22 April

退職した人のパソコンのバックアップと安全な破棄・流用方法

掲載日:2024年04月22日   
中小企業おすすめ情報

春は新入社員が入社したり、逆に退職する人も多いでしょう。そこで問題になるのが、退職した人のパソコンです。パソコンやスマホ、タブレットなど会社支給の物は、会社の資産なので、個人で設定していたIDやパスワードを引き継がなくてはなりません。また会社経費で購入したアプリ、最近では月額や年額で契約するアプリなどもあるため、ソフトウェアのIDとパスワードの引継ぎも重要になります。

また長年使っていたパソコンは型が古く使えないものは、機密情報などを完全に消去してからでなければ廃棄できません。実はこの消去をしていないパソコンが非常に多く、中古ショップで部品取り用に買ってみたら顧客データのようなものが丸見えだったなんてことがあります(これは筆者が体験した実話です)。

ここでは退職した人のパソコンの引継ぎから、安全に破棄、もしくは流用するためのノウハウを説明します。

WindowsにログインできるIDとパスワードを必ず残してもらう!

退職した人のパソコンでまずすべきことは、WindowsやiOSにログインできるようIDとパスワードを引き継ぐことです。通常はログイン時にIDとパスワードを利用している場合が多いでしょう。退職の際は、必ずIDとパスワードを控えておき、パソコンに付箋紙などで貼り付けておくことをオススメします。しかしそのまま放置しておくとセキュリティ上の問題があるため、ノートPCは鍵のかかる机の中に、デスクトップの場合は鍵のかかる倉庫などにしまっておきます。

またログイン方法を顔認識や指紋認識などに変更している場合は、退職前にIDとパスワードに変更してもらうようにします。Windows8からはPINコードという数桁の番号も併用できるようになっているため、念のためPINコードも残してもらうといいでしょう(IDとパスワードがあればログイン可能です)。

アプリケーションのIDとパスワードも忘れずに!

忘れがちなのがアプリケーションのIDとパスワードです。大きな企業では会社で丸ごとライセンスを購入するので、IDとパスワードが不要な場合もあります。しかし中小企業では、パソコンに初めからインストールされているMicrosoftオフィスなどを、個々に購入している場合も多いので、必ずアプリケーションのIDとパスワードも退職前に申請してもらうようにします。

それ以外にもGoogleのアカウント、PDFやPhotoshopなどで使われるAdobeのアカウントなども忘れないようにしましょう。また業務の効率化のために部署や会社で1本だけ購入したソフトなどがあれば、IDとパスワード、インストール用のシリアル番号やCD-ROMやダウンロードで購入したインストール媒体も引き継ぐのを忘れないようにしましょう。

さらに最近はWebアプリのサービスを利用していることが多くあります。プロジェクトメンバーが情報共有するシステムや、業務用のメッセージシステムなどです。これらも把握して置かないと利用していないアカウントにずっと課金が発生してしまいます。

会社によっては業務の閑散期を選んで、部署や島ごとのソフトウェアの棚卸をしているところもあります。面倒ですが非常に有効なので年1ベースで行なうといいでしょう。

WindowsやアプリのIDやパスワードの管理は誰がやる?

大きな会社であれば社内システムなどと一括して「情報システム部」が個々のパソコンやアプリを管理することもあるでしょう。ただ会社によっては情報システム部はあくまで技術セクションで、トラブルの対応が専門というところが多いようです。

多くの場合は、パソコンやアプリ、ソフトも会社資産となるので、総務部が管理することが多いようです。パソコン本体の購入からアプリの購入、資産管理、アプリの購入時に発生するIDやパスワードなど、パソコン本体やソフトの購入はすべて総務部を経由するなどのフローを徹底するようにするといいでしょう。

ただ部署で決済できるソフトなどは、なかなか総務部で把握することができません。この時こそ先にご紹介した「ソフトウェアの棚卸」が便利です。部署長なら誰が何を管理・運営しているかを把握しているので、おのずと利用しているソフトも把握できます。

こうして総務部などで、ソフトウェア資産台帳などを作成し、IDやパスワード、アプリの名称や運用者、インストール時に必要なシリアル番号とインストール媒体などを管理します。

退職した人のパソコンはまずはバックアップ

退職した人のパソコンは必ずバックアップを取ります。その理由はもちろん、大切なデータが記録されているかもしれないからです。バックアップさえ取っておけば、パソコン本体は別の用途に流用できます。

バックアップ対象は、会社で既定しているデータドライブはもちろん、WindowsがインストールされているCドライブにもデスクトップのデータなどがあるので、すべてのドライブをバックアップするのがベストです。

最近はハードディスク容量も増えているので、USBで着脱できるドライブにバックアップし、保存期間を定めておくとよいでしょう。通常の会社であれば1年間も保存しておけば、足りないデータなどに気づくはずです。

大規模な建築業やソフトウェア開発、継続してメンテナンスが必要な業務などでは、適宜データ保存期間を設定します。

型が古く不要になったパソコンはデータを完全消去

サポート対象外になったOSを利用しているパソコンや、古くて処理速度が遅く使えなくなったパソコンは破棄します。とくに機密情報がなければ、マニュアルなどに記載されている回収センターに電話をすると無償で回収してくれます(販売代金に回収手数料が含まれています)。ごくまれですが2003年10月以前に購入したものや自作パソコンなどは、回収費が含まれていないので「一般社団法人パソコン3R推進協会」や地方自治体に連絡して有償で回収して貰います。

ただ多くの場合、会社で使っていたパソコンなので、何らかの機密情報や個人情報が記録されているでしょう。その場合は「データ抹消ソフト」「データ完全消去ソフト」と呼ばれるソフトを使って、二度と復元できないようにしてから廃棄します。

これらのソフトは、市販されているものでも、信頼できるフリーウェアのダウンロードサイト(「窓の杜」など)のものでも構いません。これらのソフトがWindowsのファイル削除やディスクの初期化と異なるのは、すべてのデータを消した後に、ランダムなデータを書き込んで、元に書き込まれていたデータを読み取れないようにしてくれるところです。ちょうどランダムな文字が描かれているスタンプで、文章の一部を伏字にするのに似ています。

難点はデータを消去した後にランダムなデータを書き込むので、何時間も消去に時間がかかってしまうところです。破棄するパソコンが何台もあって時間が掛けられないという場合は、ハードディスクやSSDと呼ばれる記憶装置を取り出して、太い釘をハンマーで何か所か打ち込むといいでしょう。ディスクの中でカラカラと音がするようになれば、完全に破壊できています。最近のディスクは叩きつけるだけでは壊れないので注意してください。

まだ十分に使えるパソコンならOSを再インストール

最近購入したパソコンなど、まだ十分に使える場合は、OSを再インストールします。WindowsなどのディスクがDVDなどで添付されている場合もあれば、少し特殊な操作をするとハードディスクに保存されている新規OSを再インストールできるものもあります。後者の場合は、マニュアルなどに記載されている「OSの再インストール」や「クリーンインストール」という操作の説明を見ながら操作するといいでしょう。

スマートフォンやタブレットの場合も基本は同じ

ここまで会社支給のパソコンについて説明してきましたが、スマートフォンやタブレットを支給している場合もあるでしょう。これらの場合も、退職する人にAndroidやiOSにログインできる状態にして貰いましょう。

また経費として購入したソフトウェア、月額や年額で支払っているアプリなどのリストも作成し、場合によっては本人に解約してもらったり、IDやパスワードを引き継ぎます。

写真やアプリのデータが必要な場合は、バックアップソフトなどを使って一定期間データを保存します。通常はSDカードスロットのSDカード自体を保存します。スマホの内蔵メモリの内容をバックアップする場合は、パソコンと同様でスマホにUSBドライブを接続してバックアップする方法もあれば、空いたSDカードスロットにメモリをセットして、バックアップソフトで保存します。利用するSDカードの容量は、スマホがどれだけ内蔵メモリを利用しているかを表示する機能があるので、その容量より少し大きなものを用意すればいいでしょう。

またデータを消去し工場出荷状態に戻すには、Androidの場合は[システム] → [詳細設定] → [リセット オプション] → [すべてのデータを消去(出荷時リセット)] を選びます。iPhoneの場合は[システム] → [詳細設定] → [リセット オプション] → [すべてのデータを消去(出荷時リセット)] で工場出荷時の状態に戻ります。

退職した人のパソコンはこれで安心して破棄・再利用できます

ここまでいろいろなノウハウを説明してきましたが、大まかな手順をまとめると次のようになります。

  1. OSにインストールするIDとパスワードの引継ぎ
  2. アプリや別途購入したソフトのIDとパスワード、インストール媒体やシリアル番号の引きつき
  3. Webサービスの解約やIDとパスワードの引継ぎ
  4. データのバックアップ
  5. 専用ソフトによるデータの完全消去またはディスクの破壊
  6. パソコンの破棄、もしくはOSの再インストール

コンプライアンスや個人情報の扱いが問われるこの時代、安全にパソコンを破棄・再利用してください。

ABOUT執筆者紹介

家電ライター/エンジニア 藤山哲人

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羽鳥真一モーニングショー」「ZIP!」「ゴゴスマ」「イット!」「news every」「Nスタ」などのワイドショーやニュースで節電や省エネを含めた家電などのコメンテーターとして多数の番組に出演。またレギュラーのラジオ番組のほか家電専門媒体「家電Watch」や「現代デジタル」「文春オンライン」などでも、家電やその回りの技術記事を“優しく楽しく面白く”解説している。

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