18 June

IT導入補助金とは?2024年度の特徴、流れ、用語の意義を解説

掲載日:2024年06月18日   
税務ニュース

ここ最近、IT導入補助金の話題をよく目にします。コロナを境に急増したリモートワーク、インボイス制度や改正電子帳簿保存法の開始に伴い、新たにIT機器の導入を検討する事業主が増えていることが背景にあるようです。そして、制度も年々少しずつ変わってきています。今回、2024年におけるIT導入補助金の制度概要についてお伝えします。

IT導入補助金とは何か

IT導入補助金とは、業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)につながるITツールの導入を支援するための補助金です。経済産業省が主体となって、中小企業や小規模事業者の生産性の向上を目的に毎年公募されています。2017年からスタートし、2024年で8回目となりました。

新型コロナウイルス感染症がまん延した時期は、テレワーク環境整備などのための特別枠が設けられました。最近は、2023年10月開始のインボイス制度対応の枠などがあります。

「融資と違って返済の必要がない」「同一年度内は何度でも応募できる」といった利点から、毎年多数の企業が応募しています。

2024年度IT導入補助金の特徴

2024年度のIT導入補助金には、次のような特徴があります。

募集枠がシンプルに

2023年度は「通常枠(A類型・B類型)」「デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型・デジタル化基盤導入類型・複数社連携IT導入類型)」「セキュリティ対応推進枠」と、やや複雑な分類でした。2024年度は、シンプルで分かりやすい区分となっています。

通常枠・インボイス枠・複数社連携導入枠・セキュリティ対応推進枠の趣旨や対象者は、それぞれ次の通りです。

補助対象 趣旨 対象者
通常枠 自社課題に合うITツールの導入で業務効率化や売上向上につなげる 中小企業等、小規模事業者
インボイス枠 電子取引型 受発注双方でインボイス対応のソフトを商流単位で導入するのを支援 中小企業等、小規模事業者、大企業等(受発注双方)
インボイス対応類型 インボイス対応の会計ソフト等を導入して労働生産性を向上 中小企業等、小規模事業者
セキュリティ対策推進枠 サイバー攻撃増加に伴うリスクを低減 中小企業等、小規模事業者
複数社連携IT導入枠 サプライチェーン単位・商業集積地単位でITツールを導入し生産性を上げる 複数の中小企業等、小規模事業者
(商店街や共同店舗などの単位)

補助率が最大4/5に

インボイス枠のインボイス対応類型のうち「インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフト」については、補助率が次のようになっています。

  • 小規模事業者…4/5
  • 中小企業…3/4

小規模事業者には、ひとり社長の株式会社や合同会社、個人事業主の方が当てはまります。こういった方が50万円以下でソリマチのソフトウェア製品を買った場合、購入費用の8割を補助金でカバーできるのです。

IT導入補助金の流れと用語の意義

申請から交付・報告までの流れ

IT導入補助金の申請から交付、報告までの流れは、次の通りです。

  1. 公募要領等の確認
  2. 「gBizIDプライム」アカウントの取得、「SECURITY ACTION」宣言の実施
  3. 「みらデジ経営チェック」の実施
  4. IT導入支援事業者とのマッチングツール・ITツールの選定
  5. 交付申請
  6. 交付決定
  7. ITツールの発注・契約・支払
  8. 事業実績報告
  9. 補助金交付
  10. 事業実施効果報告

IT導入補助金の用語の意義

IT導入補助金の「ITツール」

IT導入補助金の対象となるITツールとは、業務効率化のために新規で購入するクラウドサービスやセキュリティサービス、ソフトウェア製品などを指します。2024年度のIT導入補助金ではインボイス枠で一部のハードウェアも対象となりますが、ソフトウェアの購入が前提です。ただしリースは含めません。

中小企業等・小規模事業者

申請できるのは原則、中小企業等・小規模事業者です。次のようになっています。

法人ならば交付申請時点において日本国内で法人登記をし、日本国内で事業を営むことが条件です。個人事業主も日本国内で事業活動をしていることが求められます。

なお、インボイス枠の一部などは大企業等も対象となっています。ただし、IT導入支援事業者は交付申請できません。

IT導入支援事業者

IT導入支援事業者とは、IT導入補助金を申請する事業者を支援し、ITツールの導入や申請をサポートする事業者を言います。ITツールの選定とともに、この支援事業者も選定する必要があります。

「gBizIDプライム(GビズID)」アカウントの取得

gBizIDプライムとは、1つのID・パスワードで複数の行政サービスにログインできるシステムです。GビズIDとも呼ばれます。補助金の交付申請前に、取得しなくてはなりません。

「SECURITY ACTION」宣言の実施

「SECURITY ACTION」は中小企業自らが、情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度です。一つ星と二つ星があり、いずれかの宣言を交付申請前に行わなくてはなりません。

「みらデジ経営チェック」の実施

「みらデジ経営チェック」とは、経営課題解決のためのチェック・サポートツールです。通常枠のみ必須ですが、インボイス枠、セキュリティ対策推進枠においては加点項目となります。

注意点

IT導入補助金には、次の注意点があります。

公募要領を確認しよう

IT導入補助金の対象者や対象となるITツール、手続きは細かく決められています。おおまかな把握で終わらせず、公募要領をていねいに確認しましょう。

補助金は課税対象

補助金は法人税や所得税がかかります。圧縮記帳で課税を先延ばしできますが、いずれは税金を納める点に留意しましょう。

購入は交付決定後

申請前にITツールを導入しても、補助の対象となりません。購入するのは交付が決定してからにしましょう。

不正に注意

目的外の用途に補助金を使ったりすると、不正として厳しく追及されます。最悪、詐欺罪として刑事罰が科されることも。要件をきちんと守りましょう。

ABOUT執筆者紹介

税理士 鈴木まゆ子

税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。

 

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