31 January

2027年問題。オフィスの蛍光灯が世界で販売停止に!工事が殺到する前にスムーズにLEDへ移行するノウハウ

掲載日:2025年01月31日   
IT・ガジェット情報

2027年をもって蛍光ランプは製造打ち切りとなり、輸入や輸出も禁止されます。また日本では蛍光ランプを使った照明機器の発売がすで中止されています。

なぜなら蛍光灯にはわずかながら、人体に有害な「水銀」が含まれており、ゴミとして処理する場合にこれらを分離するのに手間がかかるうえに、事故で蛍光ランプが割れてしまった場合に部屋に飛散するからです。

発売中止まで残された時間は2年。大きなオフィスでは数百本単位で蛍光ランプが使われており、照明の取替工事も必要になるので、予算も確保しなければなりません。

しかも日本照明工業会の調べでは2024年9月現在、LED照明の普及率は61.3%となっているため、残りの40%がこの2年間で交換する駆け込み需要が予測されます。

ここでは蛍光灯型の照明機器からLED照明に、スムーズに移行するためのアドバイスをします。

最大のメリットは照明の電気代が半額以下まで安くなる

オフィスの照明をLEDに切り替える最大のメリットは、電気代の安さです。オフィスの天井についている蛍光灯を見てください。そのほとんどが40Wという1.5mほどある蛍光ランプです。機器1台に1本ランプがついているものと2本ついているものがあるでしょう。

この蛍光灯ランプ1本を一日12時間、年間で250日使ったとすると年間の電気代は3,720円(31円/1kWh)です。省エネタイプの蛍光灯でも3,348円となります。LEDランプの場合は、1本18W程度なので年間の電気代は1,674円となります。省エネタイプのLEDランプだと13W程度なのでさらに安くなり、1,209円です。

ランプの種類  消費電力 1本あたりの年間電気代 一般型蛍光ランプを100%としたときの電気代  
一般形蛍光ランプ 40W 3,720円 100%
省エネ蛍光ランプ 36W 3,348円 90%
一般LEDランプ 18W 1,674円 45%
省エネLEDランプ 13W 1,209円 32.5%

蛍光ランプ1本をLEDに変える(それぞれ一般型)だけで、年間2,046円の電気代節約になるので、20m四方のオフィスで照明機器25台、ランプ50本使っている場合だと、年間の電気代は18,600円→83,700円と半分以下まで下がり、55%削減できます。

大きなオフィスでは、照明機器1台に2本の蛍光ランプが使われているので節約できる電気代も大きくなる

照明機器50台 ランプ100本(40m×20m:大規模オフィス)
年間電気代 372,000円→167,400円(55%削減)
照明機器25台 ランプ50本(20m四方:中規模オフィス)
年間電気代 186,000円→83,700円(55%削減)
照明機器9台 ランプ18本(9m四方:学校の教室サイズ)
年間電気代 66,960円→30,132円(55%削減)

オフィスの照明をLED化するだけで、照明の電気代を半分以下まで節約できるので、若干の工事費も数年で取り返せる計算になります。なおLEDランプの寿命は長く、10年間交換の必要がなく、電気代以外のランニングコストが実質0円なのです。

「LED式の蛍光ランプに交換すればOK」は大間違いで実は複雑!

オフィスに文具などを届けてくれる通販業者では、蛍光灯ランプの形とそっくりなLEDランプが販売されています。機器本体を買い替えるより安く、自分で取り換えできるとあって人気ですが、十分に注意してください。

一見すると同じ蛍光灯ランプを使う本体でも、現在5種類の本体があります。

  1. グロースタート式の本体
  2. ラピッドスタート式の本体
  3. インバータ式の本体
  4. 電子スターター式の本体
  5. 元々上記のスタート式をLEDランプ用に改造した本体

通販でよく販売されているのは、以下のような表記が見られます。

「グロースタート式のみ本製品(「LEDランプ」「LED直管」などの表記)に取り換え可能で、必ずグロー管をダミーグロー管に交換してください」

蛍光ランプのようにガラスではなく、樹脂で作られているLEDランプ

 

LEDランプと一緒に「ダミースターター」というものが添付されている。後述のグロー管とそっくり

「グロー管」は、蛍光ランプ1本と対になる小さな電球で、スイッチONにすると青白く「ぴかぴかっ!」と光る管です(ホラー映画などにあるように、青白い閃光とともに「キンッ!キン!」という音もするので、最近はあまり光らないようなタイプが多くなっています)。

ガラスで青白く閃光を放つ旧タイプのグロー管

あまり光らないタイプのグロー管。丸形蛍光ランプだとこのセットで使われている

このタイプの蛍光ランプは、電気工事士の資格不要でLEDランプに交換できますが、照明機器本体がすでに経年劣化しているためLEDランプ本来の寿命である10年は使えません。実は本体側にも10年という寿命があるのです。

コラム:LEDランプの寿命蛍光灯型LEDや電球型LED、LEDシーリングライトなど、ほとんどのLED照明の寿命は4万時間です。1日10時間使うと4000日で寿命となり、365.25日(うるう年もカウント)で割ると10.9年となるところから、およそ10年と言われています。ただし気温の高いところや頻繁にON/OFFする場合は寿命が短くなる場合もあります。

2.3.4.の蛍光灯本体は、それぞれのタイプに専用のLEDランプがありますが、電気工事士でもなければどのタイプなのかを判断するのは困難です。逆に3つのタイプのどれでも使えるLEDランプがありますが、照明機器をまるごと交換できるほど高価なので、コストパフォーマンスの点からオススメできません。

5のように以前に電気工事士が蛍光灯本体をLEDランプ用に改造した場合もLEDランプが使えます。東日本大震災を期に、省エネのLEDランプを使えるように改造したオフィスも多く、ちょうど10年ほど経過した2025年、LEDランプの寿命で交換する時期になっています。ただし工事によっては、左右逆刺しにすると点灯しないなどもあるので要注意です。

さらにLED化改造済みの照明機器で大きな問題となっているのが、どの蛍光灯本体がLEDランプ用に改造済みで、どれが蛍光ランプのままなのか?が不明になっているという例が多くあります。誤ってLED化改造済みの本体に蛍光ランプを付けたり、未改造の本体にLEDランプを付けたて火災事故が発生した事例も多数あります。どちらか分からない場合は、安全のため照明機器本体ごとLEDに交換してください。

1~5のすべてに共通して言えるのは、先の通り本体側がすでに10年以上経過しているので、せっかく新しいLEDランプに交換しても、すぐに本体が壊れてしまう場合があります。

このように5タイプもある蛍光灯本体が、どのタイプなのかを見分けるのは難しいため、照明機器本体ごと交換することをオススメします。

オフィスの照明の場合は、ほとんどが電気工事を業者に依頼しなければならないので、費用は高くつきますが、火災を起してしまうよりは安いでしょう。とくにオフィスビルなどでは、自分のオフィスの事故で、フロアやビル全体の電源を落としかねません。

コラム:混沌としてしまった蛍光灯本体はJIS規格の黒歴史火災の原因となるような機器の組み合わせは、本来コネクタの形状を変えて誤って指し込めないようにしています。たとえば機器ごとにあって面倒なACアダプタは、指し込みの大きさがまちまちで、違った電圧の機器には指し込めないようにしています。またエアコンも一般的な100Vのコンセントとエアコン専用の200Vコンセントは、指し込みが違っていてお互いに指し込めません。 

実は蛍光灯本体とランプの組み合わせが、これほど混沌としてしまったのには訳があります。それが東日本大震災です。日本では東日本大震災のあと、輪番停電や駅や公共施設の照明を半分にするなどで、全国的に省エネが推奨されました。そこに登場したのがLEDタイプの照明です。電球タイプのLED照明は、そのままソケットに指しても問題ありません。しかし蛍光灯の場合は、先に説明した通り改造が必要になります(当時は各種方式専用のLEDランプがありませんでした)。そこで大量の蛍光灯を利用しているオフィスビルが一斉に独自の改造を施し、LEDランプに交換し始めたのです。本来JISが蛍光ランプ式の本体にはLEDランプが指し込めないようなコネクタを規格化をすべきでした。しかしLED化の普及があまりにも速く、規格化できず混沌としたまま現在に至っています。 

実はパナソニックが誤った組み合わせでは使えないコネクタを開発したのですが、規格化に間に合いませんでした。

ランプのみを蛍光→LEDに交換するコスト的なメリットも希薄

照明機器本体は残して、蛍光ランプをLEDランプに交換することも可能です。しかし照明機器本体には5種類が存在し、それを見分けるのは難しく、もし見極めを誤れば火災になりかねないというリスクをお分かりいただけたでしょう。

しかしランプだけの交換は、照明機器本体ごと交換するより安いという最大のメリットがあります。しかもネットの記事を見ると、「意外とあっさりできた」「心配だったけど成功したので追加発注する」といった記事や評価をよく見かけます。

ここでリスクとコストを比較してみましょう。

【LEDランプだけ取り換えのメリット】

  • LEDランプの価格はグロースタート式で3000円。本体ごと買い替えるより4000円~9000円ほど安い(本体により価格差があり差が大きい)
  • 自分で交換できるので工事費不要

【LEDランプだけ取り換えのデメリット】

  • 本体にも寿命があるので、LEDランプ本来の寿命まで使いきれない
  • 数年すると本体の寿命で点灯しなくなり本体ごと買い替えが必要
  • 工事の事故や交換後の事故の危険性がある
  • 交換後の部屋の明るさが、ランプ選びで明るすぎたり暗すぎたりがある

【本体ごと交換のメリット】

  • 製品寿命の10年間まるまる使える
  • 工事の事故や火災の心配がない
  • 明るさの計算をしてくれるので、元の明るさを維持(または変更できる)

【本体ごと交換のデメリット】

  • ランプだけ交換より4000円~9000円ほど高い
  • 別途工事費が必要

実際には「1機器交換するのに10分程度の交換作業で業務が止まる」というデメリットもありますが、どちらにも言えることなのでここでは相殺しましょう。すると本体ごと交換する場合のデメリットは、「別途かかる工事費とランプが数千円高い」というコスト面だけになります。

ただ先にも説明した通り、照明機器をLEDに交換することで電気代が半分以下まで安くなることも鑑みるとどうでしょうか?

小規模な学校の教室程度でも照明機器9台18本を交換すれば、毎月36,000円の電気代が浮くので、数ヶ月で工事費の元が取れるでしょう。またLEDは非常に明るいので、蛍光ランプ2本を使う照明機器をLED照明1台に集約できます。

蛍光ランプを使うタイプでよく見かける2本式の「逆富士型」照明。長寿命型の高い蛍光ランプを使っても、2~3年に一度2,000円程度のランプを2本交換する必要がある。10年間で12,000~16,000のランプ交換費用が加算される

同じ逆富士型でもLEDは明るいので、発光部を1本にまとめることができシンプルになる。10年間ランプの交換も不要

この額もムダとして利益に計上するか、工事・機材費に加え安心代(保険)として経費に形状するかの判断になるでしょう。

筆者からは結論を出しませんが「規模が大きいほど機器ごと交換で業者に任せる」メリットが大きくなるのは間違いないようです。

マンションを事務所にするSOHOなら自分で交換がオススメ

SOHOのような小規模のオフィスの場合は、一般家庭と同じような天井につけるシーリングライトを利用しているでしょう。これらはほとんどの場合「引っかけシーリング」という「照明用のコンセント」がついているので、資格がなくてもLED式の照明に交換ができます。

一般家庭の天井には、照明機器を自分で交換できる「引っかけシーリング」が設置されている。これは天井についている照明専用のコンセントと同じものと思ってOK。これらがついている場合は、照明機器を自分でLEDに交換できる

壁のコンセントに掃除機のコンセントを差し込むのに資格なんて不要です。それと同じで天井の照明用コンセント(=引っかけシーリング)から既存の照明を外して、新たにLED照明を取り付けるのにわざわざ資格は不要というわけです。

逆にいうと引っかけシーリングがついていない、キッチンの流しを照らす照明は、屋内配線をそのまま照明に接続しているので、電気工事士の資格が必要になります。

天井埋め込み、吊り下げでも既存の穴やボルトがそのまま利用できる

照明の交換となると、天井を全部剥がして照明を設置し、施工しなおしになる大工事を想像するかもしれませんが、実際には既存の穴や吊り下げ用のボルトをそのまま使います。

各照明メーカーは、既存の照明機器とまったく同サイズで、最低限の施工で交換できるLED照明を用意しています。またメーカーを越えて、他社製とピッタリサイズが合うものを販売しているメーカーもあります。ほとんどの場合、天井埋め込みの照明であっても、天井に新たに穴を開けたり、張り替えたりという工事なしで、機器の交換が可能です。サイズが変って、天井埋め込みエアコンとぶつかるなんてこともありません。

LED照明は非常に明るいので、交換後は間引いて設置する場合があります。そんな時は既存の穴のサイズにびったり合う照明用レールにするのもいいでしょう(写真提供:パナソニック)

また多くの場合、LED照明は省エネかつ明るいので、これまで蛍光灯式の照明がついていたところを全部LEDに交換すると明るすぎることがあります。そこでLEDに交換後は、照明を間引いた配置にすることがあります。このとき間引かれた照明は、カバーで隠す場合もあれば、照明と同じサイズの照明用レールなどに交換し、喫茶店や美術館にあるような、スポットライトを天井から吊り下げるなどオフィスの模様変えもできます。

駆け込み需要で混乱する前にスムーズな移行を

照明のLED化が終わっていない残り40%が、2年の間にLED化を一気に進めるでしょう。その混乱に巻き込まれないように、またコストや安全などを考慮して、スムーズなLED化を進めてください。

ABOUT執筆者紹介

家電ライター/エンジニア 藤山哲人

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羽鳥真一モーニングショー」「ZIP!」「ゴゴスマ」「イット!」「news every」「Nスタ」などのワイドショーやニュースで節電や省エネを含めた家電などのコメンテーターとして多数の番組に出演。またレギュラーのラジオ番組のほか家電専門媒体「家電Watch」や「現代デジタル」「文春オンライン」などでも、家電やその回りの技術記事を“優しく楽しく面白く”解説している。

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