採用計画を立てる前に覚えておこう! 秋採用の傾向と注意点とは?
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少子化の進行によって労働人口が減少しつつある日本。加えて、かつては当たり前のものとして考えられていた終身雇用制度の時代が終わり、多くの人が転職をするようになった現代では、必要な人員を確保するために採用活動の重要性が高まっています。
企業が優秀な人材を獲得できるかどうかは“縁”に左右される要素が大きいものの、採用時期によって応募者の傾向に違いが見られる点も見逃せません。
今回の記事では、秋に実施する採用活動、いわゆる「秋採用」の傾向について解説していきます。
秋頃に実施する採用活動が『秋採用』
秋採用とは、名前が示す通り秋の時期に行われる採用活動です。企業によって多少の違いはありながらも、一般的には9月から11月にかけての期間が対象となります。
採用活動は時期によって市場に出回る人材の傾向に違いが出るものです。各時期の傾向を踏まえた上で採用活動を進めれば、企業の希望に合った人材を獲得できる可能性が高まります。また、一口に秋採用と言っても新卒の学生と転職を希望する社会人では、採用活動の傾向に大きな違いがあります。それぞれどのような特徴を持つか見ていきましょう。
新卒を対象とする秋採用の特徴
新卒採用は、時期による傾向に大きな違いがあるため、いつ採用活動を行うかが重要な意味を持つものです。そのため多くの場合、秋採用という言葉は学生を対象とする新卒採用に対して使用されます。
一方、社会人をメインターゲットとする中途採用は、時期を問わず企業の任意のタイミングで実施されるので、秋採用のように季節を強調して表現することは多くありません。
翌年4月に入社予定の学生を対象とした採用には、政府が定める就活ルールによる解禁日の設定があり、決まった時期になるまで採用活動が制限されます。
対象となる採用活動 | 解禁日 |
---|---|
広報活動 | 卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降 |
採用選考活動 | 卒業・修了年度の6月1日以降 |
正式な内定日 | 卒業・修了年度の10月1日以降 |
※2024年度卒業・修了予定者を対象とした日程
例年3月1日の「広報活動」の解禁を皮切りに、多くの企業が企業説明会の開催やエントリー受付を開始します。企業としては、他の企業に優秀な人材を確保されないために、早い段階から採用に向けた活動を実施していかなければなりません。一方の学生も、限られた採用予定人数の募集枠をほかの希望者と取り合うことになります。そのため、企業と学生双方に「早期に採用/就職を決めて安心したい」という意向があり、「採用選考活動」が解禁される6月1日から夏休みまでの時期にかけては、多くの企業が活発に選考を行うため、新卒者の就職活動が最も激化します。
秋頃には、すでにその年の新卒採用が終了した企業や内定を得て就職活動を終えた学生が多くなります。しかし、なかには春・夏の採用活動で、計画通りに行かなかった人数分を補充するために秋採用を実施する企業も出てくるでしょう。秋採用の採用予定人数は、多くの場合、春・夏と比較して少なくなる傾向にあるため、採用の倍率は高くなりがちです。
秋採用に応募する学生は、夏までに内定を得られなかった人、公務員試験を受けたが不合格となり民間企業への就職に方向転換した人、企業の都合で内定取り消しとなった人など、さまざまなタイプの人がいます。春夏の時期に都市部で内定を得られなかった就活生が地元企業に目を向け始めるケースも考えられるので、地方に拠点を構える企業にとっての秋採用は、新卒社員を獲得するためのチャンスとなるでしょう。
また、海外留学している学生は、留学先での卒業時期が日本と異なるため、帰国するタイミングが春・夏採用に間に合わない場合があります。そのような人は、帰国後の企業の秋採用開始時期に合わせて就職活動を始めることが多く、留学で語学力を培った人材が採用市場に出回るという点は企業から見たメリットとなるでしょう。
なお、採用活動の解禁日を定めた就活ルールは元々経団連が定めたものでしたが、2019年に廃止されています。廃止後は、政府主導に変更されていますが、2025年までは経団連が定めたルールが維持されることが決まっており、現状、廃止前と制度内容に違いは出ていません。ただし、2025年以降は、制限が撤廃される可能性もあるので、新卒採用を取り巻く動きに大きな変化が起きることが考えられます。
また、就活ルールを守らなかった企業に対する罰則の定めはないため、ルールに従わずに採用活動を展開する企業が少なくないのが現状です。
中途の秋採用
前述の通り、中途採用は新卒の採用活動ほど季節による傾向に左右されることはありません。しかし、中途採用では秋頃になると転職市場に人が増加する要因があるので、しっかり押さえておきましょう。
多くの日本の企業では4月〜9月を上半期、10月〜3月を下半期と定めています。そのような企業が上半期の状況を踏まえて人員補充を進める場合、8月から9月頃にかけて選考を実施し、内定を出した人材が10月に入社すれば、新しい人材が後期の開始タイミングで入社する形になるので、スムーズに後期のスタートを切ることができます。
このタイミングでの入社は、転職希望者にとっても、前の会社を上半期で退職し、新しい職場に下半期から仲間入りする運びとなるので、仕事の区切りをつけやすいというメリットがあります。また、夏がボーナスの時期だということも、秋の転職市場に人が増える要因といえるでしょう。これは、夏のボーナスを受け取ってから転職活動を始めようと考える人が多いためです。逆にいうと、夏と冬のボーナス前の時期は、転職活動は落ち着く傾向にあります。
ただし、そもそも賞与の制度がない企業も少なくありません。そのような企業で勤めている人は、時期を意識せずに転職活動を進めるので、ボーナス後の時期以外であっても一定数の応募者は出てくるものです。欠員などの理由で急いで人員補充をしたい場合は、ボーナス前のタイミングであっても、早急に採用活動を進めた方が良い場合もあります。
今回は、秋採用について解説してきました。新卒採用では時期による傾向の差が大きい一方で、中途採用では新卒を対象とした採用活動ほど大きな違いはありません。ただし、 夏季ボーナス直後のタイミングであるなど、転職希望者が増加する要因は存在するので、効率的な採用計画を立てるためには時期も考慮して進めましょう。
ABOUT執筆者紹介
内田陽
金融系の制作業務を得意とする編プロ、ペロンパワークス・プロダクション所属のライター兼編集者。雑誌や書籍、Webメディアにて、コンテンツの企画から執筆までの業務に携わる。金融関連以外にも、不動産や人事労務など幅広いジャンルの制作を担当しており、取材記事の実績も多数。
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