税理士監修|個人の確定申告をe-Taxで行う方法を解説
確定申告
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確定申告は難しそう、自分で手続きできるか不安、そんな気持ちを抱えている個人の方は多いのではないでしょうか。
しかし、e-Taxを使えば自宅から手軽に確定申告を済ませることができます。
この記事では、税理士監修のもと、個人がe-Taxで確定申告ができるよう、e-Taxの基本から申告準備、入力手順、注意点までをわかりやすく解説します。
e-Taxとは
e-Tax(国税電子申告・納税システム)は、所得税や消費税などの申告・納税の手続きをインターネット経由で行える電子システムです。国税庁が運営しています。
e-Taxを使えば、従来のように紙の申告書を作成して税務署に持参したり郵送したりする必要がなく、自宅にいながらスムーズに申告できます。
e-TaxならWEBから確定申告できる
e-Taxを利用すれば、パソコンやスマートフォンを使って、WEB上から確定申告を行うことが可能です。特に国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えばブラウザ上で案内に従って入力を進めるだけで、必要書類の作成から送信までを完了できます。わざわざ税務署に出向く手間を省けるため、忙しい方にとっても便利な申告方法です。
確定申告書等作成コーナーとの違い
確定申告書等作成コーナーは、主に個人の申告書類を作成するためのサイトです。申告書作成後、e-Taxを使えばそのままオンラインで提出できます。ただ、作成した書類をプリントアウトして郵送または持参することもできます。
一方、e-Taxは、オンラインで申告や納税といった手続きを完結させる仕組みです。紙での手続きは含めません。
確定申告書等作成コーナーとe-Taxの違いは下記のとおりです。
比較項目 | 確定申告書等作成コーナー | e-Tax |
---|---|---|
主な機能 | 個人の確定申告書の作成 | 個人・法人の確定申告書の作成・提出・納税の手続き |
提出方法 | 作成後にe-Taxで提出、あるいは印刷して郵送または持参 | オンラインのみ |
必要な手間 | ・e-Taxでの送信準備が必要 ・紙提出の場合、印刷・封入・郵送または持参が必要 |
・インターネット上で完結 ・送信準備が必要(ICカードリーダライタなど) |
e-Taxのメリット
e-Taxを利用することで、従来の紙の確定申告に比べて大幅な時間短縮が可能です。
ここでは、e-Taxを活用するメリットについて紹介します。
自宅からオンラインで申告できる
紙の書類を印刷したり、郵送したりする手間が省けるうえ、税務署での順番待ちや混雑に巻き込まれる心配もありません。インターネット環境さえあれば場所を問わず手続きができるため、外出先でのスキマ時間に作成することも可能です。
また、e-Taxを利用すれば、申告期間中であれば24時間いつでも手続きができます(ただしメンテナンス時間を除く)。日中仕事で忙しい方でも、夜間や早朝に時間を見つけて申告作業を進めることができます。
添付書類を一部省略できる
e-Taxを利用して所得税の確定申告書を提出する場合、生命保険料控除証明書などの「第三者作成書類」は、内容を入力して送信することで原本の提出や提示を省略できます。
入力した情報は税務署が必要に応じて確認できる仕組みになっています。納税者側は、法定申告期限から5年間、原本の保管義務が課せられています。なお、個人の確定申告でいう法定申告期限とは次のようになります。
- 所得税…申告する対象年の翌年3月15日
- 贈与税…申告する対象年の翌年3月15日
- 消費税…申告する対象年の翌年3月31日
※法定申告期限が土日祝日と重なった場合、その次の最初の平日が法定申告期限
対象となる書類には、医療費通知、社会保険料控除証明書、小規模企業共済等掛金控除証明書、寄附金控除の証明書、住宅借入金等特別控除に係る借入金年末残高証明書(2年目以降)などがあります。
なお、給与所得の源泉徴収票や特定口座年間取引報告書などは、平成31年4月1日以降、確定申告時の添付自体が不要となっています。
確定申告の必要書類や添付書類を詳しく知りたい人はこちらの記事を確認してください。
確定申告ソフトと連携できる
e-Taxは、市販の会計ソフトや確定申告ソフトと連携できる点も大きなメリットです。市販ソフトで作成した申告データをそのままe-Taxに取り込んで送信できるため、作業の効率化やミス防止につながります。
特に、青色申告や複雑な控除を行う場合には、専用のソフトを利用することで、より正確かつスムーズに手続きを進めることが可能になります。
確定申告を青色申告で行いたいという人は、ソリマチの青色申告専用の会計ソフト「みんなの青色申告」がおすすめです。
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申告内容の修正が手軽にできる
e-Taxでは、一度提出した申告内容に誤りがあった場合、オンライン上から手軽に訂正(訂正申告や更正の請求、修正申告)を行うことができます。紙で提出する場合には、すでに提出した申告書の写しが必要な上、書き直すのが大変です。改めて税務署へ持参または郵送しなくてはなりません。しかしe-Taxならパソコン上で手続きが完結します。
青色申告なら65万円控除が受け取れる
e-Taxを利用して青色申告を行うと、最大65万円の特別控除を受けることができます。事業所得で65万円控除を適用するためには、正規の簿記(複式簿記)による帳簿付けを行った上で、次のいずれかに当てはまらなくてはなりません。
- e-Taxで申告書を提出すること
- 仕訳帳および総勘定元帳について優良な電子帳簿保存の要件を満たすこと
※不動産所得については上記のほか「5棟10室」など賃貸事業の規模が事業的規模であることが必要
紙での提出の場合は基本的に55万円控除となります。優良な電子帳簿保存を行わないならe-Taxで申告するだけで65万円控除を受けられるのです。節税効果を高めたい方にとって、e-Taxでの青色申告は大きなメリットと言えるでしょう。
e-Taxのデメリット・注意点
e-Taxには多くの利便性がある一方、注意すべき点もあります。ここでは、e-Taxを利用する上で知っておきたいデメリットや注意事項について解説します。
インターネットの接続が必須
e-Taxの利用には、インターネット環境が必須です。通信環境が整っていない場所では申告手続きを進めることができず、また申告途中で回線が不安定になるとデータ送信がうまくいかないリスクがあります。
特に、回線速度が遅い場合やセキュリティが不十分なネットワークを利用する場合は注意が必要です。
手続きが複雑で分かりづらい
e-Taxは便利な反面、初めて利用する人にとっては手続きが複雑に感じられることがあります。電子証明書の取得・設定や、マイナンバーカードによる本人認証など、さまざまな準備が必要です。
また、入力画面や手順が直感的に分かりにくい部分もあるため、慣れるまで戸惑うことも少なくありません。e-Taxを使いこなすために、国税庁のマニュアルやサポートを活用しながら進める必要があります。
e-Taxでの確定申告をするために準備するもの
e-Taxを使って確定申告を行うには、いくつか準備しておくべきものがあります。スムーズに申告を進めるためにも、必要なものを確認しておきましょう。
マイナンバーカード
e-Taxでスムーズに確定申告を行うには、マイナンバーカードの準備が重要です。マイナンバーカードには電子証明書が搭載されているため、本人確認をオンラインで完了できます。
なお、マイナンバーカードがなくても確定申告書等作成コーナーとe-Taxで申告することは可能です。ただし、税務署で本人確認を行い、IDとパスワードを発行してもらう必要があります。
マイナンバーカードの発行には数週間かかることがあります。余裕を持って手続きを進めましょう。
スマホまたはパソコン
e-Taxはオンラインサービスのため、インターネットに接続できるスマホまたはパソコンが必要です。スマホだけでも申告可能な仕組みが整っていますが、入力量が多い場合はパソコンの方が作業しやすいでしょう。また、マイナンバーカードの読み取りには、スマホであればNFC機能対応機種が、パソコンであればICカードリーダーが必要です。
申告に必要な書類
確定申告には、所得や控除に関するさまざまな書類が必要です。たとえば、源泉徴収票や医療費控除の明細書、生命保険料控除の証明書などがあります。
事前に書類をすべて揃えておくことで、入力作業をスムーズに進めることができます。書類によっては、e-Taxを使うと添付を省略できるものもありますが、内容の入力が必要になるため手元に用意しておきましょう。
銀行口座の情報
還付金を受け取るためには、自分名義の銀行口座情報が必要になります。ただし、あらかじめマイナポータルで受取口座の登録を済ませている場合には、新たに入力する必要はありません。登録済みの口座情報をそのまま利用できるため、よりスムーズに還付を受けることができます。
利用者識別番号
e-Taxを利用するには、「利用者識別番号」という13桁の番号が必要です。すでにe-Taxを利用したことがある人は、以前取得した番号を使います。e-Taxソフト(WEB版)のマイページの「基本情報」で確認できます。
初めて利用する人は、「e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナー」から開始届出書を作成・送信して取得します。
e-Taxでの確定申告をするやり方
確定申告書等作成コーナーとe-Taxを活用すれば、インターネット環境と必要書類のみで自宅からスムーズに手続きを完了できます。
確定申告書等作成コーナーとe-Taxを活用して確定申告を行う方法を詳しく解説します。
手順①確定申告書等作成コーナーにアクセスする
最初に行うのは、国税庁が提供する「確定申告書等作成コーナー」へアクセスすることです。ここでは、申告書の作成から送信までの一連の流れを案内に沿って進めることができるため、初心者でも迷わず操作できる仕組みになっています。
パソコンやスマートフォンからアクセスできるので、インターネット環境を整えた上でスタートしましょう。
手順②申告書の種類や提出方法を選ぶ
作成する申告書の種類や提出方法を選択します。マイナンバーカードを使って申告する場合は、カード作成時に設定した暗証番号の入力が求められるため、事前に準備しておきます。
また、マイナポータルと連携する場合には、この段階でマイナンバーカードの読み取りが必要になります。
申告書の提出方法にはいくつか選択肢があります。ひとつは「スマートフォンを使用してe-Tax」で、マイナンバーカード対応のスマートフォンを使ってパソコン画面上に表示されるQRコードを読み取り、手続きを進める方法です。
もうひとつは「ICカードリーダーを使用してe-Tax」で、パソコンにICカードリーダライタを接続し、マイナンバーカードを読み取って申告を行う方法です。なお、「ID・パスワード方式でe-Tax」を選択すれば、事前に税務署で発行してもらったIDとパスワードを使って手続きすることも可能です。
手順③収入情報を入力する
下記の収入情報を入力します。
所得の種類 | 入力方法 |
---|---|
事業所得(営業等・農業) | 「青色申告決算書」または「収支内訳書」を基に入力。源泉徴収されている収入もこの画面で入力。 |
不動産所得 | 「青色申告決算書」または「収支内訳書」を基に入力。赤字の場合は土地取得負債利子額も入力。 |
給与所得 | 源泉徴収票に基づき入力。年末調整済・未済を区別。XMLデータ読み込みも可能。 |
雑所得(公的年金等) | 源泉徴収票に基づき入力。支払者(厚生労働省など)確認後、支払金額を区分に応じて入力。 |
雑所得(業務に係るもの、その他) | 種目(原稿料・講演料・印税など)を選択後、業務該当有無に応じて区分入力。 |
総合課税の利子所得 | 利子等支払通知書を基に、源泉徴収の有無を区分して入力。 |
総合課税の配当所得 | 配当所得の課税方法を選択後、支払通知書内容に基づき入力。 |
総合課税の譲渡所得 | 資産ごとに、内訳・取得費・譲渡費用を順に入力。短期・長期区分あり。 |
一時所得 | 1件ごとに収入金額、必要経費、源泉徴収税額を入力。 |
控除情報を入力する
利用する控除について入力します。利用できる控除は下記のとおりです。
控除の種類 | 説明 |
---|---|
雑損控除 | 災害や盗難等による損失についての所得控除 |
医療費控除 | 医療費を支払った場合の所得控除 |
セルフメディケーション税制 | 特定の市販薬購入費の所得控除 |
社会保険料控除 | 健康保険・国民年金などの支払分の所得控除 |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済やiDeCoの掛金の所得控除 |
生命保険料控除 | 生命保険で支払った保険料の所得控除 |
地震保険料控除 | 地震保険で支払った保険料の所得控除 |
寄附金控除 | 国や自治体などへの寄附金についての所得控除 |
障害者控除 | 本人または扶養している家族が障害者である場合の所得控除 |
寡婦・ひとり親控除 | 寡婦またはひとり親についての所得控除 |
勤労学生控除 | 勤労学生のための所得控除 |
配偶者(特別)控除 | 本人と配偶者の所得に応じた所得控除 |
扶養控除 | 扶養している親族についての所得控除 |
基礎控除 | 原則、誰もが受けられる所得控除(ただし所得制限あり) |
手順④その他の項目を入力する
その他、下記の項目にも入力します。
項目 | 補足説明 |
---|---|
配当控除 | 上場株式等の配当所得について税額控除を受ける場合に入力 |
投資税額等控除 | ベンチャー投資や設備投資など、一定の投資に対する税額控除を受ける場合に入力 |
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除 | 住宅ローン控除(特定増改築を含む)を受ける場合に入力 |
政党等寄附金等特別控除 | 政党や政治資金団体への寄附に対する税額控除を受ける場合に入力 |
住宅耐震改修特別控除 | 耐震改修工事を行った住宅について税額控除を受ける場合に入力 |
住宅特定改修特別税額控除 | バリアフリー改修、省エネ改修など特定改修に対する税額控除を受ける場合に入力 |
認定住宅等新築等特別税額控除 | 認定長期優良住宅などを新築・購入した場合に税額控除を受ける場合に入力 |
災害減免額 | 災害による所得減少等により税額の減免を受ける場合に入力 |
外国税額控除等 | 海外で課税された所得税等に対する二重課税防止のための控除を受ける場合に入力 |
予定納税額 | 前年の所得税に基づき、事前に納付した予定納税額を入力 |
専従者給与額の合計額 | 個人事業主が家族へ支払った専従者給与の合計額を入力 |
青色申告特別控除額 | 青色申告により適用される特別控除額(10万円、55万円、65万円のどれか)を入力 |
平均課税対象金額 | 変動所得や臨時所得などに対して平均課税を適用する場合に対象金額を入力 |
変動・臨時所得金額 | 原稿料、賞金、一時所得など変動・臨時所得に該当する金額を入力 |
本年分で差し引く繰越損失額 | 過去から繰り越した純損失や譲渡損失などの控除対象額を入力 |
手順⑤還付金額または納付税額の確認
申告内容の入力が完了すると、還付金額または納付税額が自動計算され、続いて住所、氏名、受取口座などを登録する画面に進みます。
還付が発生する場合には、還付先の金融機関の口座情報を入力します。納税が必要な場合には納付方法の選択画面が表示されます。
還付申告を自宅や税理士事務所からe-Taxで提出した場合、還付金の処理は通常3週間程度で完了します。1月・2月に申告した場合でも、2〜3週間ほどで処理されるケースが一般的です。
納付の場合、納付方法が画面上に表示されます。新たに振替納税を希望する場合は、振替依頼書を作成できます。納付金額が30万円以下であれば、コンビニエンスストアで使用できるQRコードも作成できます。
還付金を受け取るために登録する口座は、申告者ご本人の名義の口座のみ使用できます。店名や事務所名が付加された名義、あるいは旧姓のままになっている口座は振込できない場合があるため、事前に名義を確認しておくことが大切です。
申告内容を確認する
申告書類の入力がすべて完了したら、PDFファイルをダウンロードし、内容に誤りがないかをしっかり確認します。ダウンロードしたPDFには、申告書だけでなく、添付書類台紙など必要な書類も含まれています。控除額、所得金額、還付金額や納税額、口座情報などもあわせて確認しておくことが重要です。
特に数字の入力ミスや氏名・住所の誤りは、そのまま提出してしまうと修正に手間がかかるため、細かくチェックしておくことをおすすめします。
確定申告書を送信する
内容に間違いがないことを確認できたら、申告内容を送信します。送信後に確認できるPDFファイルには「申告書等送信票」が含まれており、収支内訳書や青色申告決算書など、別途提出が必要な書類があるかどうかが記載されています。
送信前に必ず確認しましょう。
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ABOUT監修者紹介
税理士 鈴木まゆ子
税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。
ABOUT執筆者紹介
加藤良大
フリーライター
ホームページ・ブログ
歴12年フリーライター。執筆実績は26,000本以上。
多くの大企業、中小企業のWeb集客、
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