経理処理を効率化! 法人カードのメリットや導入時の注意点を解説
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クレジットカードには個人の一般消費者向けに発行されているカード以外にも、企業や個人事業主が事業のために利用できる「法人カード」があります。ここでは経理事務の削減や資金繰りにも役に立つ法人カードの特徴を解説していきます。
事業の経費を支払うためのクレジットカード
法人カードとは企業などの法人や、個人事業主に対して発行されるクレジットカードです。基本的には、法人の代表者や個人事業主がクレジットカードの発行企業に申し込みを行い、カードの契約者となることで利用できます。
法人カードは、主に事業に関する経費を支払う目的で使用され、個人向けカードより利用限度額が大きい傾向があります。加えて特徴的なのが、契約した代表者だけではなく、従業員が利用するためのカードも複数枚発行できる点です。
また、個人向けのクレジットカードとは異なり、代金の引き落とし先として、法人が名義人となる銀行口座(法人口座)を指定することもできます。これにより、多数の従業員が複数枚の法人カードで支払いを行ったとしても、支払い元を1つの法人口座とすることが可能なのです。
経費精算や会計処理の手間を減らせる
企業などの法人が、法人カードを活用することで次のようなメリットが期待できます。
メリット①:経理事務の削減が見込める
クレジットカードは、毎月発行される「クレジット利用明細書」に支払いの記録が記載されます。法人カードの場合、発行されたカードごとに利用明細が発行されるので、どの従業員が、いつ、どこで、いくら経費を支出したのかが把握しやすいのです。
これまで従業員による立替払い・申告後に経費精算を行なってきた企業であれば、法人カードを使うことで、事務手続きの手間を省くことができるでしょう。
さらにカードによっては、利用明細と会計ソフトとのデータ連携により、仕訳伝票や決算書などを簡単に作成できるサービスが利用できます。経費精算だけではなく、会計処理業務全般の効率化も期待できるのです。
メリット②:資金繰りにゆとりが生まれやすい
法人カードで決済をした場合、引き落としまでに要する期間は1〜2カ月程度である場合が多いです。
このように支払いに猶予期間が生まれることから、急に高額の支出が生じたとしても、現金を急いで工面する必要がなくなります。また、引き落とし日までは手元に現金を残すことができ、企業経営において重要なキャッシュフローの安定・改善にもつながるのです。
メリット③:ポイント還元や付帯サービスも受けられる
個人向けカードと同じく法人カードでも、利用額に応じてポイントやマイルが還元されるサービスがあります。貯まったポイント・マイルは特定の支払いに充てることできるので、経費削減が期待できるのです。
また、そのほかの付帯サービスが利用できるカードもあります。代表的なサービスをいくつか紹介しましょう。
付帯サービス | サービスの例 |
---|---|
旅行損害保険 | 旅行中の傷害、賠償責任などに要する費用を補償 |
福利厚生 | カード契約者や従業員などが、飲食店やレジャー施設など特定の施設を、割引価格で利用できる |
航空ラウンジ利用 | 空港での待機時間を快適に過ごせる、空港ラウンジが活用できる |
なお、前述した利用明細と会計ソフトの連携も付帯サービスのひとつ。経理事務を削減したいのであれば、ぜひ連携機能が付帯しているカードを検討しましょう。
年会費や審査が必要な点などに注意
様々なメリットがある法人カードですが、利用を始めるにあたって気をつけるべき点もいくつかあります。
注意点①:年会費が高いカードが多い
法人カードのなかには年会費無料で利用できるものがあります。しかし個人向けのカードと比べて、年会費の相場が高い傾向が。なかには年会費が10万円以上するカードもあります。
もちろん、年会費が高いカードほど利用限度額が高く、付帯サービスも充実している傾向があります。しかし、利用者にとって必要ないサービスを提供しているカードであれば、高い年会費を支払っている意味がありません。個人向けカードと同様に法人カードを選ぶ際にも、年会費に見合ったサービスを受けられるかどうかが重要なポイントとなります。
注意点②:発行には審査が必要
個人向けのカードと同じく法人カードにも、クレジットカードの発行企業による、申込み者を対象とした審査が行われます。
審査基準は発行企業によって異なり、詳細な内容が公表されることはありません。しかし一般的には、申込みをした企業の経営者や個人事業主の信用情報、営んでいる事業の期間、業績・財務状況などをチェックされ、継続的な支払い能力があるかどうかが判断されると考えられています。
加えて次のような要件を満たしていると、事業実態がわかりやすいので審査が通りやすくなると言われています。
- 企業、法人内に固定電話がある
- ホームページがある
- 事務所などのオフィスがある
審査を通過するための対策を行うのであれば、上記3点が比較的取り組みやすいでしょう。
注意点③:利用にあたって組織内でルールづくりが必要
物品の購入や飲食店の利用、交通機関・有料施設の利用など、法人カードは個人向けのカードと同様に様々な決済用途に利用できます。
しかし、基本的には事業に伴う経費の支出に使われるべきものなので、それ以外の利用が行われないように、組織内で利用に際してのルールづくりを行う必要があるでしょう。
例えば、従業員が法人カードを常時持ち歩いてプライベートな支払いに利用しないように、カードを貸し出し制とする方法などが考えられます。
法人カードにもステータスがある
クレジットカードの発行企業が提供する法人カードは、想定する利用事業者の規模やカード使用者の人数によって、次のように呼び分けられていることが多いです。
カード使用者 | 利用対象者 | 利用限度額 | |
---|---|---|---|
ビジネスカード | 20人以下 | 個人事業主・中小企業 | コーポレートカードより小さい傾向 |
コーポレートカード | 20人超 | 大企業 | ビジネスカードより大きい傾向 |
なお、上記の要件は厳密に決まっているわけではなく、発行企業によって定義や名称が異なるケースがあります。
さらに、法人カードは個人向けのカードと同じく、利用限度額の大きさや付帯サービスの充実度などにより、ゴールドやプラチナといったランク付けがされています。
例えば三井住友カードは、中小企業向けに次の3種類を発行しています。
名称 | ランク | 年会費(税込) | 利用限度額 | 付帯サービス |
---|---|---|---|---|
三井住友ビジネスクラシック(一般)カード | 一般 | 本会員:1,375円 2名から1名につき:440円 |
原則20〜150万円(1回払いでの利用) | 最高2,000万円の海外旅行傷害保険など |
三井住友ビジネスゴールドカード | ゴールド | 本会員:11,000円 2名から1名につき:2,200円 |
原則20〜300万円(1回払いでの利用) | 最高5,000万円の海外・国内旅行傷害保険など |
三井住友ビジネスプラチナカード | プラチナ | 本会員:55,000円 2名から1名につき:5,500円 |
原則150〜500万円(1回払いでの利用) | 最高1億円の海外・国内旅行傷害保険など |
前述したとおり、法人カードは年会費が無料のものから、総額で10万円を超えるカードまで様々。事業を営むうえで期待するメリットが何なのかをよく考え、適切な年会費が設定されているカードを選びましょう。
ABOUT執筆者紹介
藤田陽司
各種金融系情報誌の編集・執筆業務を行うペロンパワークス・プロダクション所属。株・投資信託、暗号資産、年金などの編集・執筆を担当。不動産メディアの取材記事の企画・コンテンツ制作にも携わる。地方整備局公務員、業界新聞編集記者などを経て入社。建設関連の記事執筆や編集業務の経験を持つ。AFP/2級ファイナンシャル・プランニング技能士。
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