災害発生後のバックアップ制度(公的支援金・融資等編)
税務ニュース
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冬がおとずれ台風や豪雨による風・水害などの災害は起こりにくくなりましたが、地震や火山の噴火被害などの自然災害は季節にかかわりません。万が一のときのために、暮らしの中で被災後に支援する制度の知識は欠かすことのないようにしたいものです。
今回は、前回の税務会計編に続き、被災された個人の方や事業主の方への税制面以外の公的な支援金や融資などの制度について主なものを案内します。
個人の方が被災したら
1.ご家族がお亡くなりになったときは・・・災害弔慰金・災害障害見舞金の支給
実施主体 | 市区町村 |
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対象となる災害 | 自然災害 |
受給できる遺族 | ア.配偶者、子、父母、孫、祖父母 イ.死亡した人の死亡当時における兄弟姉妹 (死亡した人の死亡当時にその人と同居し、または生計を同じくしていた人に限る。) |
支給額 | 市区町村が条例で定める額で... ア.生計を維持している人が死亡した場合 500万円以下 イ.その他の人が死亡した場合 250万円以下 |
費用負担 | 国 1/2 都道府県 1/4 市町村 1/4 |
実施主体 | 市区町村 |
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対象となる災害 | 自然災害 |
受給できる人 | 自然災害により重度の障害を受けた人 重度の障害とは、両眼失明、要常時介護、両上肢ひじ関節以上切断などのこと。 |
支給額 | ア.生計を維持している人 250万円 イ.その他の人 125万円 |
費用負担 | 国 1/2 都道府県 1/4 市町村 1/4 |
被災したことにより新たに特別支援学校(学級)などに就学しなければならなくなった子どもがいる世帯には、保護者の経済的負担の能力に応じて、通学費・学用品費などの資金援助をする制度です。子どもの就学困難についての支援には、授業料の減免などもありますので学校または市区町村に問い合わせてみましょう。
2. お住まいが壊れたときは・・・被災者生活再建支援制度
自然災害により住居が全壊などになった場合に支援金が支給される制度です。持ち家か賃貸かは問いません。
実施主体 | 都道府県 | ||||||||||||||
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対象となる災害 | 自然災害(市町村に10世帯以上の住宅全壊被害が発生した場合など) | ||||||||||||||
受給できる人 | 1.住宅が「全壊」した世帯 2.住宅が半壊、または住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯 3.災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯 4.住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯(大規模半壊世帯) |
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支給額 | 以下の2つの支援金の合計額。 (※ 世帯人数が1人の場合は、各該当欄の金額の3/4の額) 1.住宅の被害程度に応じて支給する支援金(基礎支援金)
2.住宅の再建方法に応じて支給する支援金(加算支援金)
※いったん住宅を賃借した後、自ら居住する住宅を建設・購入(または補修)する場合は、合計で200万円(または100万円)。 |
3.被災したためお金を借りたいときは・・・災害援護資金貸付
災害により負傷した世帯主、または住居や家財に一定の損害を受けた世帯に向けた貸付制度です。
実施主体 | 市区町村 | ||||||||||||
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対象となる災害 | 都道府県内で災害救助法が適用された市町村が1以上ある災害 | ||||||||||||
受給できる人 | 上記の災害により負傷または住居・家財に被害を受けた人 | ||||||||||||
貸付額 | 限度額は350万円 世帯主の負傷の程度や住宅・家財に受けた損害の程度により貸付額が150万円~350万円と異なる。 |
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利率 | 年3%(据置期間中は無利子) | ||||||||||||
据置期間 | 3年(特別の場合5年) | ||||||||||||
償還方法 | 年賦または半年賦 | ||||||||||||
所得制限 |
※ただし、その世帯の住居が滅失した場合には、1,270万円とする。 |
4. 労災の給付や雇用保険の失業給付はあるのか?
自然災害に起因する就業中のケガについて労災給付の対象になると思われがちです。しかしながら、自然災害自体は業務と無関係な自然現象であって、労働者としては事業主の支配下にあるかどうかにかかわらず危険にさらされますので、たとえ業務中に発生した自然災害であっても一般的に業務に起因するとは認められず、給付の対象にはならないと解されています。
ただし、業務の性質・内容・作業条件・作業環境・事業施設の状況などによっては、被災しやすい事情の場合、業務に起因するものとして取り扱われる過去の判例もあるようですので、迷った場合は労働基準監督署に相談しましょう。
ちなみに東日本大震災の場合には、勤務中または通勤中の被災者を労災給付の支給対象とされました。3ヶ月後に生死が不明だったときに遺族補償年金または一時金が支給される措置が行われています。保険給付の請求の際に事業主の証明を取ることができなくても労働基準監督署は請求を受け付けたという事例があります。
ア.「激甚災害法の雇用保険の特例」(休業する場合の特例)
激甚災害法の指定を受けた地域の事業所が、被災したことにより休止または廃止したため休業を余儀なくされた場合、賃金を受けることができない状態にある人は、実際に離職していなくても雇用保険の基本手当を受給することができます(通常は離職していなければ受給できません)。
イ.「災害救助法の適用地域における雇用保険の特別措置」(一時的に離職する場合の特別措置)
災害救助法の適用を受けた地域の事業所が、災害により事業が休止または廃止したため、一時的に離職を余儀なくされた人について、事業再開後の再雇用が予定されている場合であっても、雇用保険の基本手当を受給することができます(通常は再雇用が予定されていれば受給できません)。
5. 公共料金の支払いも減免されます!
電気・ガス・電話などについては、各事業者において災害救助法の適用区域の被災者に対し、支払期日の延長・料金の減免・工事費の免除・修理費用の軽減など特別措置を行う場合があります。適用の条件、支援措置の内容については事業者ごとに異なりますので、手続き方法を各社へ確認しましょう。また、減免措置等は申出が必要な場合もあるので注意が必要です。上下水道についても、基本料金、使用料金の減免や支払期限の延長等が行われる場合があります。
事業主の方が被災したら
1. 雇用調整助成金
自然災害のほか、景気の変動、産業構造の変化などの経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、休業などをしなければならない場合に、休業手当によって労働者の雇用維持を図るときは、その休業手当の一定割合が事業主に対して助成されます。休業が労使間の協定によるものなど一定の要件を満たす必要があります。
2. 農林漁業者のための事業資金貸付・・・天災融資制度
種苗・肥飼料・農薬・燃料費等の農林漁業経営に必要な資金が低利で融資されます。
実施主体 | 市区町村 |
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対象となる災害 | 自然災害(農林水産物の被害が著しく、国民経済に大きな影響を及ぼす場合) |
対象となる人 | 減収量30%以上、かつ、損失額10%以上の被害を受けた農業者で、市町村長の認定を受けた人 |
貸付限度額 | 個人200万円(北海道は350万円)、法人2,000万円など (激甚災害に指定された場合は限度額の引上げあり) |
利率 | 都度決定 |
貸付期間 | 3年~6年(激甚災害に指定された場合は延長あり) |
3.社会保険料や労働保険料の納付期限が猶予されることも
自然災害により社会保険料の納付が困難になった場合には、申請すれば納期限から1年以内に限り、保険料の全部または一部の納付が猶予されます。たとえば社会保険料の猶予期間は、財産の損失の割合に応じて原則8か月以内または1年以内とされています。なお、猶予された期間に対応する延滞金は免除されます。
甚大な災害では、被災者を積極的に新規雇用・再雇用または職業訓練する事業主のためにさまざまな助成金や奨励金を支給する制度が臨時に措置されたり、政府系金融機関では事業復旧のために復興特別貸付が行われることがありますので、被災した場合にはハローワークや金融機関窓口に問い合わせましょう。
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