01 May

これって経費になるの? グレーゾーンとなる必要経費

掲載日:2021年05月01日   
税務ニュース

毎年、確定申告の時期になりますと「これって経費になるの?」というご質問を多くいただきます。明確に経費と判断できるものあれば、中には首を傾げるような領収書もあります。所得計算上の必要経費として認められるものなのか、個人的な家事費なのか、どのように判断したら良いのでしょうか。

必要経費の意義

所得金額(利益)の計算は、総収入額から必要経費を差引いて計算します。
必要経費とは「売上原価及び収入を得るために直接要した費用」及び「その年における販売費、一般管理費、業務に関連する通常必要な支出」とされています。

家事関連費で必要経費となるもの

必要経費になるか否かで悩まれるものの一つとして、「家事関連費」と言われる事業でも使っているが個人的にも使っているような支出があります。

家事関連費は、「業務の遂行上必要」かつ「必要である部分を明らかに区分することができる」場合に限り、その明らかにされた部分のみが必要経費に算入できます。

よくある事例として、携帯電話の通信費やマイカー(自動車)を事業として使用した場合のガソリン代などの支出があります。携帯電話の場合であれば、通話やインターネットの使用割合、使用時間などをベースに、家事費と必要経費に按分することになります。

ご注意いただきたい点として、按分する割合の計算は、何らかの根拠をベースに算定しなければなりません。「なんとなく半分くらいだから50%が経費」というのは、「明らかに区分」できていませんので、必要経費として認められない場合があります。また、一度計算した割合を理由や根拠もなく、短い期間で変更しますと、利益操作を疑われますので、注意が必要です。

個人的な家事費と疑われてしまうような支出

もう一つ悩ましいものとして、一見すると個人的な家事費と思われるような支出もあります。

確定申告を作成していたお客様の領収書に「子供用のおもちゃ」がありました。確認したところ、得意先と打合せの日がその得意先の子供の誕生日だったそうで、誕生日プレゼントを買われたとの事でした。このように内容を確認せず領収書だけを見ると、自分の子供のおもちゃを買ったのでは?と思ってしまいます。

個人事業主の方が営む事業は、様々な業種があります。そのため「○○だから経費で良い。××だから経費にならない。」というものではありません。

例えばですが、料理研究家が撮影用に料理を作りました。その後、その料理を夕食で食べてしまったけど、これは必要経費でしょうか?アパレルショップが、最近の流行を確認するために購入したファッション雑誌は、必要経費でしょうか?業種が異なれば、事業に関連する経費の内容も異なります。

上記の例でしたら、撮影用の料理の食材費であれば必要経費で問題ないと考えますが、食べ物や飲み物の全てが必要経費になる訳ではありません。アパレルショップの場合でも、ファッション雑誌であれば必要経費で問題ないと考えますが、これがマンガ雑誌だったら必要経費にはならないでしょう。また、これらの支出が必要経費であることを立証する責任は、納税者にあります。個人的な食費や被服費等ではないと証明するためには、納税者の方で、エビデンス(根拠資料)をしっかりと残しておく必要があります。事業として使用している写真や、何のために支出したのかなどの記録が必要になります。

皆様がどうなのかなと悩まれた支出は、税務調査があった際の調査官も、同じように疑問に思います。グレーゾーンかもと思ったら、まずは直接事業に関連する根拠となる資料を残しておくこと、家事費と按分する場合には、根拠となるデータに基づき合理的に按分計算することがポイントです。

最近の悩ましい事例としまして、ワーケーション(リゾート地などの休暇先でテレワークを行うこと)があります。ワーケーションのワーク部分を必要経費とする場合、どこまでが休暇でどこからが事業(仕事)なのか、合理的に明らかに区分する必要がありますが、なかなか難しそうですね。

ABOUT執筆者紹介

代表社員税理士 筒井亮次

税理士法人 経世会

会計事務所勤務を経て大手税理士法人に入社。資産税、財務・税務デューデリジェンス業務を中心に従事。2011年4月に税理士法人 経世会に入社。2018年より現職。愛知県半田市・名古屋・東京の3拠点体制でお客様の幅広いニーズをカバーしている。スタッフ目線を大事にした業務改善・働き方改革を実行し、ワンチームで事務所拡大へ向けた挑戦を続けている。

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