19 September

災害発生後のバックアップ制度(税務会計編)

掲載日:2018年09月19日   
税務ニュース

最近では地震・台風をはじめとする甚大な自然災害が相次いでいます。先般被災された方々には、心よりお見舞い申し上げます。
このような自然災害にあった場合に、公的な支援として様々な制度があります。そのうちの主な制度をご案内します。

所得税・法人税・消費税共通

1. 申告・納税の期限を延長できます!

災害等の理由がやんだ日から2か月以内の範囲で期限を延長できます。延長するためには所轄税務署に申請をしなければなりませんが、申告期限が経過した後でも申請することができます。また、納付期限の延長が認められた場合には、延滞税等はかかりません。被災の状況に応じて税務署に相談しましょう。なお、届出書についても同様に延長が可能です。このほか、被害が広い地域に及ぶ場合に国税庁長官が期限を延長する地域と期日を決めて告示する「地域指定」などもあります。

2. 納税を猶予できます!

財産に相当の損失を受けた場合に、税務署に申請すれば以下のとおり納税が猶予されます。

① 損失を受けた日に納期限が到来していない国税

(イ) 1年以内に納付すべき国税 … 猶予期間は納期限から1年以内
(ロ) 所得税等の予定納税・法人税等や消費税等の中間申告納税 … 猶予期間は確定申告書の提出期限内

② 納期限が過ぎてしまっている国税

一時に納付することができないと認められる部分の国税 … 猶予期間は原則1年以内

所得税・法人税共通

1. 災害により滅失・損壊した資産等の処理は?

個人事業者または法人が所有する棚卸資産や事業用固定資産が、災害により次のような損失又は費用が生じた場合には、その損失または費用の額は必要経費または損金の額に算入されます。

① 商品や原材料等の棚卸資産、店舗や事務所といった事業用固定資産などの資産が災害により滅失または損壊した場合の損失の額
② 損壊した資産の取り壊し費用または除去費用の額
③ 土砂その他の障害物の除去費用の額

2. 復旧のために支出した費用は?

個人事業者または法人が災害により被害を受けた固定資産(被災資産)について支出する費用に係る資本的支出と修繕費の区分については、以下のとおりです。
① 被災資産についての原状回復費用は、「修繕費」。
② 被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水または土砂崩れ防止等のために支出する費用は、「修繕費」とする経理可。
③ ①または②以外の被災資産について支出する費用の額のうち、資本的支出か修繕費か明らかでないものがある場合に、その金額の30%相当額を「修繕費」、70%相当額を「資本的支出」とする経理可。

3. 従業員等に支給する災害見舞金は?

個人事業者または法人が、災害により被害を受けた従業員等またはその親族等に対して一定の基準に従って支給する災害見舞金品は、「福利厚生費」として必要経費又は損金の額に算入されます。

所得税

1. 所得税の確定申告により税負担を軽減できます!

地震・火災・風水害などの災害により、住宅や家財などに損害を受けた場合には、確定申告により「雑損控除(所得控除)」と「災害減免法(所得税減免)」のうちどちらか有利な方法を選んで所得税の全部または一部を軽減することができます。

  雑損控除 災害減免法による軽減・免除
適用の対象 災害・盗難・横領による住宅・家財を含む生活に通常必要な資産
(事業用資産は対象にならない。)
災害のみによる住宅・家財
(損害額が住宅・家財価額の1/2以上であること。)
控除額・軽減額の計算 次の(イ)または(ロ)のうちいずれか多い方の金額。

(イ)損害金額-所得金額×1/10
(ロ)損害金額のうち災害関連支出の金額-5万円

※「災害関連支出」とは、災害により滅失した住宅、家財などを除去するためなどのやむを得ない費用。

※その年の所得金額から控除しきれない金額がある場合には、翌年以後3年間繰り越して各年の所得金額から控除可能。

 

 

 

 

その年の所得金額 軽減額
500万円以下 全額免除
500万円超750万円以下 1/2の軽減
750万円超1,000万円以下 1/4の軽減
1,000万円超 軽減なし

2. 個人が受ける経済的利益も課税されません!

① 災害見舞金

個人が支払を受ける災害見舞金は、支払を受ける個人の社会的地位や支払者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものは課税されません。

② 低利息・無利息融資

災害により一時的に多額な生活資金を要することとなった役員または使用人が使用者からその資金に充てるために低利息または無利息で貸し付けを受けた場合には、その返済に要する期間として合理的に認められる期間内に受ける利息相当額の経済的利益は課税されません。

法人税

1. 法人税が還付される場合があります!

災害があった日から1年以内に終了する事業年度(X年度)の欠損金のうち災害損失に係るものがある場合には、X年度が開始する日から1年(青色申告法人の場合には2年)以内前に開始した事業年度(X-1年度、青色申告法人の場合はX-2年度)分として納付した法人税額のうち、災害損失欠損金額に対応する部分の金額について、還付させることができます。

2. 被災者に提供する経済的利益は損金に算入できます!

① 取引先に支払った災害見舞金等

被災前の取引関係の維持・回復を目的として、その取引先に支払った災害見舞金、事業用資産の供与等のために要した費用は、交際費等以外の費用として損金の額に算入されます。

② 取引先への低利息または無利息による融資

取引先の復旧支援を目的として低利息または無利息による融資を行った場合に、通常であれば収受するはずの利息と実際に収受した利息との差額については、寄附金以外の費用として損金の額に算入されます。

③ 取引先に対する売掛金等の免除等

取引先の復旧支援を目的とする売掛金・貸付金等の債権の免除による損失は、寄附金または交際費等以外の費用として損金の額に算入されます。

④ 被災者に対する自社商品やサービスの提供

不特定多数の被災者を支援するために緊急に行う自社商製品・サービス等の提供に要する費用は、寄附金または交際費等以外の費用として損金の額に算入されます。

消費税

消費税の簡易課税制度の適用(または不適用)の届出に特例があります!

通常、消費税の申告計算について簡易課税制度の適用を受けたい場合、または受ける必要がなくなった場合には、その適用(または不適用)したい課税期間開始の日の前日(つまり前課税期間の末日)までに届出書を提出しなければならないのは周知のとおりです。しかし、災害等により被害を受けた事業者については、災害等がやんだ日から原則2か月以内に、所轄税務署に申請書を提出して税務署長の承認を受ければ、災害等が生じた日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を受ける、または適用をやめることができます。

ABOUT執筆者紹介

税理士 西原 憲一

西原会計事務所

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