08 August

「判決」「裁決」「判例」。違いをお教えします!

掲載日:2022年08月08日   
税務ニュース

はじめに

私たち税理士に対する相談事や税務調査の際の折衝におきまして拠り所とするものが「税法」です。しかし法律というものは「税法」に限らず、取り扱いを明示しているものではなく、基本的な考え方を示すにとどまっております。これを補完するために「施行令」や「施行規則」というものも準備されておりますがこちらも法の保管という位置づけに過ぎません。

「判決」「裁決」「判例」

一方でこれらの法の下、行動をし、結論付けられた結果があります。これらが「判決」「裁決」「判例」です。いずれも具体的ケースにおいてどの様に法が解釈され適用されたかということが詳細に示されており、実務上大きな拠り所となります。近年「裁決」の出たタワマン節税をはじめ、これらの具体事例が今後の税務判断に影響を与えるのです。今回は「判決」「裁決」「判例」のそれぞれの正しい理解とそれぞれの違いをお伝えしていきます。

「判決」は裁判所が下した判断の結果

「判決」は皆様も新聞やニュース、ドラマなどでも耳にしたことがあるのではないでしょうか。こちらは「裁判所が下した判断の結果」を指します。ですので「東京地裁で認容」や「最高裁で棄却」などというように実際の裁判が行われた裁判所と合わせて結果が報じられます。ちなみに税金に関する争いに対してはいきなり裁判になることはありません。まずは次項でお伝えする「裁決」を経た上で不服が残る場合に訴訟を提起し裁判に移行します。言い換えれば「判決」は数回に渡り争われた結果ですのでより強い拠り所となります。

「裁決」は国税不服審判所が下した判断の結果

いっぽう「裁決」は聞きなじみがない言葉かもしれません。こちらは「裁判所」ではなく「審判所」という行政法上の法律関係の訴訟を扱う機関が下した判断です。国税に関しては「国税不服審判所」という機関がこれを扱います。納税者は税務署などが行った更正・決定などの課税処分等に不服があるときはその処分や変更を求めて不服申し立てを行うことができます。その申し立てにつき審判所にて調査及び審理を行った上での判断の結果が「裁決」です。

「判例」は過去の最高裁判決の積み重ね

では「判例」はと言いますと、過去に最高裁判所が下した個別判断である「判決」をまとめたものになります。「判決」はあくまで個別事案に対しての判断となるわけですが、「判例」として似ている「判決」をまとめることによって、より強い根拠をもたらすものです。

「判例」>「判決」>「裁決」

それぞれについての違いを認識していただくと「判例」>「判決」>「裁決」の順により強い根拠を持つことがご理解いただけたかと思います。これらが用いられる場面は税務調査や課税リスクのある取引を行う際など限られているかと思います。しかし、限られた場面であるからこそ正しい理解の下で結論を導く拠り所として向き合っていただきたいです。

時がたてば拠り所も変わる

これまでお伝えしてきました拠り所ですが「判決」も「裁決」も日々新しいものが出てきます。これまでのものと類似する判断であれば拠り所をより強固なものにすることとなります。一方でこれまでの拠り所を大きく変える「判決」や「裁決」も出てきます。私たちは常に最新の「判決」「裁決」を学んでいく必要があるわけです。

最後に

そもそも争いはないに越したことはないでしょう。しかし税務調査の場面等で理不尽な指摘を受けることも数多くございます。税務署は法の専門家ではありません。間違った指摘には根拠を持った反論が必要です。争いになる前に過去の「判決」「裁決」「判例」を正しく理解し適切な対応を行いましょう。

これらの違いを的確にこたえられるかどうかが税務調査に強い税理士であるかどうかを見抜く一つの問いかけかもしれません。

ABOUT執筆者紹介

税理士 小嶋純一

税理士法人中山会計

大学卒業後、税理士法人中山会計にて代表社員税理士社長を務める。相談しやすさNo.1を体現する税理士として、自社の経営の実践並びにお客様の経営サポートを兼務。M&Aスペシャリスト及びM&Aシニアエキスパートの資格を有し、事業承継の出口をサポートするコンサルティングを20年来推進。保険会社・銀行・商工会議所・各士業等とのタイアップによるセミナーなど全国で多数講演。身近な相談窓口として活動中。

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