[どうする?フリーランスの報酬]自分の売り値の決め方
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独立して何年たっても、クライアントから「見積書をください」と言われたときには悩むものではないでしょうか。自分のスキルを売るフリーランスにとって、「報酬をどうやって決めるか」は永遠の関心事です。「あらかじめ自分の価格表を用意しておけばよい」というのはよく言われることです。しかし、その価格表をどう作るか。それが問題なのですよね。
「相場金額」が明確でない仕事は特に見積もりにくい
相場金額が明確な仕事であれば、世間一般の相場金額を基準にして見積を作ることができます。
しかし、相場金額が明確でない仕事もあります。例えば特殊な分野のデザインや執筆、クライアントの要望にオーダーメイドで対応する調査分析やコンサルティングなどが挙げられます。ホームページ制作などは比較的「相場金額が明確な仕事」と思われがちですが、ユニークなデザインや機能を備える場合や、企画段階から請け負う場合などは、世間一般の相場金額とは一概に比較できません。このように相場金額が明確でない仕事の場合、金額を見積もるのは難しいものです。
これまでの仕事の報酬を時給換算(日給換算)してみよう
相場が明確でない仕事の場合、その報酬が「安い」のか「高い」のか、どう判断すればよいのでしょうか。
それを判断するひとつの材料に、いわゆる「時給換算」や「日給換算」があります。過去の仕事をいくつかピックアップして、その仕事がどれくらいの時間(期間)を要するものであったのか、ざっくりカウントしてみましょう。その時間数(日数)で報酬金額を割ると、時間あたり(1日あたり)の報酬金額になります。
その金額が自分にとって許容できる金額でなかったなら、「自分を安売りした」ということになります。
「報酬が安くても仕事をもらえるだけありがたい」という考え方もあるでしょう。しかし、稼働できる時間には限りがあります。安い報酬の仕事に時間を費やせば、その分、正当な報酬の仕事をする時間を失います。安い報酬の仕事を減らさなければ、正当な報酬の仕事を増やすことができないのです。
この金額は「自分を安売りした」ことになるのか?
時間あたり(1日あたり)の報酬金額を計算しても、それが安いかどうか判断するのが難しい場合は、それを年収換算してみましょう。年収に換算すると、独立前の年収や、世間一般の年収水準などと比較しやすくなるので、より判断しやすくなります。「その報酬水準で仕事を請け続けたら年収はいくらになるか」を考えるのです。具体的には、1日あたりの報酬金額に「年間稼働日数」を掛けます。
例えば5万円の仕事を仕上げるのに実質5日間かかった場合、稼働1日あたりの報酬は1万円ということになります。仮にすべての仕事をこの報酬水準で請けると、月収は20万円(月の稼働日数が20日の場合)、年収は240万円ということになります。
仮に独立前の会社員時代の年収が500万円だったとしたら、この年収はどうでしょうか?「リスクをとって独立したのに年収が半分以下になるなんて、これでは独立した意味がない」と考える方もいるでしょう。一方、「会社員時代より働き方が大幅に改善したので、この年収なら充分である」と考える方もいるかもしれません。このように、フリーランスになった動機や価値観なども踏まえて、これまでの仕事の報酬の妥当性を考えてみましょう。
自分の売り値の単価である「人日単価」を決めよう
これまでの仕事の報酬の妥当性を確認したら、今後の自分の売り値を考えましょう。
まずは、これまでの仕事の報酬の年間換算額や会社員時代の年収、自分の価値観などを踏まえて「目標年収」を設定します。次に、その「目標年収」から「1日あたりの目標売上」を逆算します。
目標年収÷年間稼働日数=1日あたり目標売上
例えば「目標年収」が1200万円、稼働日数が月20日(年240日)の場合、「1日あたり目標売上」は、1200万円÷240日=5万円となります。
この「1日あたり目標売上」のことを「人日単価」といいます。これが、自分の売り値の単価になります。人日とは、1人で取り組んだ場合の所要日数をあらわす単位です。
ぜひ自分の「人日単価」を決めておきましょう。「人日単価」は、「通常定価」のほか、「値引き限度額」も決めておくとよいでしょう。
自分の「人日単価」があれば、見積をつくるときにあまり悩まなくなります。その仕事に要する「所要日数」さえ適切に見積もることができれば、「人日単価」に所要日数を掛けることで見積金額を算定できます。
もし価格交渉を受けたら、「安くても受注したい理由」があるのであれば値引き限度の範囲で「人日単価」を下げてもよいでしょう。「安くても受注したい理由」には例えば以下のようなことが挙げられます。
- その仕事を引き受けることで魅力的な人脈が得られる
- その後の継続的な仕事につながる
- 自分の実績に箔がつく
といった理由です。そのような理由がなければ、定価を守るようにしましょう。金額の折り合いがつかなければ、その仕事は丁寧にお断りしましょう。
自分とクライアントの双方が満足する取引のために
自分の売り値を決めたら、自分の仕事がその値段に見合っているのかを冷静に考えましょう。取引は、自分とクライアントの双方が満足することが大前提です。クライアントの満足のために自分を犠牲にするべきではありませんが、クライアントの満足は当然ながら追求すべきことです。自分のスキルを、自分が望む売り値に見合うように高め続ける努力は欠かせません。
独立したばかりのフリーランスは「クライアントに強気な見積金額を提示して失注したくない」という気持ちを抱きがちです。それでも、安い金額で自分のスキルを売ることは精神衛生上よくありません。業界の相場を下げて同業者の迷惑にもなります。取引は対等なものです。あなたのスキルに敬意を払ってくれるクライアントは、適正な報酬を支払ってくれるものです。自分と業界を守るために、自分のスキルに見合った適正な売り値を、自信をもって提示していきましょう。
ABOUT執筆者紹介
経営コンサルタント 古市今日子
株式会社 理 代表取締役
経済産業大臣登録 中小企業診断士
外資コンサルティングファームなどで16年間経営支援の経験を積
事業再生に携わるほか、自治体の経営相談員や創業支援施設の経営
中小事業者・起業希望者の経営相談への対応件数は年間約200件
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