おいしい野菜を作るための裏技、種選びの極意!
農家おすすめ情報
おいしい野菜は品種で決まる!
野菜を栽培する中で、向き合う大切な選択肢の一つは「種選び」です。野菜の味や収量、栽培のしやすさ、さらには客の満足度までも左右するこの選択肢は、農家にとってまさに「命運を握る一歩」と言えるでしょう。タケイファームでは長年、飲食店向けに特化した野菜を栽培してきましたので、料理人が求める野菜に「味」を外すことはできません。今回は、その経験を通じて得た「おいしい野菜を作るため」の種選びのポイントを紹介します。
種を選ぶ際、目的によって重要視するポイントは変わります。市場出荷であれば、収量や見た目が大切ですし病気に強い品種を求めるかもしれません。「どうせ野菜を作るならおいしい野菜を作りたい」と思う人は多いはずです。おいしい野菜を作るためには、土づくりや肥料、育て方で決まると思われがちですが、僕が一番重要視するのは品種のDNAです。もちろん土づくりや肥料はとても大切ですが、今回は「種」というテーマで進めていきます。
農家の種の選び方
20年以上も農業をしているベテラン農家に聞いたところ、お世話になっている種屋から情報を得ているという意見がありました。種屋はいろいろな人と付き合うので、同じ作物を作って成功した人と失敗した人を知っています。成功するか失敗するかは一作に一回しか勉強できません。ところが種屋は10軒の農家がいれば10件のデータを知ることができるので結果が早くわかるのです。
種屋が、農家からの問い合わせに数多くある種の中からいいものをピックアップできるのは、たくさんのデータから品種の特性を知っているからなのです。確かに種苗メーカーといつもやりとりしている種屋からの情報源は間違いがないかもしれません。しかし、新規就農者や家庭菜園の人たちにとってはハードルが高い情報源かもしれません。
おいしい野菜を作る秘訣はパッケージにあり!
カブを例に説明します。カブは、日本での栽培の歴史が最も古い野菜の1つです。色、形、大きさ、在来品種、新品種、特産品種など、具体的な数は地域や分類方法によって異なりますが、その数は200種類以上あると言われています。その中から、おいしいカブを作るためにどのように種を選べば良いでしょうか。初心者でも簡単においしい品種を見分けるコツは、種袋のパッケージをじっくり観察することです。パッケージからは、その品種がおいしいかどうかのヒントを得ることができます。
種袋の特性を読み解く!味に特化した品種の選び方
種袋の表面からは、品種名、特性、品種の姿形(写真)を見ることができます。裏面からは、播種期と収穫期、発芽率、栽培方法や注意点、種の内容量、保存法などが書かれています。全て大切な情報ですが、僕が「おいしい野菜を作る」ために重要視するのは表面に書かれている特性です。この特性には種苗メーカーが時間とお金と人を投入し、ようやく販売までたどり着いた種を販売するための「一番のセールストーク」が書かれています。このセールストークを見逃さないでください。おおまかに分けると、
- 病気について(耐病など)
- 栽培について(栽培が容易、多収穫など)
- 姿形(揃いが良い、形が美しい)
- 味(食について)
などが書かれています。中でも味について詳しく書いてある種はおいしい可能性が高いと言えます。
- 食味の良さは天下一品
- 甘い!うまい!おいしい!
- きめ細かく美味しさ極上!
など、表現はいろいろありますが、ここに注目するだけで種選びの楽しさは倍増するのではないでしょうか。
おいしい品種選びの注意点
気をつけなければならないこともあります。「サラダにも使える甘味抜群のカブ」など、調理法が書かれているものはその調理に特化しているということです。いくらおいしい品種を選んで栽培しても、おすすめの食べ方を伝えることができなければ、その品種の本領を発揮することはできません。
スーパーに行けば必ず手に入るジャガイモ。ほとんどのスーパーに男爵とメークインが置いてあります。ホクホクとした粉質の男爵と煮崩れしにくい粘質のメークイン。フライドポテトを作るなら男爵、カレーを作るならメークインというように、野菜の品種の特性を活かすには食べ方もセットで伝えることが大切なのです。
種袋の特性は、インターネットの画像検索で見ることができます。その中から、味に特化した品種をいくつか選び、自分の圃場に合っているか、自分の好みにあっているか、客の反応などを見たうえで、是非、農園一押しのおいしい品種を見つけてみてください。
ABOUT執筆者紹介
武井敏信
タケイファーム代表。「営業はしない」がポリシー。今まで350種類を超える野菜を栽培し、年間栽培する野菜は約140品種。独自の販売方法を生み出し、栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売している。趣味は食べ歩き。一般社団法人Green Collar Academy理事。青山学院大学ABS農業マーケティングゲスト講師。京都和束町PR大使。