2024年12月2日に健康保険証の新規発行が終了! どうなる「マイナ保険証」
社会保険ワンポイントコラム
医療機関にかかるときに使用する健康保険証は、本年(2024年)12月2日からは新規発行が行われない。同日以降はマイナンバーカードを健康保険証として利用する、通称「マイナ保険証」を基本とする仕組みに変わるからである。しかしながら、従来型の健康保険証が廃止されることには、不明な点も少なくない。そこで今回は、健康保険証の廃止とマイナンバーカードの健康保険証利用について、代表的な疑問点を整理してみよう。
マイナンバーカードが健康保険証になる「マイナ保険証」
「マイナンバーカードを健康保険証として利用する」。この仕組みは2021年3月に導入され、同年10月から本格運用が開始された。そしていよいよ、本年(2024年)12月2日以降は、従来型の健康保険証の新規発行が行われないこととなった。
マイナ保険証を利用する最大のメリットは、過去に行われた診療の情報や処方された薬の情報などが別の医療機関で確認できることであろう。より適切な医療行為が期待できるからである。
他にも「医療費が節約できる」「高額療養費制度を通常の手続きを経ずに利用できる」「医療費の領収証を保管しなくても、確定申告で医療費控除を受けられる」「医療機関・薬局の事務負担が軽減される」などがメリットとされている。
(1)発行済みの健康保険証は使えなくなるのか
それでは、健康保険証の廃止とマイナンバーカードの健康保険証利用に関する代表的な疑問点を見てみよう。初めに「すでに発行されている健康保険証は使えなくなるのか」という点である。
この点については、2024年12月2日時点で有効な健康保険証は、最大1年間利用できる経過措置が設けられている。従って、手元の保険証が12月2日から突然、使えなくなるわけではない。ただし、1年を経過する前に保険証の有効期間が到来したり転職や転居によって保険者が変わったりすれば、その時点で保険証は使用できなくなる。
(2)マイナンバーカードを持たない人はどうやって医療機関にかかるのか
マイナンバーカード・有効な従来型の健康保険証のいずれもない人に対しては、医療機関を受診する際に利用できる『資格確認書』が保険者から無償で交付される。この確認書を窓口で提示すれば、従来どおりの窓口負担割合で診療が受けられる。
(3)全ての病院で例外なくマイナ保険証が使えるのか
2024年4月28日現在、全国の病院や診療所、薬局の約9割がマイナ保険証の取り扱いを開始している(医療機関等向けポータルサイトアカウント登録状況及び顔認証付きカードリーダー申込状況一覧(2024年4月28日)/厚生労働省)。病院に限ってみれば98.1%でマイナ保険証が利用できるとされており(同申込状況一覧)、従来型の健康保険証しか利用できないケースは非常に少ない。
なお、マイナ保険証が利用できる医療機関には、以下のようなポスター・ステッカーが貼られている。
(4)病院に設置されている機器が使えなかったらどうなるのか
マイナ保険証で医療機関にかかる場合には、医療機関にあるカードリーダーにマイナンバーカードをかざす必要がある。しかしながら、機器の不具合などでマイナ保険証による手続きができない場合には、『被保険者資格申立書』に必要事項を記入して医療機関の窓口に提出すれば、通常の自己負担割合で診療を受けることが可能である。
『被保険者資格申立書』とは、以下のような書類である。
(5)病院の職員がマイナンバーを取り扱うのか
医療機関ではマイナンバー自体は取り扱わない。そのため、医療機関の職員がカードに記載されたマイナンバーを書き写したり、コピーを取ったりするなどの行為は禁止されている。
従来型健康保険証の新規発行終了まであと5カ月。制度のポイントをしっかりと押さえ、従業員の疑問・不安を解消していただきたい。
【参 考】
厚生労働省ホームページ:
マイナンバーカードの健康保険証利用について
マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応について(保発0710第1号)
(別添3)被保険者資格申立書に関する説明書
ABOUT執筆者紹介
大須賀信敬
コンサルティングハウス プライオ 代表
(組織人事コンサルタント/中小企業診断士・特定社会保険労務士)
中小企業の経営支援団体にて各種マネジメント業務に従事した後、組織運営及び人的資源管理のコンサルティングを行う中小企業診断士・社会保険労務士事務所「コンサルティングハウス プライオ」を設立。『気持ちよく働ける活性化された組織づくり』(Create the Activated Organization)に貢献することを事業理念とし、組織人事コンサルタントとして大手企業から小規模企業までさまざまな企業・組織の「ヒトにかかわる経営課題解決」に取り組んでいる。一般社団法人東京都中小企業診断士協会及び千葉県社会保険労務士会会員。