02 July

税務調査において、判断の基となる「事実」をどのように認定するか

掲載日:2021年07月02日   
税務ニュース

税務調査は、「事実」を確認すると言う意図をもって行われています。

法人税の税務調査の場合、会社概要のヒアリングから始まり、会計帳簿のチェック、領収書・請求書のチェックへと続きます。相続税の税務調査の場合も、被相続人がどのように生活されてきたのか、相続人の現況などのヒアリングから始まり、財産の確認へと続きます。税務調査により租税徴収処分を行う場合、「法律要件を充足」しなければなりません。この法律要件を充足していないで行った租税徴収処分は違法ですし、場合によっては無効となります。法律要件を充足するか否かは、「事実」に基づきます。確認した事実を法律要件に当てはめ、法の適用(効力)の有無を判断します。
今回は、税務調査において、判断の基となる「事実」をどのように認定するか、簡単にご説明します。

3つの事実 

事実は、大きく分けて「主要事実」「間接事実」「補助事実」があります。
そして、その主要事実の存在を証明する資料が「証拠資料」となります。

  • 主要事実:法律要件に該当する具体的な事実
  • 間接事実:主要事実が存在するであろうと推認することができる事実
  • 補助事実:証拠資料の信用性に影響を与える事実

主要事実が明確で、証拠資料も存在する場合には、税務調査で何か問題になることはありません。これらが曖昧で証拠資料もない場合は、事実が何なのか確認が行われます。

贈与の事例 

贈与税の事例に当てはめて解説します。 

<前提条件>

甲から乙に対し、1,000万円の資金移動があった。乙は贈与でもらったと主張しているが、甲は贈与ではなく貸したと主張している。税務調査官は贈与税の申告漏れを調査している。

贈与の法律要件は、「当事者間で贈与契約を締結したこと」になります。従いまして、贈与者が無償であげると言う意思と、受贈者の無償でもらうと言う意思の合意で、贈与契約が成立します。資金の移動は、株式や不動産のように名義変更がされるものではありません。そのため契約書や念書など、意思を確認したことが記載されたものがなければ、真意は外見からでは判断することができません。この場合の契約書や念書が「証拠資料」となります。

ただし、これらの契約書や念書が「証拠資料」として有効と認められるためには、「補助事実」が問題になります。自署・押印がなく、すべてパソコンで作成されたような契約書では、信用性に欠け、補助事実がないため証拠資料となりません。

税務調査では、まず両者の意思の確認と、それを証明するための証拠書類の有無の確認が行われます。もし、契約書や念書のような証拠資料が無かった場合、例えば、乙の通帳から毎月定期的に、甲の通帳に返済されているとき、これが「間接事実」と認められれば、贈与ではなく貸し借りだと認定されます。

また、上記の例は、甲と乙とが異なる主張をしているケースを記載しましたが、甲と乙とが共謀して事実を隠蔽する場合もあります。
資金移動を現金で行い(預金通帳には証拠はなく)、贈与の事実も認めていないようなケースです。この場合、税務調査官は「間接事実」を積み上げていくことになります。「乙が、他に収入がなく、預金を取り崩している事実もないのに、裕福な生活をしている」「甲の預金通帳から過去に多額の出金があり、その資金を使って他の財産を購入したり、役務提供を受けたりした様子もない」など、その他さまざまな状況を精査し、主要事実となり得る間接事実を集めます。経験則、証言なども「間接事実」「補助事実」となり、事実認定が行われます。

 

今回は、課税庁側の視点から事実認定について簡単にお伝えしましたが、皆さま納税者側にも同じことが言えます。課税庁側の主張に「違う」と反論するには、納税者側に立証責任が生じます。間接事実で事実認定を行う場合、曖昧な事を複数集めて判断しますので、必ずしも真実とは限りませんし、大変な労力を要します。税が絡む取引で2以上の判断がされそうな事象については、納税者側で「主要事実」を明確にし、そのための「証拠資料」を残しておくことが重要です。

ABOUT執筆者紹介

代表社員税理士  筒井 亮次

税理士法人 経世会

会計事務所勤務を経て大手税理士法人に入社。資産税、財務・税務デューデリジェンス業務を中心に従事。2011年4月に税理士法人 経世会に入社。2018年より現職。愛知県半田市・名古屋・東京の3拠点体制でお客様の幅広いニーズをカバーしている。スタッフ目線を大事にした業務改善・働き方改革を実行し、ワンチームで事務所拡大へ向けた挑戦を続けている。

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