31 March

フリーランス保護新法と中小企業への影響について解説!

掲載日:2023年03月31日   
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現在、フリーランス保護新法を制定すべく議論が進められています。フリーランス保護新法が施行されるとフリーランスへ発注する中小企業へも大きな影響が及ぶ可能性があります。

この記事ではフリーランス保護新法とはどういった法律なのか、中小企業へどういった影響があるのかをご説明します。フリーランスへ外注する機会のある場合にはぜひ参考にしてみてください。

1.フリーランス保護新法が制定される背景事情

フリーランス保護新法は、発注企業に対して立場の弱くなりがちなフリーランスの立場を守るための法律です。まだ制定されていませんが、今後速やかに制定につなげられるよう、政府で議論が進められています。

フリーランス保護新法が制定される背景となった事情は以下のとおりです。

現在、働き方の多様化などの需要によってフリーランスの人口が増えています。ただフリーーランスには労働基準法などの労働者保護法令が適用されません。発注者が企業であるのに対し受注者であるフリーランスは個人であり、どうしても立場が弱くなってしまいがちです。報酬を減額されたり支払い遅延が生じたりするケースも少なくありません。また契約書を作成せずに口約束で受注してしまい、トラブルになるケースもよくあります。

フリーランスが増加する世の中において、フリーランスを保護する必要性が高まってるといえるでしょう。そこでトラブルを未然に防いでフリーランスの立場を守るのが、フリーランス保護新法制定の主な目的です。

2.フリーランス保護新法の3つの柱

フリーランス保護新法は、以下の3つの柱から成り立っています。

  • フリーランスに業務委託する事業者の遵守事項
  • 違反した場合の対応
  • フリーランスによる申告や国が行う相談対応

以下でそれぞれみていきましょう。

3.フリーランスに業務委託する事業者の遵守事項

フリーランスに業務委託する事業者には、規模を問わず以下の義務や禁止事項が課されます。

3-1.業務委託の開始や終了時の義務

事業者がフリーランスへ業務委託する際、仕事内容や報酬額などを記載した書面を交付するか、メールなどで情報提供しなければなりません。フリーランスへ継続して発注する場合には、契約期間や契約の終了事由、中途解約時の費用清算方法などを記載する必要があります。また契約を途中で解除する場合や期間満了後に更新しない場合、「中途解除日または契約期間満了日の30日前まで」にフリーランス側へ予告が必要です。

フリーランスから要求がある場合、契約の終了理由も明らかにしなければなりません。

3-2.募集に関する義務

事業者が不特定多数のフリーランスへ仕事を募集する場合、正確に最新情報を届けなければなりません。虚偽表示や誤解を生むような表示をしてはなりません。仕事に応募したフリーランスに対しては、仕事内容や報酬等を明示する必要があります。募集時点で明らかにしていた内容と異なる条件としたい場合、説明しなければなりません。

3-3.報酬支払に関する義務

事業者は、フリーランスから納品やサービスの提供を受けたら、その日から60日以内に報酬を支払う必要があります。

3-4.禁止行為

事業者は以下のような行為をしてはなりません。

  • フリーランスに責任がないのに受領を拒否する
  • フリーランスに責任がないのに報酬を減額する
  • フリーランスに責任がないのに返品する
  • 相場に比べて著しく低い報酬額を不当に定める
  • 正当理由なしに物の購入やサービスの利用を強要する
  • 金銭やサービス、その他の経済上の利益を提供させる
  • フリーランスに責任がないのに報酬を変更する、やり直しを要求する

3-5.就業環境の整備

事業者はフリーランスの就業環境を整備するため、以下のような対応をとる必要があります。

  • ハラスメント対策
  • 出産や育児、介護などとの両立へ配慮

4.違反した場合の対応

事業者がフリーランス保護新法に規定される遵守事項を守らない場合、行政によって履行確保措置が行われます。たとえば助言や指導、勧告、公表、命令などが主な対応となってくるでしょう。事業者が行政処分に従わない場合には罰則が適用される可能性もあります。

ただしフリーランス保護新法違反の取引が、ただちに無効になるわけではありません。

5.フリーランスの申告及び国が行う相談対応

事業者にフリーランス新法違反の行為があった場合、フリーランスは国などの行政機関へ申告できます。事業者は申告されたことを理由にフリーランスに対し、契約解除などの不利益な取り扱いをしてはなりません。

また国や行政機関はフリーランスからの相談対応だけではなく、フリーランスの就業環境を整えるための必要な措置を講じるとされます。

6.中小企業はどのような対応をすべきか

フリーランス保護新法施行後は、中小企業は「フリーランスに業務委託する事業者の遵守事項」を守らねばなりません。そのため、今のうちから以下のような対応をしておきましょう。

  • 仕事内容、報酬、支払条件等を明らかにするため契約書や募集内容のフォーマットを作成する
  • フリーランスの就業環境を整える用意をする
  • 社員にマニュアルを配布したりセミナーを開いたりして社内に法律の内容を周知する
  • フリーランス保護新法を遵守することを社外にも発信する

フリーランス人口が増えるとフリーランスを利用する中小企業も増えるでしょう。今回ご説明した内容を参考に、今のうちから対応の準備を進めていってください。

ABOUT執筆者紹介

元弁護士 法律ライター 福谷陽子

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京都大学法学部卒。10年間の弁護士実務経験を積み、専業の法律ライターへ転身。企業法務、電子契約、不動産、相続など多種多様なメディアで専門的な法律記事を多数執筆・監修。「難しい法律の知識をわかりやすく伝える」をモットーに、身近で役立つ知識を発信。

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