農業に最適な車はどっち?軽トラVS軽バンの選び方
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軽トラと軽バン、それぞれの特徴とは?
農業を営む上で、車の選択は非常に重要です。どの車を選ぶかは、日々の作業効率に大きく影響します。特に、農業に適した車として候補に挙がるのが、軽トラと軽バンの2種類です。それぞれの特徴やメリットを比較し、どちらが農業に適しているのかを考えてみます。タケイファームでは軽バンを使用していますが、その理由を含め、農業における車選びのポイントをお伝えします。まずは、軽トラ、軽バン、それぞれの特徴を整理してみましょう。
軽トラの特徴
軽トラは、農業をはじめとした運搬作業で最もよく使われる車です。その最大の特徴は、荷台が広く、積み下ろしがスムーズにできるため、農作業でよく使う大きな道具や肥料、収穫物などの運搬に最適な点です。また、ホイールベースが短いため、小回りが利き、田畑や狭い農道でもスムーズに移動できます。さらに四輪駆動(4WD)のモデルを選べば、ぬかるんだ道などの悪路でも走行が可能です。
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軽トラの荷台、広くて積み下ろしがスムーズ
軽バンの特徴
軽トラは荷台、軽バンは荷室という考え方がわかりやすいかもしれません。軽バンは荷室が密閉されているため、天候の影響を受けずに運搬ができます。また、外から荷物が見えないため、プライバシーが保たれ、盗難対策でも安心です。ホールベースが長いため、直進安定性に優れ、配送にも適しています。さらに、軽トラの乗車定員が2名なのに対し、軽バンは4名乗車できるため、人を一緒に移動させる場合にも便利です。
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軽バンの荷室、収穫するための道具は載せたまま
タケイファームが軽バンを選んだ理由
農業を始めて25年、これまでに3台の軽バンに乗ってきました。なぜ軽トラではなく軽バンを選んだのか、その理由をお伝えします。
野菜の品質を維持する
軽バンを選んだ最大の理由はここにあります。タケイファームは少量多品目栽培で野菜を育てレストランへ直接販売しています。どんなに高品質な野菜を栽培しても、夏場の暑い時期にトラックの荷台に野菜を積んでしまうとすぐに品質が低下してしまいます。そのため、収穫時にはエアコンをつけたままにし、荷室の温度が上がらないようにしています。
現在使用しているのはハイゼットカーゴで、燃費は平均6.7キロ(カタログ上の燃費消費率JC08モードは17.8キロ)と決して良くありませんが、育てた野菜の品質を維持することが最優先です。これによって、他社との差別化につながり、シェフからは「武井さんの野菜は鮮度が良く、武井さんの野菜だとすぐわかる」と言われています。
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鮮度を維持したアーティチョークを出荷
悪天候の日でも荷物が運べる
基本的に雨の日に収穫はしませんが、収穫中や収穫後に雨に降られることがあります。軽バンなら荷室があるため、雨が降っても濡れる心配はありません。スーパーや直売所などへ配達する農家にとっても、これは大きなメリットになります。
人が4人乗れる
農作業時はリアシートを倒してフルフラットにしていますが、シートを起こせば4人の乗車が可能です。畑には、見学者や取材陣が訪れることが多く、4人乗りという定員はとても助かっています。
軽トラの荷台に人が乗っているのを見たこともありますが、原則として禁じられていますので注意が必要です。
防犯対策
毎日使う収穫ハサミ・収穫カゴ・コンテナなどは積みっぱなしで大丈夫。また、移動中にどこかに立ち寄る場合も荷室の中に置いておけば盗難のリスクが減ります。
農機具の移動が必要なかった
軽トラは耕運機など農機具が載せて移動できるメリットがあります。しかし、タケイファームでは農機具を畑の物置小屋に置いておくことが多いため、車で運ぶ必要ありませんでした。
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畑の物置小屋
軽トラの選択肢
例えば市場出荷をメインにしている農家なら、軽トラの方が圧倒的に便利です。4WDであれば、畑の中にも入って行けますし、荷台が3方向から開くため積み下ろしも楽です。しかし、タケイファームは少量多品目栽培が中心。これまで挙げた軽バンのメリットが大きいため、軽トラを選ぶ選択肢はありませんでした。
自分の農業にあった車選び
軽トラと軽バン、どちらが農業に最適かは、農業のスタイルや作業内容によって異なります。タケイファームでは、収穫した野菜の品質維持や天候対策、日常の作業を重視し、軽バンを選びました。一方で、軽トラは荷物の積み下ろしがスムーズにでき、大きな荷物を運ぶには非常に便利です。
かつては、「農業=軽トラ」というイメージが強く、軽トラ一択と考えられていました。しかし、現在は農業のやり方や販売先の選択肢も増え、軽バンを選ぶ農家も増えています。そのため、「必ずしも軽トラがベスト」とは言い切れなくなってきました。
最適な車選びのポイントは、自分の農業の方向性をしっかり考えて、作業内容にあった車を選ぶことです。もし可能であれば、軽トラと軽バンの2台を保有し、状況に応じて使い分けるのが理想的かもしれません。
ABOUT執筆者紹介
武井敏信
タケイファーム代表。「営業はしない」がポリシー。今まで350種類を超える野菜を栽培し、年間栽培する野菜は約140品種。独自の販売方法を生み出し、栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売している。趣味は食べ歩き。一般社団法人Green Collar Academy理事。青山学院大学ABS農業マーケティングゲスト講師。京都和束町PR大使。