08 September

漁業者必見!消費税インボイス制度を解説!

掲載日:2023年09月08日   
税務ニュース

漁業者必見!消費税インボイス制度とは?

2019年10月の複数税率導入に次ぐ消費税の新しい制度(インボイス制度)が 2023年10月にスタートする。漁業者の方は自分には関係ないと思い込まれている方も少なくないようなので、ぜひ本稿を読んで参考にしていただきたい。記事の記載にあたり国税庁及び農林水産省の公表資料をもとにわかりやすく説明している部分は、著者の個人的な見解も含むことをあらかじめお断りする。

なぜ今、漁業者の消費税インボイス制度が重要なのか?

2023年10月1日から消費税のインボイス制度が実施される。インボイス制度は全国の漁業者にも影響があると言われているのはなぜなのか?漁業センサスによると漁業経営体の約80%が売上 1,000万円以下の免税事業者なのでインパクトが大きいことがわかる。これまで所得税の申告のみで済んでいたのがインボイス制度導入により消費税の申告納税が必要となる漁業者が増えるのではないか。

漁業者のインボイス制度が実務に与える影響

2019年10月から複数税率導入(標準税率 10%、軽減税率 8%)により農林水産業以外の事業者の場合、標準税率 10%が主体で消費税の計算がされている。漁業者の場合は、食用の生きた魚の販売は軽減税率 8%、漁船・設備などの購入費は標準税率 10%といったようにどちらの税率も大きな影響を受ける。インボイス制度が導入された際には適用税率及び税率ごとに区分した消費税額が求められるため、今まで以上に正確な記載が必須となる。交付したインボイスに誤りがあった場合には、修正したインボイスの交付が新たに必要となるからだ。

これが漁業版インボイスだ!

上図が錦鯉(鑑賞魚)と鮭のインボイス記載例である。

インボイス(適格請求書)とは、「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」であり、登録番号のほか、一定の事項が記載された請求書や納品書その他(領収書、レシート等)これに類するものをいう。様式は、法令又は通達等で定められておらず、必要な事項が記載されたものであれば、名称を問わず、また漁業者の手書きであっても、インボイスに該当する。インボイスの交付に代えて、電磁的記録(インボイスの記載事項を記録した電子データ)を提供することも可能だ。

①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

まず、インボイス発行には登録番号が必要となる。

  • 漁業法人の場合 T+法人番号
  • 個人漁業者の場合 T+13 桁の数字

事前に登録申請手続を行う必要がある。

②取引年月日

③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)

軽減税率対象の飲食料品は、人の飲用又は食用に供されるもの(食品表示法に規定する食品)。

④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率

適用税率が重要になるので、取引先と食い違いが生じないように。インボイス導入に向けて適用税率に誤りがないか再度確認する必要がある。

⑤税率ごとに区分した消費税額等

インボイス記載に必要なので確認を。

⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

 

免税事業者とインボイス制度

上図を使ってインボイス制度を説明する。レストラン(課税事業者)漁業者(免税事業者)を例に、事例を簡単にするため消費税と地方消費税を合わせた税率で計算。

レストランはお客様から外食10%で 1,000 円の消費税を預かっている。一方、レストランは漁業者から食用の魚の仕入れ8%で 400 円の消費税を支払っている。消費税の計算は預かった消費税 1,000 円から支払った消費税 400 円を差し引いた 600円をレストラン側で納める。インボイス制度開始された場合には漁業者でインボイス登録されていない場合には 400 円を差し引くことができず、レストラン側で 1,000円の消費税を納めることになる。

ここがポイントレストランだけでなく、スーパー、鮮魚店、食品加工業者なども免税事業者の漁業者からの仕入れについて、仕入税額控除ができなくなる(水産物の仲買業者についても同じ。ただし以下の経過措置参照)。

ポイント解説(仕入税額控除)

①2023 年 9 月 30 日までは 100%全額控除。

上記事例では漁業者(免税事業者)からの仕入れについては、 400 円仕入税額控除できる。

②2023 年 10 月 1 日から 2026 年 9 月 30 日まで 80%控除可能。

免税事業者からの影響を考慮して漁業者に支払った 400 円の 80%(320 円)を仕入税額控除できる。

③2026 年 10 月 1 日から 2029 年 9 月 30 日まで 50%控除可能。

免税事業者からの影響を考慮して漁業者に支払った 400 円の 50%(200 円)を仕入税額控除できる。

②③制度開始後 6 年間は、免税事業者からの課税仕入れについても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額として控除できる経過措置が設けられている。

漁業者(免税事業者)の視点

免税事業者のまま取引を考えている場合は、価格含めた取引条件など話し合いが必要となる。インボイスを登録すればと考えている方もおられよう。インボイスを登録するということは、消費税の申告・納付が必要となり、税負担が増えるということだ(インボイスの登録番号が重要とはこういうことか…。今まで所得税の計算だけで済んだのに…)。

用語解説でさらに理解を深めよう!

課税事業者

その課税期間※1 の基準期間※2 の課税売上高が 1,000 万円を超える漁業者は消費税の納税義務者となり、消費税の申告・納付を行う必要がある。

※1原則として、個人漁業者は暦年、漁業法人は事業年度
※2原則として、個人漁業者は前々年、漁業法人は前々事業年度

免税事業者

基準期間の課税売上高が 1,000 万円以下の漁業者は、原則として消費税の納税義務が免除され、消費税の申告を行う必要はない。免税事業者でも、課税事業者となることを選択することができる。免税事業者のままではインボイス発行事業者にはなれないため、課税事業者への転換を検討する漁業者もおられよう。

協同組合特例、卸売市場特例

農林水産業以外の事業者の場合、取引先の影響により免税事業者から課税事業者への移行が多いのではないか。しかし漁業者の場合、漁業協同組合等や卸売市場などを通じた委託販売を行う際には、条件があるもののインボイスの発行を求められないため(交付することが困難)免税事業者のまま取引が継続できる方法がある。

協同組合特例

上図から多数の漁業者が漁業協同組合等に販売を委託している。漁業協同組合等は漁業者から集めた魚を種類別・サイズなどに区別して出荷するため、購入者から見れば誰が出荷した水産物なのか特定することは難しい(免税事業者、課税事業者の区別が困難)。インボイスを交付することが困難な取引として交付義務が免除されている。ここで漁業者が誤解されているふしもあるので注意してほしい。漁業協同組合等に出荷しているすべての漁業者のインボイス交付義務が免除されているわけではない。上図のように無条件委託方式及び共同計算方式が条件となっている。

用語解説

無条件委託方式

出荷した農林水産物について、売値、出荷時期、出荷先等の条件を付けずにその販売を委託すること。

共同計算方式

一定の期間における農林水産物の譲渡に係る対価の額をその農林水産物の種類、品質、等級その他の区分ごとに平均した価格をもって算出した金額を基礎として精算すること。

農林水産物を購入した事業者は、漁業協同組合等が作成する一定の書類を保存することが仕入税額控除の要件となる。

ここがポイント免税事業者(漁業者)が含まれていても、卸売業者・小売業者(買い手)は、漁業協同組合等が発行する書類で仕入税額控除ができるので、新たに対応する必要はない。

卸売市場特例

卸売市場法に規定する卸売市場を通じた生鮮食料品等の委託販売の場合(中央・地⽅卸売市場とそれらに準ずる市場に限る)についても、インボイスの交付義務が免除されている。

生鮮食料品等を購入した事業者は、卸売市場が作成する一定の書類を保存することが仕入税額控除の要件となる。

参考 卸売市場法第2条「生鮮食料品等」とは、野菜、果実、魚類、肉類等の生鮮食料品その他一般消費者が日常生活の用に供する食料品及び花きその他一般消費者の日常生活と密接な関係を有する農畜水産物で政令で定めるものをいう。

 

直売所・道の駅などへの出荷について

直売所等などに販売を委託している場合、消費者への販売についてはインボイス制度の影響はない。直売所等が免税事業者の漁業者から水産物等を買い取っている場合は、仕入税額控除ができなくなるので注意する必要がある(ただし上記の経過措置参照)。

 

最後に

2023 年 10 月にインボイス制度がスタートと目前に迫っている。免税事業者の方はインボイス登録が必要か検討することになる。登録後は課税事業者として消費税の申告・納付を行うことになり負担が増す。登録を受けるか否かはあくまでも漁業者の任意であることは忘れずに付け加えておきたい。

ABOUT執筆者紹介

佐藤宏章

公認会計士/税理士
公認会計士・税理士 佐藤宏章事務所 代表

秋田県農家出身(酪農・メロン・水稲)。東京農業大学農学部農学科卒業後、農業経営者に的確なアドバイスをと一念発起し、公認会計士資格取得。監査法人勤務を経て、「日本初の農業に特化した専門家」として独立開業。

農業経営者に会計・税務・経営をわかりやすく伝えることをモットーに、全国各地で活動中。企業・自治体・大学・税理士会等向けに講演、「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)「めざましテレビ」(フジテレビ)その他メディア出演も多数。かつてないスタイルで唯一無二の存在と信頼を集める。

日本初の農業に特化した専門家ホームページ

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