【外国人の雇用①】在留資格とは何か?外国人雇用に必要な就労資格3つのパターンと注意点を解説
中小企業おすすめ情報
最近、外国人を積極的に採用したいと考える中小企業が増えました。採用にあたり、最初のハードルとなるのが「在留資格」です。「在留資格さえあれば、どんな仕事でも外国人に振ることができる」。そう考える人もいますが、実はそうではありません。
今回から3回に分けて、外国人雇用に必要な在留資格の基礎知識を外国人の在留手続歴22年の行政書士が解説します。1回目のテーマは「在留資格の概要と雇用に必要な在留資格の種類」です。
1.在留資格とは?なぜ外国人雇用に必要なの?
最初に、在留資格の意味と外国人雇用に必要な理由を確認しましょう。
1-1.在留資格とは何か
在留資格とは、外国人が日本に滞在したり、日本国内で一定の活動をしたりするにあたって必要となる資格のことです。外国人は本来、日本で仕事などの活動を行ったり暮らしたりすることができません。
しかし、空港や海港で上陸許可(入国許可)を得て在留資格を付与されると、外国人は日本に滞在することが認められ、資格によっては就労が可能になったりもします。
なお、在留資格は活動内容に応じたものと身分・地位に応じたものに大別されます。
ただし、誰でも在留資格を得られるわけではありません。また、在留資格によっては活動内容に制限がかかります。
1-2.外国人雇用に在留資格が必要な理由
外国人雇用にあたっても在留資格は必要です。採用したい外国人が在留資格を取得し、日本での就労が認められていないと、そもそも働くことができません。就労の在留資格は、日本人の雇用を守る意味もあります。
2.外国人雇用に必要な就労の在留資格3つのパターン
現在、在留資格は出入国管理及び難民認定法(入管法)により、29種類が定められています。就労に必要な在留資格については、就労のできるものとできないものがありますが、実務では次の3つに分けられます。
2-1.広範囲な就労がOKな在留資格
次のいずれかの在留資格を保有する外国人は、日本人と同じく広範囲な業種での就労が可能です。この4つは「身分系(在留資格)」と言われます。
- 永住者
- 定住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
これら4つの身分系資格は、日本に居住すること自体が目的の在留資格です。そのため、日本人同様に就労を認めるという考え方が背景にあります。
2-2.条件付きで就労OKな在留資格
条件付きで就労が認められる在留資格は、主に次のようなものがあります。いずれも就労内容が指定されています。言い換えると「指定された仕事以外はできない」のです。
- 技術・人文知識・国際業務
- 技能
- 企業内転勤
- 特定技能
- 技能実習
2-2-1.技術・人文知識・国際業務
専門的知識や経験が必要な業務を行うことを目的とした在留資格です。ITなどのエンジニアや企業における研究開発職、金融やマーケティングの専門家、通訳・翻訳業務やデザイナーなどがこれに当たります。
2-2-2.技能
特殊な分野での熟練した技能が必要な業務を行うことを目的とした在留資格です。外国料理の調理師、宝飾品の加工技師、スポーツインストラクター、ソムリエなどがこれに当たります。
2-2-3.企業内転勤
技術・人文知識・国際業務と同じ業務を海外から派遣されて担当する場合の在留資格です。海外にある親会社(子会社)から日本の子会社(親会社)に転勤する場合等が該当します。
2-2-4.特定技能
特定技能とは、日本国内において人材不足が深刻となっている分野で一定の専門性や技能を有する外国人を受け入れる在留資格 です。建築や製造業の作業員、ホテルや飲食店のスタッフ、農業・漁業などの作業員が該当します。
2-2-5.技能実習
技能実習とは、開発途上にある国の人材を日本で受け入れ、日本の技術や知識を母国で伝えてもらうことを目的とした在留資格です。建設業や製造業、農業・漁業の作業員、介護やホテルのスタッフがこれに当たります。
2-3.原則NG、申請で就労OKな在留資格
外国人の在留資格が就労目的以外だと、原則、日本で仕事することはできません。しかし例外的に就労を認めてもらうことができます。具体的には「留学」「家族滞在」の在留資格の外国人が、申請して就労を認めてもらう「資格外活動許可」がこれに当たります。
「留学」はその名の通り、日本で学生として学ぶことが目的となる在留資格です。「家族滞在」は就労などで日本に滞在している外国人の配偶者や子供として一緒に生活することが目的です。いずれも原則、日本での就労は認められません。
しかし実際には「パートタイムの仕事をしたい」という希望があったりします。そのため、申請して許可が得られれば、1週間当たり28時間以内なら就労することが可能になるのです。
この場合の就労内容については、2-1の場合と同様、広範囲に認められています。そのため、コンビニやファミレス店員、或いは自己の能力を生かして語学教師などを行うことができます。
ただし、風営法に定める風俗営業等の仕事は、基本的に従事を認められていません。資格外活動許可があっても、です。
3.外国人雇用の注意点
外国人雇用の注意点は以下の通りです。
3-1.外国人の在留資格を慎重に確認
外国人を雇用するのなら、まず、保有している在留資格の種類をよく確認しましょう。雇用したい外国人が留学生ならば、資格外活動許可が必要です。さらに、時間制限があることを意識しなくてはなりません。
在留資格の情報は、日本に在住する外国人が必ず保有している「在留カード」に記載があります。雇用する前によく確認しましょう。
3-2.従事させる業務や時間などの条件に注意
先ほどの2-1以外の在留資格を持つ外国人を採用するなら、従事させる業務や時間制限に注意しましょう。
許可されていない業務に従事させてしまったり、留学生に長時間勤務をさせてしまったりすると、雇用主も外国人も次のような法令違反に問われる恐れがあります。
- 雇用主…不法就労助長罪
- 雇用されている外国人…資格外活動違反
こういった法令違反に該当すると、罰金、懲役などの刑罰のほか、外国人は最悪の場合退去強制(強制送還)となります。雇用後も入念なチェックが必要です。
ABOUT原案・監修
行政書士 鈴木良洋
1974年生まれ。1996年行政書士試験合格、1998年中央大学法学部政治学科卒業。2002年行政書士登録。建設業、司法書士事務所、行政事務所勤務を経て2004年独立開業。20年超、外国人の在留手続を専門に外国人の起業・経営支援を行う。これまでの取扱件数4000件超。元ドリームゲートアドバイザー。
ABOUT文・イラスト
税理士 鈴木まゆ子
税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。