2023年に賃上げをする?しない?経営側のスタンスを大規模調査
社会保険ワンポイントコラム
今年は世界水準での競争力と成長力を得るための賃上げ実施のニュース等から、賃上げをどのようにしようかと検討されている経営者の方が増えているようです。
そこで今回は産労総合研究所の「2023年 春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」の結果をご紹介させていただきます。なお、この調査は、全国上場企業と過去に同調査に回答のあった同社会員企業から任意に抽出した3,000社を対象として2022年12月に実施されたもので、集計社数は233社となっています。
賃上げを実施するとした企業は8割
2023年の自社の賃上げ予定
「賃上げ(定期昇給を含む、以下同じ)を実施する予定」76.8%(前回調査70.3%)
「賃上げは実施せず、据え置く予定」1.7%(同2.6%)
「賃下げや賃金カットを考えている」0.4%(同0.5%)
「現時点ではわからない」20.2%(同25.6%)
企業規模別にみると、「賃上げを実施する予定」は大企業では71.2%、中堅企業では71.6%、中小企業では84.0%と、前回調査同様に大企業よりも、中堅、中小企業で回答が多くなっています。「現時点ではわからない」と態度を保留する企業は大企業では25.0%、中堅企業で23.5%だったが、中小企業では15.0%と少ないようです。
物価上昇分を賃金改定で考慮する企業は38.6%
昨年から資源高や円安傾向を背景とした物価の上昇が続いています。今回の調査では、物価上昇が賃上げに影響があるのかを聞いてみました。
40年ぶりともいわれる物価上昇を2023年の賃金改定で考慮するかどうかをたずねたところ、「考慮する」は38.6%、「考慮しない」16.7%、「わからない」44.2%でした。現時点では態度を決めかねている企業も多いようです。なお、企業規模や業種の違いに大きな差は見られませんでした。
コスト上昇分を価格等に転嫁できている企業は1割
賃上げを可能とするためには、原材料などの仕入れコストを商品やサービス価格に転嫁できているかどうかが重要な意味を持っています。調査結果では、「ほぼ(7~10割)転嫁できている」と答えたのはわずかに14.6%に過ぎず、「半分程度(5~7割)転嫁できている」が23.6%となりました。
では、賃上げを可能とするために、どのような環境でどのような人を採用するのでしょうか。「優秀な人」「成長する人」を採用したいという一方で、「同じことを繰り返す人は不要」等という意見もあり、優秀な人材を採用したいと考えている企業が多いようです。そのためには、企業は同じことを繰り返す業務については、システムの導入など環境を検討していくことが必要でしょう。
ABOUT執筆者紹介
特定社会保険労務士 出口裕美
2004年に社会保険労務士事務所を開業。出産を機に、育児と仕事の両立のためテレワーク(在宅勤務)を開始。2014年に社会保険労務士法人出口事務所に法人化。2017年にテレワーク(サテライトオフィス勤務)を開始。2020年に新型コロナウイルスの取り組みの様子をメディアにて紹介。
経営者と社員が継続的に安心して働ける環境を構築するため、インターンシップ、ダイバーシティ(雇用の多様化)、テレワーク、業務管理システム等を積極的に導入し、また企業への導入支援コンサルタントとしても活動中。
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