26 March

NPO法人に求められるガバナンス

掲載日:2025年03月26日   
中小企業おすすめ情報

NPO法人から相談を受けることが多くありますが、中には社員総会や理事会が開催されていない、必要な決議事項がなされていないなど、運営が適正に行われていないケースも見受けられます。これはNPO法人の社員や理事の多くが無報酬で関わっていることも一つの原因であると思います。しかし、事業報告書が3年以上連続で未提出の場合はNPO法人の認証が取り消されるなど、ガバナンスが不適切だと法人運営において大きなリスクが生じます。そこで、今回はNPO法人におけるガバナンスの重要性と、適切な運営のために必要なポイントを解説します。

NPO法人の組織形態

NPO法人の運営は、①社員総会、②理事会、③事務局の3つの組織が中心となり運営されています。それぞれの役割について解説していきます。

① 社員総会

社員総会はNPO法人の最高意思決定機関であり、社員が集まり重要な決定を行います。なお、NPO法人における社員とは総会における表決権を有する会員のことであり、従業員などとは異なります。社員総会での決議事項は定款によりますが、定款の変更や解散・合併については、NPO法により必ず社員総会での決議が必要と定められています。

② 理事会

理事会は法人の運営に関する重要事項を議論し、決定する場です。法人の方向性や活動内容、財務管理などを議論することが多いです。

③ 事務局

事務局は事業活動を円滑に進めるために、日常業務を担当します。人事や会計、行政対応などを担い、組織運営において非常に重要な役割を果たします。人事労務や経理などとも密接に関わるため、組織のガバナンスを考える上で欠かせない役割を担っており、現場と理事会を繋ぐ役割も担っています。

NPO法人のガバナンス強化のポイント

NPO法人が適切なガバナンスを確保するためには、次の3つの点が特に重要です。

① 内部規定の整備

まず、小口現金や振り込み業務について、全てを一人のスタッフに任せるのではなく、ダブルチェックを行うなどのルール作りが重要です。そうすることで横領などの不正防止に繋がります。

また、理事の活動費などについても、一定額以上は理事会の事前承認を義務付けるといったルールが必要でしょう。特定の理事が事後的に経費精算を申請したが想定よりも高額でトラブルになったというケースもあります。

特に小規模のNPO法人では、ルールを細かくすることで煩わしさが増えると考える方もいますが、トラブルを未然に防ぐという観点から内部規定をきちんと整備しておくべきでしょう。

② 監事の役割を明確にする

NPO法人には監事の設置が義務付けられています。監事は、会計や活動内容をチェックし、理事や事務局の業務を監査する役割を担います。具体的には、会計監査、業務監査、理事会への参加、があります。

会計監査は、NPO法人の経理などを確認し、適正に決算書類が作成されているかをチェックすることが主な役割です。また、業務監査は理事会の運営状況や、内部規定に従って運営がされているかなどガバナンスのチェックが主な役割です。そして、監事は理事会での議決権は持ちませんが、理事会に出席して議題に対して意見を述べることも求められます。監事には法務や会計の専門知識を持つ人が適任ですが、確保が難しい場合は、企業の管理部門経験者などを候補とするのも一つの方法です。

③ 理事の適切な人選

NPO法人の理事(=役員)は3人以上必要であり、親族は役員総数の1/3以下でなければなりません。そのため、株式会社のように親族のみが役員を務めるということは認められません。このような事情から、NPO法人では理事の確保に苦労するケースもあります。しかし、人数を満たすために名前を借りるといった対応をすると理事会が形骸化し、適正な運営を行うことができなくなってしまいます。

理事の選任については、団体のミッションに賛同するということを前提として、事業に関する専門性を考慮して行うことが重要です。

まとめ

NPO法人の適正な運営には、社員総会・理事会・事務局の役割を明確にし、組織としてのガバナンスを強化することが不可欠です。運営が適切に行われていない場合、不正の原因になったり、認証取り消しになることもあります。そのため、内部規定の整備や監事の役割の明確化、適切な理事の選任が重要です。特に、不正防止のためのルール作り、会計・業務監査の徹底、理事会が形骸化しないよう、適切な人選が求められます。NPO法人の持続的な運営のために、ガバナンス強化に取り組むことが大切です。

ABOUT執筆者紹介

税理士
1級ファイナンシャルプランニング技能士
金子尚弘

会計事務所プロースト

名古屋市内の会計事務所勤務を経て2018年に独立開業。NPOなどの非営利組織やソーシャルビジネスを行う事業者へも積極的に関与している。また、クラウドツールを活用した業務効率化のコンサルティングも行っている。節税よりもキャッシュの安定化を重視し、過度な節税提案ではなく、資金繰りを安定させる目線でのアドバイスに力を入れている。ブログやSNSでの情報発信のほか、中日新聞、日経WOMAN、テレビ朝日(AbemaPrime)などで取材、コメント提供の実績がある。

お客様満足度No.1・法令改正に対応した財務会計ソフト「会計王」はこちら

  • おんすけ紹介ページ

Tag

最新の記事

2025年03月31日法改正で実務はどう変わる?「2025年4月スタート 育児・介護休業の新常識」
2025年03月28日介護と仕事の両立制度について 法改正のポイントを解説!
2025年03月26日NPO法人に求められるガバナンス
2025年03月25日副業の確定申告はいくらから?確定申告の手順と注意点を解説
2025年03月24日【3月31日〆】個人事業主の消費税計算、間違ってない?申告前に確認すべきこと4つと対処法を確認
人気記事ランキング
2024年03月20日 「4・5・6月の残業を減らすと社会保険料が少なくなる」は本当か
2025年02月07日 【2025年度(令和7年度)税制改正(その1)】103万円の壁の引き上げは123万円に!いつから?大学生のバイト「103万円→150万円」の控除も解説
2024年03月12日 【2割特例の個人事業主】消費税の確定申告、書き方をわかりやすく解説!どう計算する?いつまでに申告?
2022年08月24日 【インボイス制度】登録されているか確認する方法&公表サイトではどんな情報が公開される?
2024年03月01日 結局、一番得する社長の役員報酬額はいくらなのか!?
2024年11月20日 【年末調整】定額減税で変わる源泉徴収票&控除済み及び控除されていない定額減税額の確認方法
2024年10月30日 なんでうまく充電できない?USBケーブルと充電器のトラブル
2024年04月05日 フリーランス・クリエイターが立替払いした交通費等は源泉徴収が必要?
2021年11月22日 共働き夫婦の子供はどちらの扶養? 令和3年8月からの健康保険の新基準を解説します。
2024年10月23日 【インボイス】消費税の2割特例、こんなはずでは…ありがちな誤解を4つ解説

カテゴリ

お問い合わせ

お問い合わせ

当サイトへのお問い合わせはこちらよりお願いします。