コロナでここが変わった!~会社の議事録に印鑑を捺さなくなる?
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はんこが押せないから、決済ができない!
コロナ禍が始まったときに問題になったのは、「はんこが押せないから、決済ができない!」と言うものでした。会社の方針を決める決済は、すべてはんこが必要で、はんこを捺すためには、会社に行かなければならない。これは会社に限ったことではありません。町内会の回覧板も、学校の連絡帳も、みんなはんこに頼っていたんです。
考えてみれば、こんなに不確かな制度は無いように思います。はんこなど、珍しい名字でも、はんこ屋に行って、簡単に作れます。まして、珍しい名字でなければ、文房具屋でも、100円ショップでもはんこは売っています。「これは私のはんこで間違いありません」と証明できることができるでしょうか?
電子署名の出番
コロナ禍になり、急速にデジタル化が進みました。今やコロナに関わらず、テレワークが無くなれば、退職も考えるほどの影響を与えています。
はんこ制度も以前のように簡単に捺印ができなくなり、代わりに「電子署名」「電子証明書」という名前が聞かれるようになりました。電子署名についての法律が制定されたのは、平成12年、今から20年以上も前です。その制度がようやく日の目をみた、というところでしょう。
電子署名は進んでいるの?
では、電子署名は本当に進んだのでしょうか?
確かにコロナ禍で、大企業を中心に電子署名が進みました。しかし、日本の株式会社の99%を占める中小企業は、法律の制定から20年経っても、今でも浸透しません。その理由もいくつかあります。
(1)昔から使っているから、印鑑を捺すだけの方が簡単
いくら利点があっても、そのために電子署名の方法をマスターするほどの労力を使うなら、紙に出してはんこを捺した方がよほど簡単だと思われるのは事実です。毎日のように何かの契約をしている企業なら、印紙税だけでも大きな金額になるため、それを削減するために電子署名の方法をマスターすることは必須でしょう。
しかし、そのような事情がない企業にとっては、1回か2回の契約のために、電子署名をマスターする意味を見いだすことは難しいのです。目に見える形で、契約書や議事録が残るのも、大きいでしょう。
(2)難しいと感じる
私が初めてマイナンバーカードで電子署名をしたとき、どうやって署名したらいいのか分かりませんでした。職業上では、毎回電子署名を行っていましたし、確定申告でもマイナンバーカードを使用して電子署名を行っていたため、議事録などに署名するのも、簡単にできると思っていたのにも関わらずです。
一度マスターしてしまえば、次からは問題なくできます。署名するには、マイナンバーカードを使用する以外にも、電子署名を管理するアプリ会社などが署名を行う場合があります。アプリ会社などに署名してもらうことは簡単なようですが、登記に使用する議事録や委任状には、会社の代表者や役員のマイナンバーカードで電子署名を行う必要がある場合があります。そのため、この方法をマスターすることは必須といえます。
電子署名の利点とは?
それでも、電子署名を行う利点があります。その利点をご紹介します。
(1)印紙代がかからない
例えば、土地の売買、賃貸借契約書など、印紙税法に定められている契約を締結する場合には、収入印紙を貼る必要があります。しかし、契約書そのものをデジタルで作成すれば、収入印紙を貼ることができません。つまり、印紙税がかからないのです。そのため、不動産の取引を頻繁に行う企業間で、電子契約が進んでいます。
(2)スピーディー
おおよそ、契約書はパソコンで作成するのが一般的です。
契約書に印鑑で捺印するには、契約書を印刷する必要があります。契約の相手方が遠方であったり、契約の場に来られない場合には、片方が署名捺印し、それをもう一方の契約者に郵送し、署名捺印をするのですが、その時間も手間もかかります。電子契約書の場合には、それをメールなどで直接、契約者に送り、署名をしてもらうことになります。郵送代もかからないことになります。
電子署名と今後のビジネス
先日、不動産の売買に立ち会う予定だったのですが、売買の当事者にコロナウイルス陽性になった方がいたため、延期になりました。
コロナウイルスに限らず、インフルエンザや体調不良と、売買が延期になる理由はあります。
しかし、その売買が進まないと、会社の利益も遅れてしまうことを考えると、売買を後回しにしてよかったとは思えません。本人確認や意思確認を十分行っていれば、コロナ陽性だったとしても、契約を行って差し支えないのです。そんなときに、電子契約書で行えば、わざわざ立ち合いの場を設けなくても売買ができたのです。
前述した通り、電子署名は、人によって難しいと感じるでしょう。自分の資産や口座などを知られてしまう恐怖や、行政の不手際などから、マイナンバーカードの普及も十分ではありません。絶対に持たないと、強く主張される方もいらっしゃるほどです。
実際には、マイナンバーカードを使用した電子署名で、相手方に分かることは、氏名や住所、生年月日など、住民票に記載されているような内容だけですから、電子署名で情報を抜き取られることはないのです。
やがては当たり前のように電子署名を使い、電子決済で契約が実行されることになることは、想像に難くありません。今のうちから、徐々に慣れていくことが大切かと思います。
ABOUT執筆者紹介
司法書士・行政書士 小平磨弓
司法書士・行政書士 南宇都宮法務事務所
栃木県宇都宮市にて、平成26年開業。相続や売買による不動産の手続き、会社の設立や株式会社の登記の変更、定款変更、裁判書類作成、成年後見業務など、幅広く承ります。「近所の困りごと」のご相談を受けることが多く、和解書や合意書のご提案も行っております。
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