少量多品目農家のための収益をアップさせる農作業の時短・効率化!!
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作業効率の大切さを考える
最近の農業資材の高騰、肥料の高騰で、経費の削減も限界に近くなっている農家も多いのではないでしょうか。今までと同じやり方をしていては、利益をあげるどころか維持していくことも難しい状況が続いてしまいます。利益をあげるためには、販売価格をあげればよいのですが、なかなかそう簡単にはいかないのが農業の難しいところでもあります。少量多品目農家の場合、複数の販売チャンネルを持っている人も多いと思いますが、栽培している品目や販売先の理由で値上げができる農家とできない農家が存在します。そして、個人経営の農家に多いのですが、人件費を経費として計上しないケースもよく見られます。このような中で、利益をあげていくためには作業効率をあげることが一つの重要なポイントとなります。
作業効率をあげるための4つの削減
僕が作業効率をあげるために行ったことは労働力の削減でした。今では、出荷作業や農作業をしている時間は1日に6時間、朝から晩まで丸一日農作業をするのは年に10日ほどですが、労働力の削減に気づくまでは毎日12時間以上働いていました。暗くなると軽トラのヘッドライトで畑を照らして作業をし、それが農業という仕事だと誇らしげに思っていた時期もあったのです。当時は、野菜をたくさん販売すれば売り上げにつながると信じていたので、販売チャンネルを広げることに力を注いでいました。しかし、複数の販売先があるということは、それぞれが求めている野菜も違えば調整作業の仕方も違うので、売り上げと労働力が見合わない品目もでてきます。結果、このやり方は体への負担が大きいと判断し、労働力を削減するために4つこのことを行いました。
1. 販売チャンネルをレストラン1本に絞る
販売チャンネルは、「ECサイトでの野菜セットの販売」「百貨店への卸し」「飲食店への出荷」「マルシェの出店」の4つがあったのですが、「飲食店への出荷」の1本に絞りました。飲食店への出荷は、野菜を洗わなくても大丈夫なので調整作業の時間を削減することができました。これは予想をしていなかったとても大きなメリットでした。また、個別に袋に入れる必要もないので資材の節減にもつながったのです。販売チャンネルを減らすと売上げが落ちるかもしれないという不安もありましたが、複数の販売チャンネルを模索するよりも「飲食店への出荷」に絞ったことで、作業がシンプルになり精神的にも楽になりました。
2. 季節の野菜を栽培する
タケイファームにはハウスがないため、年間を通して露地栽培で野菜を作っています。野菜セットを販売していた時は、客に喜んでもらうために葉菜類、果菜類、根菜類と年間を通してバランスよく栽培する必要がありました。そのため、冬にレタスなどを栽培するためには、マルチやトンネルを張らなければなりません。しかし、寒さに強いホウレンソウやブロッコリーなどを栽培すればその必要もなくなるので労働力が削減され、ここでも資材の経費を節減することができました。
3. 長い期間、繰り返し収穫できる野菜を栽培する
栽培する品目も改めて見直し、できる限り長い期間、繰り返し収穫できる野菜を栽培しています。例えば、カーボロネロやプチヴェール、ケールなどは、9月に定植し11月から収穫をはじめ、その後収穫するサイズや規格を変えて4月頃まで出荷ができます。1本の苗から何度も収穫することができれば、新たに種まきをしたり、畑を片付けたりする作業が格段に少なくなるため、農作業の効率がよくなりました。
4. 収穫・出荷しやすい野菜を選ぶ
収穫や調整作業、出荷までにかかる時間を見直すことも大切です。そのためには、栽培する野菜を選ぶことが重要となってきます。今まで一般的な野菜から珍しい野菜まで、約350を超える野菜を栽培してきましたが、中には1回限りで栽培をやめた野菜があります。例えばゴボウ。やめた理由は、収穫の疲労感と労働力に見合わない販売価格です。今となっては、塩ビ管を使った栽培方法があることを知りましたが、当時はゴボウが折れないようにスコップで周りを深く掘り収穫していました。
現在は、カーボロネロやフィレンツェナスなど、収穫は切るだけという野菜が中心となっています。カットしたらその場でOKかNGかを判断しますので、あとは数を数えて袋に入れるだけ。先ほど、野菜は洗わなくて大丈夫と書きましたが、人参やカブなどの根菜類も土付きのまま本数を数えて大きなビニール袋に入れるだけです。このように、調整作業の時短につながる野菜が中心となっています。
この4つの削減は、販売チャンネルをレストラン1本に絞ったからこそできた削減でもあります。結果、労働時間は半分になり売り上げは2倍になりました。労働力と時間が削減できたことで生まれた価値ある時間は、情報発信や打ち合わせなど外部の仕事に充てることができ、コロナ過においても野菜以外の収入源を確保することができました。
効率化で生まれた時間を有効に使う
農業では、「手間暇をかける」というフレーズをよく聞くことがあります。時間をかけようと思えばいくらでも時間をかけることができる奥が深い農業ですが、労力と収益のバランスがとれていなければよい経営とは言えません。手間と時間をかけた分、自分が納得できる価格で販売できているのかを考えることも大切です。農業の一般常識とか農業の教科書に書いてあることの中には、実はやらなくてもいいことがたくさんあります。1日12時間も畑で仕事をしていた農業が、1日6時間で終わる農業になったことで、新たに生まれた時間は売り上げをあげるために有効な時間となったのです。がむしゃらに働くのもよいかもしれませんが、改めて、作業効率について考えてみてはいかがでしょうか。
ABOUT執筆者紹介
武井敏信
タケイファーム代表。「営業はしない」がポリシー。今まで350種類を超える野菜を栽培し、年間栽培する野菜は約140品種。独自の販売方法を生み出し、栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売している。趣味は食べ歩き。一般社団法人Green Collar Academy理事。青山学院大学ABS農業マーケティングゲスト講師。京都和束町PR大使。