09 January

後継者問題を解決できる可能性があるM&Aとは?メリット・デメリット・流れを解説

掲載日:2023年01月09日   
中小企業おすすめ情報

会社はいずれ後継者へと引き継ぎますが、必ずしも後継者が現れるとは限りません。家族に任せようと思っていても、後継者になることを断られたり、経営者として十分な資質や知識、ノウハウを習得できなかったりする場合があります。

このような場合は、やむを得ず廃業を選択することになりますが、第三者に会社を譲渡する「M&A」によって後継者問題を解決できます。

今回は、後継者問題の現状や原因からM&Aの手法、メリット・デメリット、流れまで詳しくご紹介します。

 

後継者問題の現状

帝国データバンク株式会社の2020年度調査によると、65.1%の企業が後継者問題を抱えています。2016年以降は後継者不在率が低下しているものの、まだまだ高値で推移していることから、多くの企業が後継者問題による廃業に追い込まれていると言えるでしょう。

また、日本政策金融公庫の調査によると、60歳以上の経営者のうち半数以上が廃業を予定しており、その理由の3割程度が「後継者不在」とされています。廃業理由は、トレンドの変化、競争激化に対するプレッシャー、体調の問題などさまざまですが、後継者問題でやむを得ず廃業を考えているのであれば、M&Aを検討してはいかがでしょうか。

 

後継者問題の原因

後継者問題はどのような原因で起きるのでしょうか。現状の把握や後継者問題が起きる可能性を考えるために、後継者問題が起きる原因についてチェックしておきましょう。

身内に後継者がいない

中小企業の多くは親族を後継者としますが、必ずしも親族に「後継者に相応しく、経営者としての資質を備えており、後継者になりたいと考えている人物」がいるとは限りません。

従業員に後継者がいない

親族のほかに、従業員を後継者にする方法もあります。しかし、従業員も親族の場合と同様に、後継者に相応しく、後継者になることを希望する人物がいるとは限りません。

経営がうまくいっていない

会社の経営がうまくいっていない場合、親族や従業員に後継者になることを断られる可能性が高いでしょう。特に、会社の借金を経営者が保証人となる「個人保証」をしている場合は、後継者に個人保証を引き継ぐことになるため、断られる可能性がさらに高まります。

 

後継者問題を解決する「M&A」とは

後継者問題を解決できる「M&A」とは、「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」を意味する言葉です。2つ以上の企業が1つになる「合併」、会社が他の会社を買う「買収」があります。

後継者問題を抱えている会社を他社に売却すれば、会社を存続させることができます。売却後は、現経営者は退任し、売却先の会社から派遣された人物や売却先の社長などが経営者の地位に就きます。

売り手は、後継者問題を解決できるだけではなく、売却によって得た譲渡益を第二の人生や新事業などに用いることが可能です。買い手は、売り手が持つ技術力やノウハウ、資産、従業員、ブランドなどを入手できます。このように、売り手と買い手の双方にメリットがある場合に、M&Aが成立します。

 

M&Aは年々増加傾向にある

画像引用:レコフデータ

上記のグラフは、M&Aの数の推移です。老舗M&A仲介企業の株式会社レコフによると、1985年の約260件から2021年には約4,300件と、約16倍も増加しています。リーマンショックや東北地方太平洋沖地震の際に一時的に減少しているものの、またすぐに増加へ転換しました。

このように、M&Aはごく一般的な手法として用いられているため、後継者問題を解決する方法の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。

 

M&Aによる後継者問題解決のメリット・デメリット

M&Aで後継者問題を解決するメリットとデメリットを理解し、自社・自身にとって最適な方法かどうかを考えましょう。

メリット

M&Aで後継者問題を解決するメリットは次のとおりです。

  • 経営者に相応しい人物に会社を承継できる
  • 譲渡益を獲得できる

M&Aを行う際は、買い手候補と面談をして、承継先に相応しいかどうかを判断します。経営者としてのスキルや知識、適性はもちろん、残された従業員にとって良い選択ができる人物かどうかも確認が必要です。

適切な手順、方法で買い手を選定すれば、経営者に相応しい人物に会社を承継できます。反対に、選び方を誤ると、従業員に負担がかかったり会社の経営が傾いたりするリスクがあるため、プロに相談したうえで慎重に選定しなければなりません。

また、売り手は買い手から会社の購入代金を受け取れるため、第二の人生の資金や新たに会社を興すときの資金を獲得できることもメリットです。

デメリット

M&Aで後継者問題を解決することには、次のデメリットがあります。

  • 希望条件を満たす買い手を見つけることが難しい
  • 従業員に受け入れてもらえない場合がある

前述したとおり、承継後に会社を良い形で継続させるには、買い手を慎重に選ぶ必要があります。経営者としてのスキルやノウハウ、適性、従業員との相性などの条件を満たす人物を見つけるのは容易ではありません。

また、買い手が納得する希望譲渡額を提示しなければ、買収のメリットよりもコストの方が高いと感じてしまい、M&Aは成立しないでしょう。さらに、後継者が従業員に受け入れられるかどうかも懸念すべき点です。特に、経営方針や社内体制を大きく変える場合は、社内から反発の声が出て退職者が続出するリスクもあります。

 

後継者問題の解決が目的のM&Aの流れ

後継者問題の解決が目的のM&Aは、次の流れで行います。

1.M&A以外の選択肢を考える

まずは、M&A以外の「親族への承継(親族内承継)」、「従業員への承継(親族外承継の一種)」、「廃業」などの選択肢を考えましょう。親族に相談なくM&Aを選択するとトラブルになる恐れがあります。また、従業員にヒアリングして、社内に後継者に相応しい人物がいるかどうかを確認しましょう。

2.専門機関に相談する

M&Aを行いたいときは、下記のような専門機関に相談しましょう。

  • M&A仲介会社、アドバイザリー会社
  • 会計事務所や税理士事務所
  • 金融機関
  • 弁護士事務所
  • 商工会議所

中でもM&A仲介会社とアドバイザリー会社は、豊富なコネクションを活かして買い手を効率的に探してくれます。弁護士事務所や会計事務所、税理士事務所などは、顧客の中から買い手を探すため、その規模によっては買い手が見つからない可能性が高いでしょう。

また、金融機関は大手企業のM&A案件を主に取り扱うため、中小企業の相談先には向かないかもしれません。やはり、仲介会社かアドバイザリー会社に相談するのが無難な選択です。

3.買い手探しを始める

専門機関に買い手探しを代行してもらいます。目星がついたら、トップ同士で面談を行い、M&Aを進めていくかどうかを検討しましょう。お互いにM&Aを進める意向の場合は、基本合意と呼ばれる契約を交わし、次のステップへ進みます。

4.デューディリジェンス

デューディリジェンスとは、簿外債務や経営リスクなどを弁護士や税理士、公認会計士を派遣して調べることです。買い手が売り手に実施するものであるため、売り手としては求められた資料を用意しておくだけで問題ありません。

5.契約

デューディリジェンスの問題がなく、お互いに納得できる条件が定まったら最終契約を行います。最終契約書には、M&Aの諸条件や今後のスケジュール、キャンセルに関することなどを定めましょう。

 

会社の価値を高めることで譲渡益が増える

M&Aで後継者問題を解決するだけではなく、より多くの譲渡益を獲得したいのであれば、まずは会社の価値を高めましょう。会社の価値を高めれば、希望譲渡額を高く出すことができ、より多くの資金調達が可能になります。

また、M&A後の会社経営も安定しやすくなるため、残された従業員にとっても良い取り組みと言えます。

 

まとめ

M&Aで第三者に会社を譲渡することで、後継者問題を解決できます。親族や従業員への承継が望めない、廃業ではなく会社を存続させたい場合はM&Aについて専門機関に相談してみてはいかがでしょうか。ただし、親族に相談なく話を進めるとトラブルになる恐れがあるため、事前に話し合ったうえでM&Aを選択するかどうかを決めましょう。

ABOUT執筆者紹介

加藤良大

フリーライター
ホームページ・ブログ

歴11年フリーライター。執筆実績は23,000本以上。
多くの大企業、中小企業のWeb集客、メディア戦略に関わってきた。主な領域はITや不動産、医療、美容、税務・会計、法律などだが、ジャンルを問わず対応できる。

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