融資審査のとき、銀行員は何を見ているか【社長評価編】
税務ニュース
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事業性評価融資にも影響する?
前回の記事で、銀行は金融庁から事業性評価融資の推進を求められていることに触れました。また、企業評価手法には定量的と定性的な評価が織り交ぜられ、数字に表しにくい定性的なものとしてビジネスモデルやノウハウ等があり、銀行員に目利き能力が必要であることも述べました。
事業性評価融資が求められる今後において、企業としては数字に表しにくい定性的な事柄にも注意を払っておく必要があるといえるでしょう。
企業は人なり
「企業は人なり」という有名な言葉がある通り、銀行の融資取引(特に中小企業の場合)において、「法人取引=社長との取引」という認識を避けることはできません。
何よりも「社長の信用が一番」と言っても過言ではありません。
こう書くと社長としては、銀行員に何を見られているのか、気が気じゃないかもしれません。
そこで今回は定性的な事柄である「銀行員が社長を見る目はどういうところなのか」を箇条書きで記します。
1.社長との面談・会話、日頃の取引から把握すること
- 性格はどうか、人間性はどうか、信用できるのか
- 仕事に対しての態度はどうか
- 社内での求心力、従業員からの信頼はあるか
- 仕事全般で得意分野と苦手分野は何か
- 経営計画や財務面等の数字を把握しているか
- ITやSNSの利用や理解はどうか
- 業界の動向、関係法規、慣習などの把握はどうか
- 経歴や資格はどういったものか
- 家族構成はどうか(配偶者・子供の有無)
- 個人的な借入は多すぎないか
- 所有資産(金融資産,動産,不動産)はどうか(担保設定や権利設定は普通か)
- 趣味や嗜好は何か、ギャンブル等の遊びに興じていないか
- 嫌いなことや言ってはならない禁句は何か
- 車は何か、腕時計は何か、服装はどうか など
2.同業者等からの聞き取りで把握すること
(聞き取り調査の対象は、地域の同業者,商工会や法人会など地域のことをよく知る人)
- 過去の話を聞き、社長の話と違わないか確認します
- 社長の人柄なども併せて聞き、銀行の把握していることと照らし合わせます
- 地域住民との関係は良好か、トラブルはないか
- 過去に取引上トラブルなどはなかったか、係争事はないか
- 信用調査会社が保有する情報と照らし合わせ違わないか
3.幹部社員や従業員の様子や会話から把握すること
- 会社(社長)に対して、満足して仕事をしているか、不信感などがないか
- 取締役や幹部社員の突然の退職などがないか
- SNSの裏アカウントで不平不満が流れていないか
このような聞き取り調査では、書類から把握できないこと、社長からは直に聞き出せないことが、聞き出せる場合があります。悪い噂話もありますが、良い話も多いものです。
銀行員が影でこんなことをしていると知れば、嫌悪感を抱く方もいるかも知れません。しかし、人は誰しも自分のことを話す場合、謙遜したり、照れくさかったりします。言いたくないことや恥ずかしいこともあります。ゆえに第三者を介した側面調査をしてこそ、その人物像をより詳しく把握できるのです。
社長評価は銀行融資でどう影響するか
多面的な調査から、銀行では社長を数段階で評価しています。
これまでのところ、社長評価が著しく低い場合を除いて、融資判断に大きく影響するようなことはありません。(ちなみに、経理担当者など銀行と交渉を担う人も同様の評価をされ、社長評価に加味されていると考えてください。)
社長を知ることは会社をより深く知ることであり、経営計画や設備計画等の把握や理解に少なからず影響します。
社長・企業を深く把握していれば、条件交渉や融資判断のスピードが速くなるのはご理解いただけるのではないでしょうか?
今後、事業性評価融資の評価手法によっては、社長評価が金利設定や返済条件等に影響する可能性は十分にあると想像されます。
どう対策するか
銀行の融資担当者としては、社長との付き合いの中で、常日頃から上記の事柄をさりげなく把握していたり、気になることがあればメモしたり、調べたりしています。
銀行員が多面的に社長を見るのは仕事柄欠かせないことなので、「何か対策をしなければ…」と不安に思ったり、身構えたりする必要はありません。
不自然な言動こそ「要らぬ詮索」をさせかねません。銀行員とは人間同士の真摯な付き合いを常にしていれば良いだけです。
環境変化が激しく速い時代であるため、会社・製品サービスを良くしたいと願い、社会・業界や顧客ニーズの変化に合わせ、経営戦略・戦術を練り行動していくこと、広く学び吸収し柔軟に対応していく姿勢を社長が持ち続けられることが重要だと筆者は考えています。
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