには、データの収集や整備が欠かせません。しかし、データが分散しているケースや、そもそもデータを記録・管理する仕組みが整っていない中小企業も多く、AI導入前の準備段階で時間と手間がかかることが課題です。

AI活用の具体的なイメージが持てない

中小企業にとって、AIの活用事例が少ないことや、具体的にどの業務でAIが効果を発揮するのかがわかりづらいこともハードルの1つです。

既存システムとの連携が難しい

AIツールを導入する際、既存の業務システムやソフトウェアとの連携がうまくいかないケースも少なくありません。システムのカスタマイズや再構築が必要になる場合、時間やコストがさらにかかるため、導入の障壁となっています。

中小企業が比較的始めやすいAI活用方法

コストや専門人材などが課題となりにくく、比較的導入しやすいAI活用方法を紹介します。

チャットボットで顧客対応を自動化し業務効率を高める

WebサイトやLINEにAI搭載のチャットボットを導入することで、よくある問い合わせに24時間対応できます。手不足の解消や顧客満足度の向上が期待でき、業務の負担を大きく軽減します。

AIを活用した売上予測と在庫管理で効率化を実現

過去の売上データや在庫データをAIツールで分析し、需要予測や在庫の最適化を図ることで、過剰在庫や欠品を防ぎます。無駄なコストを抑えながら効率的な仕入れが可能となり、ビジネスの生産性が向上します。

AI OCRを活用し事務作業を自動化して業務効率をアップ

紙の請求書や領収書、注文書をAI OCRツールでデータ化することで、手作業による入力業務を大幅に削減できます。ミス防止や作業効率の向上が見込め、経理や事務の負担を軽減します。

SNS運用をAIで最適化し効果的なマーケティングを実現

AIを活用することでSNS投稿のタイミングや内容を最適化し、集客効果を高めるとともに業務負担を軽減します。さらに、効果分析を通じてマーケティング精度も向上し、フォロワー増加や集客力強化につながります。

顧客データ分析をAIで行いマーケティング戦略を最適化

CRMツールとAIを連携させることで、顧客データの分析が容易になり、購買パターンや傾向を把握できます。キャンペーンの効果を高め、リピート率の向上や売上増加に貢献します。

生成AIを活用して効率的にコンテンツを作成する

AIライティングツールを活用することで、ブログ記事やSNS投稿、製品説明文などのコンテンツを効率的に作成できます。マーケティングコストを抑えながらSEO効果も高められるため、企業の情報発信を強化できます。

AI音声認識で会議録作成を自動化し情報共有をスムーズに

オンライン会議や打ち合わせの内容をAI音声認識ツールで自動的に文字起こしし、効率的に議事録を作成できます。会議後の作業時間を削減し、記録漏れを防ぎつつ迅速な情報共有を実現します。

中小企業が今すぐに導入できるAIツール

中小企業がAIを導入する際に「専門知識が必要」「コストが高い」といったハードルを感じることは少なくありません。しかし、現在では簡単に導入でき、すぐに業務効率化や生産性向上に繋がるAIツールが数多く提供されています。

以下に、今すぐ始められるおすすめのAIツールをまとめましたので、自社に合ったものを見つけてみてください。

AIツール名 用途 概要 費用
ChatGPT(OpenAI) テキスト生成、カスタマーサポート、コンテンツ作成 自然な文章を生成し、業務の効率化をサポート 無料プランあり、有料プラン月額20ドル~
Notion AI 文書作成、議事録要約、業務効率化 文書の要約や校正を効率的に行えるAI機能 有料プランに含まれる(個人利用月額10ドル程度)
AI-OCRらくスルー 紙文書のデジタル化、データ入力自動化 ドラッグ&ドロップの簡単操作でAIが紙書類を読み取り、デジタルデータ化 月額3万円~
Zoom AI Companion 会議録の自動作成、音声認識 会議内容を自動文字起こしし、議事録を作成 追加料金なし
Salesforce 顧客データ分析、営業支援 CRMにAI機能を組み込み、営業活動を支援 機能により月額3千円~/1ユーザー

自社に適した形でAIを活用しましょう

中小企業にとってAIの導入は、初期費用や運用面でのハードルが高いと感じることが多いですが、実際には業務の効率化や生産性向上に直結する事例が数多く存在します。業務の属人化を解消する自動見積りシステムや、予測精度を高めて在庫管理を最適化する取り組み、さらには来客数を予測して売上や労働環境を改善した事例まで、AIの活用方法は業界や目的に合わせて多様です。

重要なのは、自社の課題や業務に適した形でAIを取り入れることです。無理に大規模なシステムを導入するのではなく、手軽に始められるAIツールや段階的な導入を検討することで、確実な効果を実感できるでしょう。AIの力を活用して、業務効率化、コスト削減、そして新たな価値創出を目指し、自社の成長につなげていきましょう。

ABOUT執筆者紹介

加藤良大

フリーライター
ホームページ・ブログ

歴11年フリーライター。執筆実績は23,000本以上。
多くの大企業、中小企業のWeb集客、メディア戦略に関わってきた。主な領域はITや不動産、医療、美容、税務・会計、法律などだが、ジャンルを問わず対応できる。

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