【2022年1月1日改正】65歳以上のシニア世代が知っておきたい「雇用保険マルチジョブホルダー制度」とは?
社会保険ワンポイントコラム
はじめに
今、国では「全世代型社会保障(=すべての世代に給付やサービスの対象を広げ、すべての世代が負担能力に応じて、負担し、支えあう仕組み)」を最重要課題として位置づけ、そのための優先施策に高齢者雇用の推進を掲げています。先進諸国中、最も速いスピードで少子・高齢化が進んでいる日本。労働力確保のためにシニア世代の活躍は不可欠です。
国民一人当たりの負担を抑えつつ、必要な社会保障ニーズを充足するためにも、できるだけ多くの高齢者が働き、給付を受ける側から負担する側に回ってもらう必要があります。そんな中で生まれた高齢者雇用推進改革のひとつ「マルチジョブホルダー制度」。今回は、マルチジョブホルダー制度の概要とポイントについて解説します。
マルチジョブホルダー制度とは?
雇用保険は、メインの勤務先での“1週間の所定労働時間20時間以上”であって、かつ、31日以上の雇用見込み等の要件を満たすことで加入できます。この「週20時間以上の判定」が、今まではひとつの勤務先のみの算定でしたが、今回の改正により、複数の勤務先を合算して算定できるようになりました。つまり、複数の仕事を掛け持ちしているケースであっても、そのうち2つの勤務先を合算して週20時間以上を満たすことで、雇用保険に加入することができるようになりました。(あくまでも65歳以上のシニア世代に限ります)
それにより、失業した場合に、被保険者期間が通算して6ヶ月以上あることなどの一定条件を満たせば、「高年齢求職者給付金(被保険者期間に応じて基本手当日額の30日分または50日分)」を一時金で受給することができるようになります。2つの勤務先のうち1つの勤務先のみを退職した時に場合であっても受給できるというのは、働く側にとっての大きなメリットといえるでしょう。
加入手続き、退職手続きの方法
通常、雇用保険の資格取得手続は、事業主が行うことになりますが、雇用保険マルチジョブホルダー制度では、所定労働時間について1つの事業所ですべてを把握してハローワークに届出を行うことは困難であることから、雇用保険の適用を希望する本人が自ら手続きを行う必要があります。「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」の必要事項を事業主が記載し、本人の住所(居所)を管轄するハローワークに労働者自ら申し出をします。遡り加入はできない為、労働者側から記載依頼を受けた事業主は、速やかに事業主記載事項を記入してあげてください。また、退職した場合においても同様の流れとなります。「雇用保険マルチジョブホルダー喪失・資格喪失届」の事業主記載事項を記入し、労働者本人が自ら手続きを行う必要があります。
最後に
今まで積み上げてきた豊富な経験や技能、人脈を有しているシニア世代は、ビジネスを成功へと導くカギとなる可能性を秘めています。また、企業にとっては採用コストを抑えて経験者を採用できる場合もあります。いかに高齢者雇用を進めるかというのは時代のトレンドテーマです。昔は60歳定年だった雇用が65歳までの雇用継続義務となり、そしてこれからは70歳までの雇用義務努力が企業に課される中、シニア世代の能力を十分発揮させるために、企業側がどうその受け皿となれるのか。「シニア活躍大国」の実現に向けて、企業・個人双方が、既存概念に囚われず、新たな取り組みに挑戦することが期待されます。
ABOUT執筆者紹介
中山卓
社会保険労務士 キャリアコンサルタント 社会福祉士 保育士
社会保険労務士法人オフィスALPACA 代表社員
株式会社エンパワーメント・ジャパン 代表取締役
一般社団法人さくらキャンプ 代表理事
静岡県三島市出身。静岡県東部の会計事務所にて、主に福祉関係の顧問先を数多く担当。2013年より障害福祉事業に特化した社会保険労務士事務所として独立開業し、北は北海道、西は九州まで、オンラインと対面によるサポート体制により、全国の顧問先約200社超。2017年より放課後等デイサービス『さくらキャンプ』を立ち上げ、発達に課題を抱える児童の通所支援事業にも携わる。また、社会保険労務士による日本初の法律系ロックバンドWORKERS!のリーダーとしても活動中。「ロックで伝える社会保険」をテーマに社会保険、労働法をわかりやすく伝えるための活動を行っている。
社労士バンドWORKERS!と弁護士倉重公太朗氏と法政大学キャリアデザイン学部松浦ゼミの学生たちとのコラボ企画により「キャリア自律の歌 制作プロジェクト」が目下進行中。現在、法政大学大学院キャリアデザイン学研究科在学中。
社会保険労務士法人オフィスALPACA
株式会社エンパワーメント・ジャパン
一般社団法人さくらキャンプ
社労士バンドWORKERS! オフィシャルWEBサイト
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