スマホで確定申告してみよう!!マイナポータル連携で確定申告がかんたんに
税務ニュース
電車に乗ると、乗車しているほとんどの人が行っている“あること”に気付きます。90%以上の人がスマートフォンの画面を眺めているのです。メール、インターネット、SNS、動画、電子書籍などそれぞれが自分の好きなことをしています。いわゆる携帯電話としての通話機能を使うことはあまりありません。
実は、税金の世界でもスマートフォンの利用は進んでいます。なかでも、個人の確定申告についてはスマートフォンの利用が拡大しています。スマホ申告というとハードルが高いように感じますが、手続き自体はかなり簡便化されており、ぜひ利用してほしい手続きです。まずは、スマホ申告を行うためのふたつの方法について説明していきます。個人所得税の確定申告は、どちらでも申告することはできますが、最初にどちらで申告するかを決めなければなりません。申告方法によって手順が若干異なりますので注意が必要です。
スマホ申告を行うためのふたつの方法
マイナンバーカード方式
マイナンバーカードを利用してe-Taxを行う方法です。
この方法はマイナンバーカードに収納されている個人情報を申告書データに添付することによって、個人を特定できる申告方法です。この手続きに必要なものとしてはマイナンバーカードの取得をしなければなりません。マイナンバーカードは住民票のある市区町村の役場で取得することになります。
ID・パスワード方式
「ID・パスワード方式の届出完了通知」に記載されたe-Tax用のID・パスワードを利用してe-Taxを行う方法です。
「ID・パスワード方式の届出完了通知」は、税務署で職員による本人確認を行った上で発行しますので、申告する際には事前に税務署に行く必要があります。
スマホ申告するために準備するもの
スマートフォンまたはタブレット端末
スマホ申告に必要なものはスマートフォンまたはタブレット端末です。スマートフォンのマイナンバーカード方式によるe-Tax送信は、令和3年1月からAndroid端末でもiPhone端末でも、マイナポータルアプリのインストールをするだけで可能となります。また、マイナンバーカード方式で申告する場合、マイナンバーカードを読み取る必要があります。スマホやタブレット自体に読み取り機能があれば不要ですが、読み取り機能がついていない場合にはICカードリーダライタが別途必要になります。
マイナンバーカード
マイナンバーカード方式で申告する場合には、マイナンバーカードが必要となります。また、この方法では利用者証明用電子証明書のパスワード、署名用電子証明書のパスワードの暗証番号が必要になりますので、事前に確認をしておくとよいでしょう。
ID・パスワード方式の届出完了通知
「ID・パスワード方式の届出完了通知」の発行は、税務署で職員による本人確認を行った上で発行されるので、運転免許証などの本人確認書類を持参の上、税務署に事前に行く必要があります。しかし、このID・パスワード方式はマイナンバーカード及びICカードリーダライタが普及するまでの暫定的な対応とされています。今後の利便性も含め、マイナンバー方式でのスマホ申告を検討されるとよいと思います。
スマホ申告の手順
具体的な手順を見る前に、令和2年分申告でスマホ申告ができる所得の種類と所得控除、税額控除の種類を見ていきましょう。
【図表】スマホ申告対象の収入・所得控除・税額控除など(2021年現在)
収入 | 給与所得(年末調整済1か所、年末調整未済、2か所以上に対応) |
---|---|
公的年金等、その他雑所得(副業の収入など) | |
一時所得 | |
所得控除 | 全ての所得控除 |
税額控除 | 政党等寄附金等特別控除、災害減免額 |
その他 | 予定納税額、本年分で差し引く繰越損失額、財産債務調書(案内のみ) |
図表にある通り、所得の種類に関しては、現在のところ給与所得、雑所得、一時所得の3つに限られます。これら3つの所得以外の所得がある人については、スマホでは申告できませんので、パソコンを使った申告か紙での申告をすることになります。また、所得控除についてはすべての所得、税額控除については政党寄附金特別控除と災害減免についての控除ができます。しかし、このスマホ申告についての範囲は毎年拡がってきているため、将来的には不動産・株式などの譲渡所得や事業所得などについても対象となることが予想されています。税額控除については利用する人が多い住宅ローン控除についても今後対象となることが予定されています。アップデートの内容については、常にチェックしておくとよいでしょう。
さて、話をスマホ申告の手順に戻しましょう。
前項目のスマホ申告するために特別に必要な準備が整い、スマホ申告の対象となる所得や所得控除であることを確認したら、次は所得税確定申告するための書類の取得をしなければなりません。具体的な書類は以下の書類です。
- 源泉徴収票(給与または年金)
- 各種控除証明書
- 領収書など
これらの書類を揃えるのは、従来の所得税確定申告においても同様ですので一度申告をしたことがある方ならわかるはずです。スマホで申告しても必要書類は変わりません。
具体的なスマホ申告の方法については、国税庁ホームページに動画付きで紹介されていますので、そちらをご覧ください。
スマホ申告といっても、国税庁HPの従来からある「確定申告書等作成コーナー」をスマホ用に変換したものなので、パソコンで申告書を作成したことのある人にとっては、特別難しいものではありません。スマホ用に「はい」「いいえ」で回答すれば必要な情報の入力ができるよう設計されているため、はじめて申告書を作成する人にとってもわかりやすいつくりとなっています。反面、「はい」「いいえ」での回答を使うため、質問項目が多くなっています。入力に慣れている方にとっては、面倒に感じるかもしれませんがひとつずつ確実に入力していってください。いくら時間がかかるといっても、税務署まで行って長時間待たされた上で申告することを考えれば、本当にあっという間に終わると思います。
スマホ申告の今後
スマホ申告をするためには、現在、マイナンバー方式とID・パスワード方式のふたつの方法があるのはすでに説明した通りです。このうちID・パスワード方式はマイナンバーカードやそれを読み取るためのスマホまたはカードリーダーライターが不要であるため、なんだか簡単にできそうなイメージもあります。しかし、このID・パスワード方式はあくまで当面の間の措置ですので、最終的にはマイナンバーカード方式が残ると予想されています。
実は、マイナンバー方式には将来的な利点があるのです。それは、マイナポータル連携といわれているものです。マイナンバーカードと紐づいている個々人のマイナポータルには個人が持っている税金や社会保険に関する様々な情報が自動的に蓄積されています。そのため、証明書を紙で保管しなくても、マイナポータルにある情報を転用するだけで確定申告が可能となるのです。この仕組みは個人所得税の確定申告だけではなく、サラリーマンの年末調整の作業でも利用することができます。
令和2年10月以降連携ができる情報が増えています。例えば、生命保険の証明書はマイナポータル連携に対応している保険会社が、個人のマイナンバーあてにその年の控除証明書データを個々人のマイナポータルあてに送信し、申告の際に個人はそのデータを自動で申告書に反映させることができます。対象となる保険会社もぞくぞくと増えているので、将来的にはほぼすべての保険会社について連携ができると考えられます。
税務手続きを考えると、マイナポータル連携を利用することで確定申告の簡便化が可能となりますので、これを機会に利用を検討してみてはいかがでしょうか?
ABOUT執筆者紹介
税理士・米国税理士 出口秀樹
BDO税理士法人 札幌事務所
税理士、米国税理士(EA)。BDO税理士法人代表社員、株式会社ドルフィンマネジメント代表取締役。
1967年北海道札幌市生まれ。1991年北海道大学文学部卒。1998年5月出口秀樹税理士事務所開所。より広い専門知識を身につけるため、小樽商科大学商学研究科入学、2005年修了。中小企業の税務、会計、経営のサポートを行うとともに、個人の税務対策などにも積極的に取り組んでおり、その内容は多岐に及ぶ。経営者や幹部、若手リーダー向けのわかりやすい財務分析や財務三表の読み方セミナー、不動産オーナー向けの税務対策セミナーなど講師としても活躍中。2021年7月BDO税理士法人 札幌事務所所長
著書に『知れば知るほど得する税金の本』『知れば知るほど役立つ会計の本』(共に、三笠書房《知的生きかた文庫》)、『会社の整理・清算・再生手続きのすべて』(共著、中央経済社)、『改訂版 会社経営100問100答』(共著、明日香出版社)などがある。
知れば知るほど得する税金の本
〇文庫: 384ページ
〇出版社: 三笠書房
〇言語: 日本語
〇金額:990円
〇ISBN:9784837987505
〇発売日:2021/11/17
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