19 February

これは使える!初めての確定申告インボイス消費税!農業版

掲載日:2024年02月19日   
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はじめに

今年も確定申告の時期がやってきた。所得税の確定申告を終えたら、次は消費税の申告となる。2023年10月にインボイス制度開始、番号取得により初めて消費税の申告をされる方も多かろう。どこから手をつけてよいのか困惑する農業者も少なくない。そこで申告対象者はぜひ本稿を読んで参考にしていただきたい。記事の記載にあたり国税庁の公表資料をもとにわかりやすく説明している部分は、著者の個人的な見解も含むことをあらかじめお断りしておく。

納税義務者とは?

これまで前々年分(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超える農業者、前々年分(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下でも「消費税課税事業者選択届出書」を提出している農業者などが納税義務者であったが、2023年10月インボイス制度スタートにより、登録を受けている農業者も消費税の申告が必要になる。

2023年分について免税事業者であった農業者が、2023年10月1日からインボイス発行事業者の登録を受けた場合、登録日である2023年10月1日以降から課税事業者となる。

ここがポイント!
インボイスは、登録を受けたインボイス発行事業者(課税事業者)のみが発行でき、免税事業者はインボイスの発行ができない。インボイス発行事業者になると、基準期間の課税売上高が1,000万円以下となろうが、登録の効力が失われない限り、消費税の申告が必要となり今後も続く。

用語解説

  1. 課税期間とは、原則として個人農業者は暦年(1月1日から12月31日)をいう。上図参照。
  2. 基準期間とは、原則として個人農業者は前々年をいう。
  3. 基準期間の課税売上高1,000万円の判定とは、原則として税抜処理を行った金額によるが、免税事業者の売上げには消費税相当額が含まれていないので基準期間が免税事業者の場合、その売上げがそのまま課税売上高となる(税抜処理は行わない)。

課税の範囲

消費税は、課税取引に対して課税される。所得税で収入・経費となるものが全て消費税の課税対象になるとは限らないので、各取引に消費税がかかるか確認する必要がある。該当しないものが混在している場合には、それを除いて計算する。

ここがポイント!
課税取引とは、次の4つの要件をすべて満たす取引をいう。
①国内において行う取引(国内取引)であること
②事業者が事業として行う取引であること
③対価を得て行う取引であること
④資産の譲渡、資産の貸付け又は役務の提供であること

課税売上げ

農業所得にかかる農畜産物の販売収入は、課税売上げとなる。
ただし、銀行に預けた預金の利子などの受取利息(非課税)や、保険金、対価性のない補助金や助成金・給付金(不課税)は、課税売上げとはならない。

ここがポイント!
農業で使用していたトラクターを売却した場合の収入も課税売上げとなる。この場合、課税売上げになる金額は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いた残額ではなく、売却代金の全額になる。なお、農地(土地)の売却代金は非課税とされているので、課税売上げとはならない。

課税仕入れ

農業にかかる課税仕入れは、肥料または種苗等の棚卸資産の仕入れだけではなく、農業に使用する建物、機械、消耗品の購入、修繕費の支出なども課税仕入れに含まれる。

ただし、利子割引料および保険料等の支払い、また、農地(土地)の購入や賃借等は非課税取引なので、課税仕入れとはならない。課税の対象とならない雇人費(給与・賃金等)、専従者給与の支払い等も課税仕入れに含まれないが、酪農ヘルパーなど人材派遣報酬は課税仕入れに含まれる。

ここがポイント!
減価償却資産を購入した場合は、購入代金の全額がその年分の課税仕入れとなる。所得税ではその年分の減価償却費だけが必要経費となるので、その点が消費税と所得税とで異なる。

消費税の計算方法

消費税の計算方法について、今までは原則課税または簡易課税によるも、インボイス制度導入を機に(令和5年度税制改正)対象になる期間は決まっているものの、新たに2割特例が加わった。そこで3種類の計算方法を確認していこう。

原則課税

消費税の納税額は、次のように計算する。

簡易課税

簡易課税とは、課税売上高のみをもとに、納付する消費税額を計算する制度だ。

具体的には、課税期間における課税標準額に対する消費税額に、みなし仕入率を掛けて計算した金額が仕入控除税額となる。したがって、実際の課税仕入れ等にかかる消費税額を計算する必要はなく、課税売上高のみから納付する消費税額を算出することができる。

事業区分 該当する事業 みなし仕入率
第一種 卸売業 90%
第二種 小売業、農林漁業(飲食料品) 80%
第三種 製造業、農林漁業(飲食料品除く)等 70%
第四種 その他事業(飲食店業等) 60%
第五種 サービス業等 50%
第六種 不動産業 40%

農業、林業、漁業のうち、2019年10月1日以後に行う「飲食料品の譲渡に係る取引(軽減税率適用分)」については、事業区分が第三種事業ではなく第二種事業となる。簡易課税制度では、事務負担の軽減を図ることができる。消費税の申告に際して、仕入れや経費の消費税額の実額計算やインボイスの保存が不要となる。

ここがポイント!
簡易課税制度の適用を受けるには、次の要件を全て満たす必要がある。
① その課税期間の基準期間における課税売上高が5,000万円以下であること
②「消費税簡易課税制度選択届出書」を、納税地の所轄税務署長に提出していること

2割特例

免税事業者からインボイス発行事業者(課税事業者)になった場合の税負担・事務負担を軽減するため、売上税額の2割を納税額とすることができる(課税売上げに係る消費税額に80%を掛けて、課税売上げに係る消費税額から控除する消費税額を計算する)。

対象者は、インボイス制度をきっかけに免税事業者からインボイス発行事業者(課税事業者)として登録した者(2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下等の要件を満たす方)。

消費税の申告を行うためには、通常、経費等の集計やインボイスの保存などが必要となるが、この特例を適用すれば、所得税の申告で必要となる売上を税率ごと(8%・10%)に把握するだけで、簡単に申告書が作成できるようになる。また、事前の届出も不要で、申告時に適用するかどうかの選択が可能だ。

ここがポイント!
簡易課税制度又は2割特例の適用を選択している農業者は、簡易課税制度又は2割特例を適用しないで仕入控除税額を計算すれば還付となる場合でも、還付を受けることはできないので見極めが重要だ。多額の設備投資などを理由に売上げの金額より仕入れの金額の方が多くなるような場合は要注意。

計算上の注意点

  1. 2019年10月から複数税率導入(標準税率 10%、軽減税率 8%)により農業者の場合は、農産物の販売は軽減税率 8%、種苗・肥料などの仕入れや農業機械・設備などの購入費は標準税率10%といったようにどちらの税率も重要となる。正確な適用税率及び税率ごとに区分した消費税額が求められる。
  2. 食用のおコメ(軽減税率8%)は、第二種事業(みなし仕入率80%)であるのに対して、飼料用のおコメ(標準税率10%)は、第三種事業(みなし仕入率70%)となるので、簡易課税適用者は適用税率だけでなく、みなし仕入率にも注意が必要だ。
  3. 2割特例を適用し(又は適用せずに)、消費税の申告を行った場合には、その後、その申告について修正申告や更正の請求により、2割特例を適用しないこととする(又は適用する)ことはできない。

消費税の申告と納付

消費税の申告においては、消費税率と地方消費税率は区分して計算する。消費税の納付税額を基に地方消費税の納付税額を算出する。地方消費税の納付税額=消費税の納付税額×地方消費税率(22/78)。

消費税率と地方消費税率の区分

区分 標準税率 軽減税率
消費税率 7.8% 6.24%
地方消費税率 2.2%(消費税額の22/78) 1.76%(消費税額の22/78)
合計 10.0% 8.0%

計算事例 - 今すぐスマホでレッツトライ!

食用おコメ農業者2023年の売上げが756万円(8%、税56万円)、経費165万円(10%、税15万円)の場合

原則課税

消費税(国税)の計算(単位:円、以下同じ)

  • 課税標準額7,560,000×100/108=7,000,000
  • 消費税額7,000,000×6.24%=436,800
  • 控除対象仕入税額1,650,000×7.8/110=117,000
  • 差引税額・納付税額436,800-117,000=319,800

地方消費税の計算

  • 319,800×22/78=90,200

消費税及び地方消費税の合計納付税額

  • 319,800+90,200=410,000

初めての方、ざっくりと計算
売上税額560,000-仕入税額150,000=410,000

簡易課税

消費税の計算

  • 課税標準額7,560,000×100/108=7,000,000
  • 消費税額7,000,000×6.24%=436,800
  • 控除対象仕入税額436,800×80%=349,440
  • 差引税額・納付税額436,800-349,440=87,360→100円未満切捨て87,300

地方消費税の計算

  • 87,300×22/78=24,623→100円未満切捨て24,600

消費税及び地方消費税の合計納付税額
87,300+24,600=111,900

初めての方、ざっくりと計算
売上税額560,000-(売上税額560,000×80%)=112,000
→だいたい一致していることがわかる。

2割特例

2割特例は、売上税額に80%乗じるため、簡易課税第二種みなし仕入率80%と計算結果は同じになる(いずれの方式を選択しても、本年の差し引くことのできる控除対象仕入税額は同一となる)。

おわりに

令和5年分の消費税の確定申告書の提出期限は、令和6年4月1日(月)となっている。通常は所得税3月15日(金)の提出期限にまとめて提出される方も多いが、万が一提出後に消費税の計算ミスなど気付いた場合には慌てずに対応できる。また農業所得が赤字でも、インボイス発行事業者として登録した場合は、課税事業者として今後消費税の申告が必要となる。
まだ時間があるから余裕だと思っていてもすぐに申告期限は迫ってくるものだ。まずは重い腰を上げて早めの準備から始め、スマートな確定申告に臨んでいただければ幸いである。

ABOUT執筆者紹介

佐藤宏章

公認会計士/税理士/農業経営アドバイザー
公認会計士・税理士 佐藤宏章事務所 代表

秋田県農家出身(酪農・メロン・水稲)。東京農業大学農学部農学科卒業後、農業経営者に的確なアドバイスをと一念発起し、公認会計士資格取得。監査法人勤務を経て、「日本初の農業に特化した専門家」として独立開業。

農業経営者に会計・税務・経営をわかりやすく伝えることをモットーに、全国各地で活動中。企業・自治体・大学・税理士会等向けに講演、「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)「めざましテレビ」(フジテレビ)その他メディア出演も多数。かつてないスタイルで唯一無二の存在と信頼を集める。

日本初の農業に特化した専門家ホームページ

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