15 February

「定額減税」って何?2024年6月からの源泉徴収と年末調整はどうすべき?①

掲載日:2024年02月15日   
税務ニュース

昨年12月14日、2024年度(令和6年度)税制改正大綱が発表されました。もっとも注目されたのは「定額減税」です。6月以降、給与や賞与からの源泉徴収が大変になると言われています。なぜでしょうか。2回にわたって解説します。1回目は定額減税の内容の確認です。


登場人物

よっちゃん(以下「よ」):まゆこの夫。行政書士。仕事はできるが税金はくわしくない。特技は料理と釣り。夢は釣り三昧の日々。 


まゆこ(以下「ま」):税理士・税務ライター。「こむずかしい税金をいかに分かりやすく表現するか」ばかり考えている。趣味は、よっちゃんのごはんを食べること。

定額減税って何?

「定額減税って何なの?」
「1人あたり所得税3万円と住民税1万円が控除されるという制度よ」
「所得から?」
「税額から。本来かかる所得税が5万円で住民税が3万円なら、所得税は2万円に、住民税は1万円になるってわけ」
「へー。それは1人あたりの控除額なの?」
「そうね。ただ、扶養家族がいるなら、その家族分も『所得税3万円、住民税1万円』が税額からさしひかれるの」

「扶養家族って?」
「同一生計配偶者と扶養親族のこと。具体的な条件はこうなってるよ」

「ウチだったらどうなるの?」
「私は所得48万円超あるから、よっちゃんの同一生計配偶者にならないのよね…。私にとってのよっちゃんもそう。でも、扶養親族は扶養控除と違って年齢制限はない。だから三姉妹全員、私かよっちゃんのどちらかの扶養親族になる」

「俺かまゆ子のどちらかが『(所得税3万円+住民税1万円)×4人分=16万円』の控除を受けられるのね。めっちゃオトク」
「でも1年ポッキリよ。誰でも受けられるわけじゃないし」
「そうなの?」
「合計所得金額1805万円以下でないと、定額減税は受けられないの」
「1805万円?中途半端な数字だなぁ」
「『合計所得金額1805万円』は給与しか収入がない人だと『給与年収2000万円』になるのよ。納税者の中でもっとも多い給与所得者に分かりやすいような数字にしたんじゃないかな」
「なるほど」
「でも、23歳未満の扶養親族がいたり、本人か家族が特定障害者だったりすると給与年収2000万円を超えても定額減税を受けられるケースあるけどね。所得金額調整控除の対象になるから」
「わ、わかりにくい」
「給与を1か所しかもらってない人なら、源泉徴収票のココを見るといいよ」

定額減税は基本「源泉徴収」「予定納税」で行う

「定額減税はどんな形になるの?コロナの給付金みたいに配られるのかな」
「今回はそうじゃないの。所得税は基本『先払いする税金で減税する』って形なの」
「先払いする税金?」
「1年間の所得税を年末調整や確定申告で総決算してるよね。でも実際、多くの人は事前に源泉徴収や予定納税という形で国に所得税を先払いしているのよ。その先払い税金で減税するってわけ」

「そうなんだ。でも引ききれないこともあるでしょ。扶養家族が多ければ、減税額も増えるわけだし」
「そういうときは、次回以降の源泉徴収や予定納税でさしひくの。2回目の源泉徴収で控除しきれなければ3回目、3回目の源泉徴収でもダメなら4回目…という風に」
「ええ!エンドレスじゃん!」
「2024年分の所得税で調整しきれなかったらそこで終わり。2025年分の所得税には一切影響させないようにするみたい。あと、住民税は2024年度分から減税するって。2024年6月分は徴収しないで、7月分以降、均等に減税していくみたいだよ」

「先払い税金」で調整できないなら年末調整か確定申告で減税

「ただ、全員が全員、先払い税金で処理できるわけでもないのよ」
「例えば?」
「6月2日以降に就職したケースとか。4月に退職してしばらくお休みして6月15日から就職、というケースもあるでしょう。で、就職した会社の給与支給日が10日だったら源泉徴収での定額減税はナシになるの」
「そうなると、いつ定額減税を受けるの?」
「年末調整」
「あらま」
「あと、個人事業主や不動産オーナーとかでも予定納税がなければ確定申告で定額減税を受けることになる」

「聞いてると、定額減税ってムダ作業ばっかりだね。そんなんだったら最初から年末調整か確定申告でまとめて定額減税にした方がよくない?」
「その答えは『個人住民税の定額減税(案)に係るQ&A集(令和6年1月29日(第1版))』に書いてあるのよ」

「『手取りが増えたら、その分消費もラクになるよね』って考え方らしいのよ」
「でも手取りが増えるなんて一瞬じゃん。それに、現金もらうわけじゃないから、ありがたみがうすれるよ。ホントに効果があるんだか」
「あと、こういったプロセスだけだと定額減税の恩恵を受けられない人がいるでしょう。『家族が多すぎて源泉徴収と年末調整と確定申告だけじゃ控除しきれない』とか」
「うん」
「そういうのは、あとで給付するんだって」
「は?」

よ「ムダに手間かけてるじゃん。最初からコロナのときみたいに給付にすればいいのに」
ま「まぁまぁ(汗)。次は、総務や経理にとってもっとも頭の痛い定額減税の源泉徴収事務について見ていくね」

ABOUT執筆者紹介

税理士 鈴木まゆ子

税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。

 

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