14 July

【吉本興業 芸人が解説】売上のためにフリーランスが気をつけるべき発言

掲載日:2023年07月14日   
税務ニュース

元国税職員さんきゅう倉田です。
個人事業者として働くようになってさまざまな会社と取引をし、たくさんの会社員と接しました。会社員と個人事業者では、働き方がまったく異なります。しかし、個人事業者がどんなことに喜び、どんなことを嫌がるか会社員は知りません。個人事業者もフリーランスも悩みは同じ。働き方が多様化してフリーランスの数が増えれば、その地位は低下するため、自分の時間や仕事を守るため、日々学ばなければいけません。

気をつけるべき取引先の言動

社会人としてやってはいけないこと、例えば、急なスケジュール変更やキャンセル、支払い遅延を行う取引先に注意すべきであることは言うまでもありません(フリーランスを続けていると支払い遅延はしばしばあると思います)。

ここでは、社会的には悪いことだと認識されていないけれど、言われたら警戒すべき発言を紹介します。

「継続的に依頼しますので、初回を割引してください。」

未熟だった頃に、相手のこの言葉を信じて割り引いたことがありました。継続的に依頼してくれるのなら、交渉に応じて価格を下げても中長期的な売上が増加する方が望ましいと考えたからです。

しかし、相手が2度目の依頼をしてくることはありませんでした。交渉には応じるけれど、初回は正規の値段で、2回目以降を少しずつ値下げすべきでした。そうすれば、相手は依頼をすればするほど得をします。このような継続して依頼するインセンティブが必要だったと後から気づきました。

あなたの業務の成果が優れていたとしても、需要が継続して存在するとは限りません。取引先があなたとの契約を望んでも、取引先の持つ顧客が少なければ仕事が生み出せないからです。取引先の言葉を鵜呑みにせず、常にリスクに備えるようにしましょう。

「商品をください。」

あなたの能力を知るために、取引先があなたの商品を欲しがることがあります。例えどんなにその商品が安くとも「ください」と求める人に商品を提供しない方がよいとぼくは考えています。常識のある大人なら、買おうとするからです。

「買います」と言われて、あなたから「差し上げますよ」と言うのはよいけれど、無償提供を求める人はあなたにもあなたの商品にも敬意を払っていません。そのような無礼は、その先の取引の間にも見え隠れして、大きな厄災となる可能性があります。互いをビジネスパートナーとして認め合えないようならば、取引しない方が賢明です。

「依頼をしたいので、弊社に来てください。」

信頼関係がない取引先に呼び出されても出向いてはいけません。なぜならば、仕事を依頼するかしないかはお金を払う側に決定権があるからです。出向いたうえに成約とならなければ、移動した時間がそのままコストになります。本来、その時間で別の仕事をして報酬を得られたのに、費やした時間やお金を回収できなくなってしまいます。

それに、本当にあなたに仕事を依頼したいのなら、先方からきてくれます。あちらの人数が多く、あなたひとりの移動で済ませられるような合理的な場合を除いて、呼ばれても行ってはいけません。

売上を上げるためにすべきこと

株式会社 刀の森岡さんによると、売上を決める三要素は配架と認知とプレファレンスです。これらはおもに仕事の依頼を受けるまでの要素ですが、仕事の依頼を受けた後でも、フリーランスは売上を上げる努力をする余地があります。

例えば、依頼があったときに、価格を尋ねられることがあります。相場感がわからない人からすると、価格を聞くのは自然なことです。しかし、その質問に素直に答えるより、一度提示していただく方がよいと考えています。相手に提示してもらえば、相手があなたやあなたの仕事をどのように評価してくれているか判断できます。さらにその価格があなたを満足させるものなら、そのまま契約すればよいのです。

しかし、あなたから価格を提示すると、相手は「高い」と思うかもしれません。「高い」と思って、値下げを要求されることもあれば、そのまま受け入れることもあるでしょう。どちらにせよ、遺恨のようなものが残ります。相手が自分で決めた価格ならばすでに納得しているので、あなたが十分だと思えば交渉の必要がありません。不十分だと思った場合にはじめて相場を伝えましょう。ただ、相手が求めている業務内容がわからないので、金額には幅を持たせます。

1時間の講演の依頼だったとしても、打ち合わせを何度もする場合や拘束時間が極端に長い場合もあります。撮影を行って配信する場合もあるでしょう。そのようなあなたの想定外の業務を見越して、金額に幅を持たせます。なぜならば、金額決定後に増額させることは簡単ではないからです。

また、報酬の金額を決めるに当たっては、業務内容を必ず明確にします。報酬は変わらないのに業務を追加されることがあるからです。業務を追加された場合は、予算がかかる旨を必ず伝えます。働いた時間だけ給料がもらえる会社員は業務の追加が報酬に影響を与えることを理解できないかもしれません。そうであっても、毅然とした態度で臨みましょう。軽微であれば不問にする選択も合理的です。面倒なことを言ったり、不要な手間をかけることはあってはなりませんが、やった分の報酬をはもらうのはフリーランスとして当然です。

フリーランスの多くが、自分の持つスキルを有効に活用して働いていると思います。しかし、それだけではなく、取引先の思考や行動を読むことや税金について学ぶことも重要です。あなたを知り、あなたを守るのは、あなた自身しかいないからです。

ABOUT執筆者紹介

さんきゅう倉田

吉本興業

大学卒業後、東京国税局に入局。法人の税務調査などを行った後、吉本興業で芸人となる。著書に『お金の貯め方増やし方』(東洋経済新報社)などがある。

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