Chat GPTの登場で人間はより頭を使わなければいけなくなる
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どんな質問にも大賢者のように回答してくれる「Chat GPT」
昨年末から、生成AIが急速に普及し始め、ニュースでもよく目にするようになりました。生成AI(ジェネレーティブAIとも言う)とは、人工知能の一種で、自然言語や画像、音声などを生成する技術です。生成AIは、ニューラルネットワークを利用して、膨大なデータを学習し、入力に従ってデータを出力します。
すでに、画像や音声、音楽でも様々な、生成AIが話題になっていますが、今回はテキストを生成する「Chat GPT」について紹介します。「Chat GPT」はOpenAI社が開発した、大規模言語モデルです。昨年11月にリリースされ、日本語でも利用できます。すでに月間のアクティブユーザー数が1億人を突破しており、今最も注目されているサービスなのです。
チャット画面に何か入力すると、AIが回答してくれます。もちろん、「AIとは何ですか」のような質問をして、答えを教えてもらう、ということもできます。しかし、ほかにも様々なことができるのが「Chat GPT」です。
文章を与えて、要約してもらうことができます。ビジネスのアイディアを入力して、アドバイスを得ることもできます。何なら、ビジネスアイディアを生み出すブレインストーミングの相手にもなってくれます。計算も、翻訳もでき、料理のレシピも教えてくれます。小説を書いたり、プレゼン資料のたたき台を作ったり、プログラムを書くこともできます。
確かに、AIは言葉の意味を本当に理解しているわけではありません。確率的に、この言葉の後にはこの言葉が来るだろう、という処理をして文章を返してくれているだけです。それなのに、あたかも大賢者が回答してくれているように見えます。
実際は当然、ミスもあります。企業の売上高の推移など、金額のデータなどは不正確なこともあります。あまりネットに情報のない項目に関しては、適当な回答になることもあります。俳句の説明は完璧にでき、書いてもらうこともできますが、5-7-5になっていることはまれです。日本語の音をカウントするのが難しいためです。
しかし、とにもかくにも触ってみると驚くこと請け合いです。例えば、自分が新規事業を立ち上げる担当者という想定で、「Chat GPT」に質問してみましょう。
丸投げです。
Chat GPTにはGoogle検索のようにキーワードを羅列するのではなく、話すように入力すればOKです。人間では把握しきれないような情報を列挙しても問題ありません。文章は丁寧語の方がいい結果が得られやすく、英語で書いた方が豊富な情報が返ってくる傾向にあります。そして、この質問に対し、数秒で以下のような回答が得られます。
市場調査とアイデア生成/アイデアの評価と選択/目標設定/ビジネスプランの作成/プロトタイプ開発/テストマーケティング/ローンチというステップとその内容が提示されました。
ステップに従い、アイディアを生成してもらいました。ちなみに、「Chat GPT」は最新の数値を伴う市場調査は苦手です。あえて苦手なことはさせず、得意分野で活躍してもらいましょう。
「新規事業のアイディアをください。SaaSやサブスクリプションが広まっている現状で、AIやメタバース、IoTといったトレンドを踏まえ、どんな新規事業であれば、成功できそうでしょうか。わが社は、インターネット技術やセキュリティ技術が得意ですが、全く別の領域の事業でも大丈夫です」と質問したところ、以下の5つを説明付きで列挙してくれました。
- AI駆動のセキュリティソリューション
- メタバース内のビジネスインフラ
- IoTデバイスのセキュリティ管理
- AIを活用したマーケティング支援ツール
- テレワーク向けセキュリティソリューション
メタバースのビジネスが面白そうです。さらに具体的な事業内容を聞いてみました。
- バーチャルオフィス
- バーチャルイベント会場
- メタバース内のオンラインストア構築
- バーチャルリアルエステート
- メタバース向け広告サービス
実は、どれも最先端のベンチャー企業などが手掛けている領域ですが、確かに参入企業もまだ少なく、新規事業としては未来がありそうです。この後も、それぞれの事業を成功させるためのアクションプランや、稟議書を書くための詳細なども「Chat GPT」に書いてもらうことができます。
専門家やコンサルタントに依頼せず、手持ちのPCで無料で短時間にこれだけの情報が体系立てて手に入るのです。未来を感じませんか?
既存のデータを使った単純な事務作業は「Chat GPT」に任せられる
「Chat GPT」の最新動向
「Chat GPT」は2021年9月までのデータを元に学習しているので、最新情報は網羅していません。しかし、今年に入ってから、生成AIを取り巻く環境は日ごとに進化し、毎日のように新サービスが登場しています。
「Chat GPT」も当初はGPT3.5という大規模言語モデルをベースにしていたのに、現在の有料プランではGPT4も利用できるようになっています。さらに、「Chat GPT」向けのプラグインも公開されました。今は、一部の開発者などしか利用できませんが、「Chat GPT」が苦手な最新情報にアクセスできるようになるようです。例えば、旅行代理店やレストランの予約サービス、ネットショッピングが、人と話すように利用できるようになります。
昨年末からの生成AIブームは一過性のものではありません。明らかに社会やビジネスを変革するインパクトを持っています。リサーチやプレゼンの資料作りや稟議書の作成、SNSの投稿やブログの執筆など、様々な業務で「Chat GPT」が活躍します。
筆者のようなライターであれば、下調べや構成のアイディア出しに「Chat GPT」を活用できます。執筆した原稿を入力し、誤字脱字のチェックから矛盾している点を指摘してもらったりしています。文脈から説明が足りない箇所を挙げてくることもあり、プライベートアシスタントのように活躍しています。
今まで数時間かかっていた作業が数分で済むようになります。そのため、業務によってはアウトプットの量が格段に増えることになるでしょう。
ビジネスにAIを活用する時代
今後のビジネスでは、AIを活用するスキルが求められるようになります。「Chat GPT」のような生成AIを使って、必要なアウトプットを量産できるスキルです。当然、入力する文章が「Chat GPT」に適していなければ、まともな答えは返ってきません。現在、「Chat GPT」が頓珍漢な答えを返してきたことで、生成AIは使い物にならないという人もいますが大間違いです。
これまでのリアルな仕事で、部下に対してきちんと指示ができる人であれば、「Chat GPT」もきちんと活用できます。「Chat GPT」が得意な内容に関して、状況と目的、得たい回答を明確に指示できれば、「Chat GPT」はきちんと回答してくれます。対人間でも同じですが、わざと相手が苦手なことを指示したり、目的や質問があやふやだと、「Chat GPT」も回答しきれません。
iPhoneもFacebookも登場したころは、「日本では流行らない」と言う人がたくさんいました。結果はご存じのとおりです。生成AIも、精度がいまいち、不正確なことがある、と敬遠する人がいるかもしれません。たしかに、必ずしも完全な結果が返ってくるわけではありません。しかし、それは人間でも同じではないでしょうか。ミスが出る可能性はあるので、できるだけミスが出にくい仕事をまかせ、最終的にアウトプットする際はダブルチェックすればいいだけです。
「Chat GPT」を使いこなすスキルといっても、「Chat GPT」もこれから急激に進化し続けます。生成AIに入力するコマンドや質問のことを「プロンプト」と呼びますが、現時点でプロンプトマスターになる必要はまったくありません。凝った質問をせずとも、生成AIが人間の問いかけを正確に理解し、答えてくれるようになるはずです。
まずは「Chat GPT」を触ってみよう
生成AIで何が可能か、どうすれば望む答えを引き出せるのか、というスキルは今から触って身に付けておくことを強くお勧めします。自転車に乗るように、すぐにある程度のスキルは身に付きます。そして、同時に生成AIが出力した情報の信ぴょう性を判別し、裏を取るスキルも身に付けておいてください。
業務効率改善に「Chat GPT」を活用するのはいいのですが、提出する論文や原稿、公開するSNSやブログ、取引相手へのメールや契約書などにそのままコピペで流用するのは避けましょう。ミスがあった時に信頼を失ってしまうことにもなりかねません。「Chat GPT」のせいにしたりしたら、さらにアウトです。
これからのビジネスでは「Chat GPT」のような生成AIができる作業はまかせ、人間にしかできない作業に集中することが重要になります。斬新な企画を立案し、意思決定を行い、独創性の高い想像力を持つことの価値がさらに高まります。「Chat GPT」で楽できる分、人間はより頭を使う業務を行う必要があります。従来のまま頭をあまり使わない業務を続けている業種では、AIに代替される可能性があります。
IT業界に長くいて、AIが人の仕事を奪うという意見を杞憂と考えていましたが、昨年11月からの爆発的な生成AIの進化を見るに、その可能性も十分に出てきました。
ハマったり、妄信したり、恐怖したりする必要はありません。まずは、「Chat GPT」の無料プランでいいので、触ってみることが重要です。今後、世界を変える生成AIの衝撃を感じてください。
ABOUT執筆者紹介
柳谷智宣
ITライター/NPO法人デジタルリテラシー向上機構 代表理事
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1998年からIT・ビジネスライターとして執筆活動を行っており、コンシューマからエンタープライズまで幅広い領域を手がけている。2018年からは特定非営利活動法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を立ち上げ、ネット詐欺や誹謗中傷の被害を減らすべく活動している。
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