多くの人が知らない「企業版ふるさと納税」の隠れたメリットとは?
税務ニュース
企業版ふるさと納税を知っていますか
今や、年末の風物詩とも言える「ふるさと納税」。テレビCMも多く打たれ、ポータルサイトはまるでネットショッピングかのように彩られて、お得な返礼品・一風変わった面白い返礼品などを探し、手に入れることができる時代となりました。
一方、同じ「ふるさと納税」でも、「企業版ふるさと納税」があることは、あまり知られていません。そこで、なぜ知られていないのか、どのような効果があるのかなどをこのコラムで解説していきます。
まず、企業版ふるさと納税の概要に目を通してみると、個人版のふるさと納税と比較して目につくのが「寄附企業への経済的な見返りは禁止」という一文です。
個人版ふるさと納税の最大の楽しみであり目的である、返礼品を受け取ることは禁止されている、ということになります。この時点で、大多数の人が「使えない制度」と判断し、見向きもされないまま現在に至る・・・というのが私の見解です・・・というより、私自身がそうでした。
見返りは禁止されている一方、寄付金額の約90%が税金から軽減される効果がある、という文言にはおおっ!と思わされます。
しかし、何もメリットがないなら10%は損するということじゃないか、と冷静に考え、この制度の意味を理解しないまま、企業版ふるさと納税は使えない制度という結論に辿り着く。これが文章から出てくる結論となるのはごく当たり前のことなのですが・・・この制度の真のメリットは表面的な文章からは得られないところにあったのです。
企業版ふるさと納税の隠れたメリット
「経済的な見返りにあたらない見返り」
これこそが、企業版ふるさと納税の真のメリットです。ここで、具体的なメリットの話の前に企業版 ふるさと納税の利用実績を見てみましょう。
図からわかるように、寄附実績はぐんぐん伸びているのです。これはやはりメリットがあるから利用者が増加していると考えるべきでしょう。
最もわかりやすくメリットとなり得る「見返り」について、内閣府の企業版ふるさと納税ポータルサイト内のQ&Aにて、以下のように解説されています。(読み飛ばしてもOKです)
つまり、簡潔に言うならば、感謝状やHPに掲載するレベルの「社会通念上許容されるお礼」は問題なく、さらに突っ込んだことは個別に回答しています、ということになります。
そこで、個別の事例を見ていくと、直接的に見返りがなければおおよそのことはOKであることがわかります。
企業版ふるさと納税の具体例
最も大きくわかりやすい事例として、サイゲームズ社の事例を取り上げると、概要はこうです。
- サイゲームズが当時スポンサードしていた「サガン鳥栖」というサッカーチームのホームスタジアム「鳥栖スタジアム」は鳥栖市が所有していた。
- サイゲームズは、鳥栖市に6億8,600万円の寄附(企業版ふるさと納税)を行った。
- 鳥栖市はそのお金を元手に、鳥栖スタジアムを改修し、サガン鳥栖の集客にもつながった。
このように概要を見ると、一見経済的な見返りを受けているように感じられる案件でも、「直接の」見返りはないと考えられるのです。
上記の事例は大型案件であり、一般的な企業はここまでダイナミックなことはできないと思われますが、メリットの享受に関してはこれに近いことであれば認められるのです。
例えば・・・
- 若者向けの地域振興活動のサポートをし、若者が集まったところに会社のアピールをした結果、入社希望の若者が増えた。
- 地域密着のスポーツイベントの企画を行い、そこに用品の提供を行った結果、利用してくれた人が同社の製品を気に入って以後使用するようになってくれた。
などは現実的に起こり得ることではないかと推測されます。
ここまでに挙げたような大がかりな仕掛けまでは考えられなくても、経営が一定のステージに達した企業は社会貢献活動、取り分け現在はSDGsへの参画が求められるご時世です。
企業版ふるさと納税を通してこれらの活動を行うことで、実質な企業負担は少なく、かつ自社の理想とする社会貢献活動へ資金を投下することが可能です。これらの方針を選定するのには、企業版ふるさと納税のポータルサイトなども活躍します。
HPなどで実績を報告したり、会社の応接室等にそれらの感謝状などを飾ることでも活動を行っていることを認知してもらうことが可能であると考えられます。
自治体において直接の自社HPのリンクがされるということは、SEO対策(Google等で検索されたときに上位表示されるための施策)上も有利になるなど、細かい部分でのメリットを拾っていくと活用方法が多岐に渡ることはご理解いただけるものと思います。
さいごに
ただし、ここまでは理想的な一面を取り上げましたが、現実的に大きなハードルがあります。それは、「企業の利益の約1%が1割負担でできる寄附の実質的な限度額となる」という点です。利益が1,000万円の会社でやっと10万円の寄附ができるという制度のため、それなりの規模の企業でないと使い勝手が良くない、という点が制度の普及を阻害していると思われます。
利用する企業が増加し、企業と寄附を受ける自治体の相乗効果が期待できる企業版ふるさと納税、さらにコンパクトな使い方が可能となり、利用者が増加することを願っています。
監修:株式会社カルティブ 企業版ふるさと納税コンサルタント 小坪拓也
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秋田谷紘平
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