改正育児介護休業法の施行第2弾!2022年10月から会社に求められることとは
社会保険ワンポイントコラム
働き方改革の一環として改正された育児介護休業法が、今年4月から順次施行されています。10月は産後パパ育休とも呼ばれる休業制度の影響で男性の育休取得が頻繁に取り上げられ注目されていますが、性別に関わらずすべての育休取得者に影響する改正も含まれています。4月施行の内容に加え、10月から何が変わるのかもきちんと押さえておきましょう。
出生時育児休業(産後パパ育休)の新設
10月の施行で最も大きな改正は、出生時育児休業の新設です。これは、出生後8週間以内に4週間まで取得できる育児のための休業です。この「出生後8週間」という期間は、出産した女性にとっては産後休業の期間です。そのため、多くのケースでは男性が取得することが想定され、「産後パパ育休」とも呼ばれています(以降、「産後パパ育休」)。出生後8週間を境に、8週間までを「産後パパ育休」、8週間からを「育児休業」、と呼び名が変わることも押さえておきましょう。
また、産後パパ育休の新設に伴い、従来あった「パパ休暇」は9月30日をもって廃止されます。
産後パパ育休の概要は以下の通りです。
対象期間 | 子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能 |
---|---|
申出期限 | 原則、休業の2週間前までに申し出 ※雇用環境の整備などについて、法を上回る取組を労使協定で定めている場合は、1か月前までとすることが可能 |
分割取得 | 2回まで可能 ※初めにまとめて申し出る必要あり |
休業中の就業 | 労使協定の締結と労働者の個別合意により可能 ※就業可能日数等に上限あり |
育児休業との大きな違いは、休業中の就業が可能という点です。休業中の就業を認めるためには、その旨を記載した労使協定の締結が必要です。ただし、労使協定があったとしても無条件で就業させることはできません。以下のような手続きや上限があることを押さえておきましょう。
具体的な手続きの流れ
(1) 休業中の就業を希望する労働者が、休業開始日の前日までに以下の内容を申し出る
- 就業可能日
- 就業可能日の就業可能な時間帯やその他の労働条件
(2) 事業主が以下の事項を労働者に提示する
- 労働者から申し出のあった就業可能日のうち、就業させることを希望する日
- 就業の時間帯とその他労働条件
(3) 労働者が(2)の内容を同意する
就業可能日数
- 休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
- 休業開始、終了日を就業日とする場合は、当該日の所定労働時間数未満
手続きの流れからもわかる通り、労働者の申し出があって初めて就業を検討することになります。会社の方から就業を働きかけることはできません。また、休業中に就業が可能なのは産後パパ育休のみです。通常の育児休業時にはこのルールは適用されません。
育児休業の分割取得
従来は育児休業を分割して取得することはできませんでしたが、10月からは2回までの分割が可能になります。分割できるのは子どもが1歳までの育児休業です。従来通り、1歳6か月あるいは2歳までの育児休業の分割はできません。
産後パパ育休も2回の分割が可能ですので、すべて分割して取得する場合、子どもが1歳までの間に最大で4回(産後パパ育休2回+育児休業2回)の休暇が取得できることになります。なお、産後パパ育休とは異なり、育児休業の分割取得時には2回分をまとめて申し出る必要はなく、都度申し出ればよいとされています。
出生時育児休業給付金の新設と社会保険料免除要件の変更
ここまで説明してきた改正に伴い、育児介護休業法以外の関連法も改正されています。
出生時育児休業給付金の新設
現行の育児休業給付と同様、受給資格を満たしていれば、産後パパ育休の取得でも育児休業給付を受け取ることができます。産後パパ育休は休業中の就業が可能なため、給付金の対象となる就業日数が以下のように定められています。逆を言えば、産後パパ育休中にこの水準を超えて就業した場合、給付の対象になりません。
- 産後パパ育休を28日(最大)取得する場合は、就業日数が10日以内(10日を超える場合は80時間以内)
- 産後パパ育休を上記より短い日数取得する場合は、それに比例した就業日数以内
例:産後パパ育休を14日取得する場合は、就業日数が5日以内(5日を超える場合は40時間以内)
社会保険料免除要件の変更
産後パパ育休中も、要件を満たせば社会保険料が被保険者本人負担及び事業主負担のいずれも免除されます。9月末までは下記(1)のみが社会保険料の免除要件ですが、10月からは以下の要件へと変更されます(以下、「育児休業期間」は産後パパ育休を含む)。
<10月からの社会保険料免除要件>
(1) その月の末日が育児休業期間中の場合(※現行と同様)
(2) (1)を満たさなくとも、同一月内で育児休業を取得(開始・終了)し、その日数が14日以上の場合
(3) 賞与にかかる保険料については、連続して1か月を超える育児休業を取得した場合に限り免除
育児休業給付も社会保険料免除も、労働者にとっては非常に関心の強い部分です。特に産後パパ育休は休業中の就業が可能なため、労働者が就業を希望する場合には、これらの制度の対象になるかを説明できるようにしておきましょう。
10月の施行は、就業規則の改定、労使協定の締結、雇用保険・社会保険手続きの変更および追加など、より実務の色が濃くなっています。抜け漏れのない対応ができるよう10月までに準備しておきましょう。
ABOUT執筆者紹介
内川真彩美
いろどり社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 / 両立支援コーディネーター
成蹊大学法学部卒業。大学在学中は、外国人やパートタイマーの労働問題を研究し、卒業以降も、誰もが生き生きと働ける仕組みへの関心を持ち続ける。大学卒業後は約8年半、IT企業にてシステムエンジニアとしてシステム開発に従事。その中で、「自分らしく働くこと」について改めて深く考えさせられ、「働き方」のプロである社会保険労務士を目指し、今に至る。前職での経験を活かし、フレックスタイム制やテレワークといった多様な働き方のための制度設計はもちろん、誰もが個性を発揮できるような組織作りにも積極的に取り組んでいる。
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