10 June

事業主に記帳や申告の知識はどこまで必要か

掲載日:2024年06月10日   
税務ニュース

はじめに

近年、副業も含めると、かなり多くの方が事業を始めていらっしゃいます。開業を志す方は、営業の方法や収入を増やす方法については十分に検討され、ある程度の道筋を想定していらっしゃる一方で、経理や確定申告の準備は不十分であることが多いです。

そこで、本稿では、帳簿の作成や確定申告に関する知識を「どの程度持っていれば良いか」および「どんな方法で得れば良いか」についてご紹介いたします。

帳簿作成の目的

帳簿作成の目的について考えてみます。表向きには、財政状態の推移および残高の把握、経営成績の把握ということになっています。しかし、小規模な個人事業主の場合には、主に確定申告を見据えて帳簿を作成しているのが現実と言えるでしょう。もちろん、将来的に事業が大きくなって財政状態や経営成績の把握が重要となるフェーズが訪れる可能性もありますが、開業当初は取り敢えず税務上の要請に応えられれば、最低限の目的は達成できると考えられます。

税務上の要請とは

税務上の要請とは、本来は守備範囲の広い表現ですが、開業にあたっては適正な納税額の計算と、税制の優遇措置を受ける条件と割り切ってしまえます。税制優遇は、具体的には青色申告を想定すれば良いです。青色申告は、一般に確定申告の種類と考えられていることが多いですが、内容を見ると税制優遇策のパッケージであると表現することが出来ます。従って、複式簿記の作成、損益計算書と貸借対照表の作成、確定申告書の作成の準備が、最低限必要なことと言えます。

会計ソフトの利用

以上の様に、できなければならないことを明確にしますと、俄然、難しそうな名前が出てきてしまいます。しかし、これらは会計ソフトを導入することで、数値の取り扱いや集計について、多くの部分を任せてしまうことが可能です。昨今、会計ソフトは、データベースやAIの進歩により、事業主に要求される知識がかなり少なくなっています。ただ、必要知識がゼロになる訳ではないのが悩ましいところです。

帳簿の作成や確定申告につまずく方が多くいらっしゃいますが、その原因の大部分は、必要知識が不足していることにあります。これは、会計ソフトがあれば知識は不要という誤解や、会計の知識を得るのは難しそうという先入観から対応を棚上げしたままになっていることが原因として挙げられます。

必要な知識を付けるには

私は、記帳指導の機会では、青色申告と確定申告について、極々簡単な書籍を1冊づつ読むことをお勧めしています。図が多く、とっつき易いもので十分です。そして、それ程真剣に読み込む必要はありません。斜め読みすれば良いですし、目次と小見出しくらいを把握出来れば上出来です。

大体、真剣に読んだとしても細かな内容はそれ程記憶には残らないので、タイムパフォーマンスに欠けます。むしろ、この斜め読みの目的は、「どこかで見たことがあるな」程度の用語をなるべく沢山作って経理作業や申告作業に対する心理的ハードルを下げることにあります。そして、細かな内容までは分からなくとも、調べすべきことに気づけるレベルを達成できれば良いです。何が分からないのか分かれば、本を調べるなり税務署に問い合わせるなりの対応がとれる様になります。

真面目すぎるあなたへ

例えば、開業した場合には、翌年3月の確定申告から青色申告すべきですが、下の様に整理することが出来ます。

(a) 何も知らないケース

知らないことがあることに気がつけないので、青色申告できない。

(b) 完全な知識があるケース

自分で必要書類を用意・提出して、青色申告できる。

(c) 青色申告の名前くらいは知っているケース

自身で調べるか税務署への問い合わせにより、結果、青色申告できる。

この様に、(b)と(c)は結果的に同じ事と言えます。制度の存在さえ知っていれば、必要なタイミングでフォローすることが可能で問題は無くなります。だとすれば、(b)より(c)の方が簡単に達成できるはずなので、タイムパフォーマンスはずっと良いと判断できます。

また、会計ソフトを利用する場面でも、やらなければならない作業を知らないと、会計ソフトに設定や命令をすることが出来なくなります。逆に、知ってさえいれば、ソフトのサポートやマニュアルを利用することができます。

まとめ

  • 開業当初は、青色申告が出来る様に帳簿環境を整えれば良い。
  • 会計ソフトを利用する。
  • 必要最低限の知識とは、書籍を斜め読みして得られる程度で良い。
  • 分からないことさえ分かれば調べることが可能。
  • 税務署への問い合わせや、会計ソフトのサポートも重要なリソース。

先にも述べましたが、会計ソフトの利用を前提とすれば、事業にあたって記帳や申告についての必要知識は、かなり少なくなります。しかし、準備にはある程度の時間が必要なので、確定申告のシーズンに動き出しても間に合いません。事前の準備が肝要です。

なお、税務署が提供する記帳指導のサービスもあります。4月から5月に申し込むと、翌年3月の確定申告に間に合います。回数は4回程度と少ないですが、併せて利用すると大変効率よく準備が出来ます。

ABOUT執筆者紹介

税理士 柳下治人

柳下治人税理士事務所
X(旧Twitter)

1978年埼玉県生まれ
明治学院大学経済学部 卒業
日本大学大学院経済学研究科修士課程 修了
税理士事務所勤務を経て柳下治人税理士事務所を設立

中小企業の経理、税務、経営のサポートやセミナー講師を手がけている。また、外国籍経営者やギグワーカーとも深く関わりを持ち、YouTubeにて「yagishitax税理士チャンネル」を運営し、UberEatsなどの配達員に必要な経理、申告のHowTo動画など税金にまつわる情報を公開している。

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