働き方改革関係法案の概要
社会保険ワンポイントコラム
今回は「働き方改革」について、法律案が国会に提出(平成30年4月6日)されていますので、現段階での法案内容を確認しておきましょう。
長時間労働を是正し、多様で柔軟な働き方を実現する
まず、一般的に残業といわれる時間外労働の上限見直しがなされることになります。1ヶ月45時間1年360時間を原則とし、臨時特別時の特別条項を加えて1年720時間、単月100時間未満、複数月平均が80時間に制限されます。注意点として上記特別条項発動時の単月100時間および複数月80時間には休日の労働時間も含むとされています(自動車運転、建設、医師等の業務については猶予期間を設けた上で適用外の例外あり)。
現行 | 改正案 | |
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特別条項発動時の上限時間 | 上限時間なし | ・年720時間 ・単月での最長100時間未満* ・2~6ヶ月の複数月の平均80時間* *休日労働含む |
原則の上限時間 | 1ヶ月45時間1年360時間【現行に同じ】 | |
法定労働時間 | 1日8時間1週40時間(特例事業場は44時間)【現行に同じ】 |
次に中小企業においては月60時間超の時間外割増の猶予措置が廃止され、本来の割増賃金率50%以上が適用対象(平成35年4月1日)になるとされ、年次有給休暇の面では10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日分を時季指定して与えなければならない(労働者自身の時季指定や計画的付与の日数分については指定の必要なし)とされています。
多様で柔軟な働き方についてはフレックスタイム制の清算期間の上限を1ヶ月から3ヶ月に延長、特定高度専門業務等(高度プロフェッショナル)については少なくとも年収1,000万円以上で高度専門職に就く労働者を対象として、時間外、休日、深夜割増、等の規定を適用除外とする案が出されています(健康管理義務として年間104日の休日確保措置を義務化。さらに①インターバル措置、②1月または3月の在社時間等の上限措置、③2週間連続の休日確保措置、④臨時の健康診断、のいずれかの措置の実施を義務化という条件が付されています)。
この他に、前日の終業時間と翌日の始業時間の間に一定時間を空ける勤務間インターバル制度(努力規定)がある他、事業者は「*衛生委員会に対し産業医が行った労働者の健康管理等に関する勧告の内容等を報告しなければならない」、「*産業医に対し産業保健業務を適切に行うために必要な情報を提供しなければならない」(*は産業医の選任義務のある労働者数50人以上の事業場)など労働安全衛生法等の強化策も盛り込まれています。
雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
会社内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者(短時間・有期雇用)の不合理な待遇の是正のため、個々の待遇ごとに、性質・目的に照らして判断されるべき旨の明確化が求められます。また、有期雇用労働者については正規雇用労働者と①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲が同一である場合の均等待遇確保の義務化、派遣労働者については①派遣先労働者との均等・均衡待遇、②一定の要件(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であること等)を満たす労使協定による待遇確保も義務化とされ、上記の短時間、有期雇用、派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明義務化、行政による履行確保措置や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備についても触れられています。
上記のように改正案にはたくさんの内容が含まれており、これらを実現するために労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、労働者派遣法、パートタイム労働法、などが改正されることになると思われます。また法案が成立し、法改正がなされたとして、「実際に運用されるガイドラインの中身はどうなるか」という部分も気になるところですので、今後も働き方改革に関する情報収集は重要です。